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死者の記憶を継ぐ者 〜巻き込まれ転生で幽霊になった俺は、王女に未来を託す〜  作者:
逃げた者が戦う準備を整えた章

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仮面の内側

俺は、第一王女の使者達に張り付く事にした。


宿舎として用意された建物の一室。


護衛の騎士達は外に立ち、内部には最低限の人員だけ。

……好都合だ。

俺はそのまま壁をすり抜け、中へ入る。

さっき馬車に乗っていた男女が、向かい合って座っていた。


机の上には、書類と茶器。


「随分と、整っているわね」


女が窓の外を見ながら言う。


「想像以上です」


男が、素直に答えた。


「辺境とは思えません」


城壁の補強。人の流れ。活気。

全てが、予想より上だ。


「……これは」


男が、少し声を落とす。


「放置すれば、確実に“勢力”になりますね」


女は、ゆっくりと頷く。


「ええ」


否定しない。


「だからこそ、今のうちに関係を築くのよ」


綺麗事じゃない。はっきり言ったな。


「殿下は」


男が続ける。


「第二王女をどう見るおつもりで?」


女は、少しだけ考える。


「有能よ」


即答だった。


「それも、厄介なほどに」


苦笑する。


「理想だけじゃなく、現実を動かしている」


城壁。資金。人材。

結果を出し始めている。


「王太子殿下が警戒するのも当然かと」


「そうね」


女は、紅茶を一口飲む。


「でも」


カップを置く。


「敵に回すには惜しい」


……なるほど。


「味方に引き込めれば、王国の安定に繋がる」


「ですが」


男が眉を寄せる。


「第二王女が、第一王女殿下に従う保証は?」


女は、小さく笑った。


「無いわ」


即答かよ。


「だから“貸し”を作るのよ」


「恩を売る……」


「そう」


指を組む。


「困っている時に手を差し伸べる」


「拒まれれば?」


「その時は――」


一瞬、間を置く。


「見極めるだけ」


……切り捨ても視野か。

やっぱり甘くは無いな。


「ですが」


男が声を潜める。


「王太子側も動いている可能性があります」


「ええ、間違いなく」


女は窓の外を見た。


「既に密偵を放っているでしょうね」


……当たり。


「だからこそ」


視線が鋭くなる。


「私達は“善意”を貫く」


「表向きは、ですか」


「ええ」


微笑む。


「疑われない為にね」


完全に理解してやってるな。


「それに」


少しだけ、声を落とす。


「本当に助ける気もあるわよ」


男が、少し驚いた様に見る。


「意外です」


「何よ」


女が笑う。


「使える人材は、守るべきでしょ?」


……本音と打算。両方か。


「では」


男が姿勢を正す。


「明日の謁見は?」


「丁寧に」


即答。


「決して上からにはならない」


「対等な立場で?」


「いいえ」


少しだけ、首を傾ける。


「“少し下”から」


……上手いな。

完全な対等でも、上でも無い。


「相手に主導権を持たせる」


「そう」


女が頷く。


「そう思わせる」


……怖ぇな。


俺は、その様子を見ながら思う。

善意。間違ってはいない。

それは同時に――計算された善意だ。


さて。エリシアは、これをどう受けるか。

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