声を持つ者たち
「あっ、そうだったわ」
魔女が、ぽんと手を打った。
「幽霊ーズに、私からのプレゼントよ」
……嫌な予感しかしない。
魔女が取り出したのは、細い銀色の輪だった。霊鋼に似た光沢を放っているが、表面には細かな魔法刻印が刻まれている。
「首輪……?」
思わず呟く。
「失礼ね。霊導環よ」
いや、どう見ても首輪だろ。
「これを首に嵌めなさい。そうすれば、あなた方の声が聞こえる様になるわ」
幽霊ーズが、ざわつく。
「でも気を付けてね」
魔女が、にやりと笑う。
「今度は、誰にでも声が聞こえてしまうから」
……それ、諸刃の剣じゃねーか。
「制御は私がするわ。通常は限定伝達。緊急時のみ解放。問題ないでしょ?」
いや、その“問題ない”が信用ならんのだが。
「ほうー!」
爆薬さんが、輪を手に取る。
「これで、直接叫べるのか!」
やめろ。叫ぶな。
盾さんも、静かに嵌める。
磁石さんは、興味深そうに刻印を眺めてから装着。
守くんは、少し躊躇したが……ゆっくりと首に嵌めた。
次の瞬間。空気が、微かに震えた。
「……聞こえるか?」
盾さんの声だ。
はっきりと俺にも。
そして――廊下の向こうから、足音。
エリシアが現れた。
「……今の声は?」
きょろり、と周囲を見ると魔女が、さらりと言う。
「増員よ」
軽いな。
エリシアの視線が、空間の一点に止まる。
ユーシアの横。
その後ろ。
さらに後ろ。
おーい!後ろ後ろ!って言いたくなるな。
……見えてるな。
「……増えてますね」
冷静だな。爆薬さんが、元気よく言う。
「初めまして、姫様!爆薬担当であります!」
やめろぉぉぉ!
エリシアの眉が、ぴくりと動く。
「……爆薬?」
「安心しろ姫様!木っ端微塵は敵だけだ!」
魔女を睨む。
お前、何を吹き込んだ。
盾さんが、一歩前に出る。
「守る。命に代えても」
低く、重い声。
エリシアの表情が、柔らかくなる。
「……ありがとうございます」
磁石さんが、静かに言う。
「道は任せろ。迷わせない」
守くんは、少し震えながらも言った。
「……逃げない。今度は」
エリシアは、じっと四人を見た。
そして――
「……賑やかですね」
え。それだけ?怖がらないのか?
「でも」
小さく、笑う。
「頼もしいです」
……強ぇな、この子。
爆薬さんが、嬉しそうに浮く。
盾さんは、姿勢を正す。
磁石さんは、静かに頷く。
守くんは、少しだけ輪郭が濃くなった。
「ただし」
エリシアが、すっと言う。
「廊下で急に叫ばないでくださいね」
「御意!」
即答するな。
俺は、溜め息を吐く。
想像していたより、ずっと平和だ。




