還るもの
苗木を植え終えた後も、しばらくその場に居た。
風が、丘の上を抜けていく。
さっきの「ありがとう」が、気のせいじゃなかったのかは分からない。
でも――あの墓の中にあった骨から感じた、最後の意識。
「もっと、分け与える」
その言葉と、重なった気がした。
未練が、消えたのか。
それとも、役目を終えたのか。
……まあ、どっちでもいいか。
俺は、その場を後にした。
数日後。
崖の掘削作業は、順調に進んでいた。
土砂を取り除き、岩盤を削り、支柱を立てていく。想像していたよりも、人手がある分だけ進みは早い。
そして――
「出たぞ!」
作業員の声が、響いたと同時に魔女が、すぐに駆け寄る。
俺も、覗き込むこむとそこには――木箱。
腐りかけた、古い箱だが、しっかりと封がされている。
慎重に、開けられた。
中には――金貨。銀貨。そして、魔石。
……かなりの量だ。
「これは……」
魔女が、息を呑む。
「予想以上ね」
周囲の作業員達も、ざわついている。
当然だろう。
これだけの資金があれば、街の防壁強化も、武具の補充も、魔法訓練の継続も――現実味を帯びてくる。
「運び出しなさい。記録も忘れずに」
魔女が、すぐに指示を飛ばす。
その横で、俺はふと考えた。
……盗賊の金が、領地を守る為に使われる。
皮肉なもんだな。
でも――悪くない使い道だろ?




