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死者の記憶を継ぐ者 〜巻き込まれ転生で幽霊になった俺は、王女に未来を託す〜  作者:
逃げた者が戦う準備を整えた章

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王都の二つの影

その頃――王都。


王城の奥、限られた者しか入れぬ会議室で、静かな火花が散っていた。


向かい合うのは、王太子と第一王女。

その背後には、それぞれの側近達。


「最近の流通状況について、報告しろ」


王太子が、机を指で叩く。

側近が一歩前に出た。


「各地で古銭、希少魔石の流通を確認。出所は未特定。ただし――辺境方面との関連が疑われます」


第一王女が、わずかに目を細める。


「辺境?」


「第二王女が赴任して以降、軍備強化や住民調査など動きが活発になっております」


空気が、僅かに張り詰める。

王太子が低く言う。


「妹が、資金を得たと?」


第一王女は、紅茶を一口含み、静かに答える。


「それを問題視しているのですか?」


「当然だ」


王太子の声が冷える。


「地方の一領主に過ぎぬ立場で、独自に軍備を強化するなど看過出来ぬ」


「地方の安定は、国の安定です」


第一王女が即座に返す。


「辺境が強化される事の何が問題なのです?」


王太子の側近が口を挟む。


「問題は“統制”です」


第一王女側の側近が応じる。


「それとも王太子殿下は、第二王女が力を持つ事を恐れておられる?」


沈黙。王太子の視線が鋭くなる。


「私は国を守る立場だ」


「そして私は、国を育てる立場です」


第一王女が微笑む。


「勇者を王都に集め、象徴として担ぎ上げたのは殿下。民の支持を得る為ですね?」


「……何が言いたい」


「妹を辺境に送ったのも殿下」


室内の温度が、下がる。

第一王女は続ける。


「妹は理想家です。ですが愚かではない。もし辺境で成果を出せば――」


そこで、言葉を止めた。王太子が低く言う。


「王位継承権は私にある」


「形式上は」


第一王女が、はっきり言った。


「ですが、民と教会が誰を支持するかは別問題です」


完全に対立している。

王太子は机に手を置く。


「では姉上は、妹を支持するのか?」


第一王女は、少しだけ視線を逸らす。


「……私は、王国が最も安定する道を選びます」


それは肯定でも否定でもない。

明確に、王太子の味方では無い。


「辺境の動きは監視する」


王太子が言う。


「だが、今は表立って動かぬ」


第一王女が頷く。


「賢明です。下手に触れれば、妹は“被害者”になりますから」


両者は、互いに牽制し合っている。


第二王女エリシアは――


今この瞬間、二人の駒として盤面に置かれている事を知らない。


皮肉にも。


王太子と第一王女が睨み合っている事で、辺境への直接的な圧力は弱まっていた。


互いに牽制し合うが故に、動けない。


結果として――エリシアは、貴重な時間を手に入れていた。


王都の二つの影がぶつかり合う、その狭間で。

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