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第二死 捕らわれの女王と…… 後編

「このエロジジイ!!」


「ヒィッすまんすまん」


 飛んでくる風呂桶達を躱しながら再び『空間移動テレポート』でヘヴェリウス城へ戻って来た私とアケルナル剣聖。


 風呂に飛びこんだので服はびしょびしょだし、剣聖は私がボコボコ殴ったのでたんこぶだらけだ。


 私達の様子を呆れた顔で見つめるシリウス校長。



「はぁ。どうせエロジジイの事だから、女子風呂にでも飛んだんでしょう。まったくこの人は……はぁ。頭痛い。と、ともかく『空間移動テレポート』は他人の認識した場所にも飛べるみたいね」


「ええ。そうみたいなんですけど……うっ……」


 突然目の前が真っ白になる。



 体に力が入らな…い…魔力を使い切った……みた……い。



「スピカさん!!」



 シリウス校長が私に駆け寄ってくるのが見えた瞬間……私は意識を失った。




……



 ん~むにゃむにゃ。

 


「ハッ!?」


 目を覚ますとそこは、超が付くくらい高級なドデカいベットの布団の中だった。


 どうやら魔力切れで倒れた私を誰かがヘヴェリウス城のいいお部屋のベットへ運んでくれたらしい。


 しかも綺麗なネグリジェに着替えさせられている。



 誰が着替えさせたんだろう……そしていったい何時間位ここに寝かされていたんだろう。



 『空間移動テレポート』で消費する魔力を甘くみていたみたいね。


 一人で飛ぶより二人で飛ぶ方が当然魔力の消費が大きいし、『空間移動テレポート』をしっかりマスターしていないのに、急いで女子風呂から出るのに必死で魔力をさらに多く消費したのかな。


 これは試しに『空間移動テレポート』した場所が、最初に予定していた魔王城じゃなくて、アク校のお風呂だったのが逆に良かった。


 もし、最初から魔王城に飛んで、魔力切れしていたら死んでいたかもしれない。


 いや、エロジジイを褒めた訳ではないけど、結果的には本当に良かった。



 魔王城に飛ぶのに剣聖と私が一緒に飛んで一回。ムムとリゲルを連れて帰ってくるのに一回? 


 『空間移動テレポート』って三人一緒に飛べるかな…… 無理なら行って戻って合計4回か……きっついなぁ。


 うーん。途中で魔王軍四天岩の誰かと戦ったりしたら絶対魔力が足りなそう。


 という事は、絶対に見つからない様に行動して、二人を助け出すスニークミッションって事になるね。



 ちなみにジジイは魔王城に置いてくるつもりだ。剣聖なんだから死んだりしないっしょ(適当)


 囮にでもなって貰おう。




 なんて剣聖にキツイお仕置きをする事を考えていたら、丁度部屋に入って来るシリウス校長とアケルナル剣聖。


 シリウス校長が心配そうに私に声をかける。


「やっと起きたみたいね。スピカさん。あなたは三日も寝ていたのよ」


「は?」


「三日よ」



 どうやら私は三日も寝ていたらしい。ひょええええええええええ。これは魔王城で魔力が切れていたら本当に危なかった!!


 三日も……Resultはしてないからリゲルは生きている。危機を知らせる指輪も光ってないから一応大丈夫。かな?


 ムム女王は……ブルブルブル。考えたくもない事が頭に浮かんで来る。顔がそっくりなので本当に考えたくないのだ。


 人質……に何かすることは……




 急ごう。今すぐにでも行くしかない。




「アケルナル剣聖。出発の準備しますからもう一度『空間移動テレポート』をお願いします。今度は絶対魔王城の事を考えて下さいね」


「す、すまん。スピカちゃんの手を握ったらつい女子風呂の事を思い出してしまったんじゃ……」


「ん?……ちょっと待って? なんで私の手を握って女風呂の事を思い出すんですか?」


「そりゃあ、すべすべのお肌を触ったら、貴重な入浴シーンを思い出すに決まって……」



 私とシリウス校長は目を合わせた後、ゆっくり頷くと、アケルナル剣聖にキツイO★SHI★O★KIをした。


 頭に大きなタンコブを何個も作った剣聖が、鼻血を出しながらヨロヨロと立ち上がる。



「イタタタ。まったく老人を何だと思っとるんじゃ……シリウスも若返ってから冷たくなったのう。前はあんなにワシの体を求めて」


「ません」


 冷たくビシっと言われて涙目で私を見る剣聖。そういえばこの二人は過去に結婚してたんだっけ。


 いやー苦労しただろうな。年を取ってもこんなエロジジイだし、そりゃあ離婚するでしょ…… 


「スピカちゃ~ん」


「しりません」


 私に助けを求められても困る。と、いうか剣聖はいつ覗いていたんだ……まさかずっと見ていたの?


 ゾゾッと背筋が凍りそうになる。あー気持ち悪い。


 後でもっとキツイお仕置きしないと。



「ともかく今度は魔王城の事、ちゃんと考えてくださいね」


「ふぁい」


「じゃあ準備しますから待ってて下さいね」


「ふぁーい」


 言われた通り私をじっと見つめて待っている剣聖。


「いや、着替えたりするんで外で!!!」


「しくしくしく」


 シリウス校長に首根っこを掴まれて連れていかれる剣聖。まったくこのジジイは。


 連れていかれた廊下からガミガミとお説教の声が聞こえた。



 

 私は部屋に用意してあった世界樹の衣に着替え、身だしなみを整えた。

 

 これから向かう先は敵の本拠地の魔王城。誰にも見つからず、勇者リゲルとムム女王を連れて帰らなくてはならない。


 フルムーンスタッフを手にとり、不安を打ち消すように一度目を瞑って集中し、二人を絶対に助けると決意する。



「リゲル。ムム。今行くから待っててね」



 




……



 魔王城に行く準備が完了した私は、廊下で待っていた二人を呼ぶ。



「じゃあ行きましょう。アケルナル剣聖、お願いします」


「うむ。魔王を殺してこよう」


 こ、殺す気なの? 一応今回は救出がメインの予定なんだけど。


 それだけの事を言うだけあって、剣聖もしっかり準備してきた様子だ。


 いつものだらしない恰好とは違い、美しい青いライトアーマーに着替え、腰に4本も剣をぶら下げている。


 孫にも衣装ならず、ジジィにも衣装って奴なのか。喋らなければカッコイイのかもしれない。


 


 私は剣聖の手を握り(本当は握りたくないけど)、『空間移動テレポート』の魔法をの構成を練る。


「剣聖。魔王城の事を思い出して下さい。そして自分がそこにいるかのように……」


「うむ。大丈夫じゃ」


「では……行きます!!!」



 私は剣聖と波長を合わせ『空間移動テレポート』の魔法を発動させた。




 シューン。




 バシャン!!!ジャブン!!


 冷たっ……くない。熱い!お、お湯? またお風呂!?



「ちょっ……!? 剣聖?」


「大丈夫じゃ」


「はっ?」


「ここは魔王城の女子風呂じゃ」



 辺りを見渡すと、どう見てもめちゃめちゃ立派な露天風呂です。本当にありがとうございました。

 

 


「な、なんで剣聖が魔王城の女子風呂を知っているの?」


「決まっておろう。そこに女子風呂があるからじゃ」



 いや、本当マジわけわかんない。どんだけエロに人生かけてるジジイなのよ。



「しー。誰か来るようじゃ。そこの岩陰に隠れるスペースがある。ついて来るのじゃ」


「隠れるスペースって……何でそこまで知ってるのよ」


「いいから来るのじゃ」


 じょ、常習犯なのね……危険だわ。帰ったらすべての女子風呂の点検をしなくっちゃ。


 剣聖に言われたまま岩陰のスペースにササッと隠れる。


 うん。確かにこの岩には、目の高さにしっかり穴が開いていて、すっごく覗きやすい。


 えろいな剣聖。流石エロい。ってこのおバカ。



 湯煙の中、浴室をセクシーに歩いて来たのは氷血女帝エメラダだった。


 なんとなく剣聖の両目をエイッと突く。ガチで結構深く刺さっちゃった気もするけど気にしない。


「うごごごご。天国がそこまで来てると言うのに……」


「しっ。黙って」


「ぐぬぬぬ……」


 別にエメラダの裸体を剣聖から守る必要があるわけじゃないけど、やっぱりなんとなく許せないよね。


 湯船に使ったエメラダから愚痴の独り言がブツブツと聞こえてくる。


 氷血女帝なのにお風呂に入るんだ……って突っ込みたいけど我慢。



「はぁ~やってらんないわね~。私の可愛い彼ピッピの坊やは四天岩に昇格しちゃうし……大体何よ。黒獅子将軍プロキオンてwww謎の黒い獅子の仮面の男でいいじゃないのwww謎なのがいいのに。魔王様もわかってないわねぇ。ま、そこが素敵で大好きな所なんだけど(キュン)。私の頼れる彼ピの爆龍君は攫った女王の世話に大忙しで構ってくれないし……あ、あの勇者。やっぱりイケメンで最高よね。いっちゃう?勇者と魔王軍幹部の禁断の恋。萌えるわぁ。いっちゃおうかな? あぁん。イッちゃう?wwwなんつって……はぁ。面白くないわ。でも後で地下牢に差し入れしに行こ♡」



 うわ……氷血女帝ってめっちゃビッチ……。誰でもいいんかーい。


 えっとムムが、レグルスの所で、リゲルは地下の牢屋ね。


 ふーん。こんなにあっさり教えてくれるなんてなんか怪しいけど、やみくもに探さなくて済みそう。


 ムムはエルフィン家に恩のあるレグルスの所にいるみたいだし、意外に大丈夫かもしれない。


 って事で、まずは地下牢のリゲルを助けに行きますか。



(うー。ワシにも見せてくれんかのう。ちょっとじゃ。ちょっとだけじゃ)


 我慢の出来なくなった剣聖が、潰れた目から血の涙を流しながらクネクネと暴れ出す。


(あーもう!!ハウス!!静かに!!シーっ!!)


(そんなー!何の為に来たと思っとるんじゃー)


(何のためなのよ!!ともかく静かに!!!)


 暴れる剣聖を無理やり押さえつける。




  ぽしゃん。




 剣聖が暴れたせいで、隠れていた岩から、小さな石が湯船にこぼれ落ちて音を立てた。


「誰!?そこに誰かいるの?」


(し、しまった)


 魔王軍四天岩といってもやはりエメラダも女性であり、異変に怯えたのか慌ててタオルで体を隠した。


(ど、どうするのよ)


(ワシじゃない。だから素直に見せろと。減るもんじゃあるまいし)


(あーもう。そんなに見たいなら行きなさい。一人で来たって言いなさいよね)


(そ、そんな。せめて目を治しぐわあああ)



 バシッと剣聖の尻を蹴り、岩陰から出現させる。



「あ、貴方は……間違いない。その背中。剣聖……いえ、ケンちゃん!? 何でここに……」


「………」


 無言で振り向きもせず、エメラダに背中を見せたままの剣聖。


「まさか、あの時の約束の通り本当に私を迎えに来たとでも……ううん。もう遅い。遅いのよ……」


 隠していたタオルをハラリと落とし、涙を流すエメラダ。


 なんか流れ変わった?


 あの時の約束ってなんなのよ……



(どうしたらいい?)



 私に向けてジェスチャーで助けを求めてくる剣聖。いや、知らんがな。


「この間は憎きシリウスがいたので、初めて会ったふりをしてとても辛かったです。でも、わざわざハートの形に洞窟の天井をくり抜いて、私への変わらぬ愛をお示し下さった……」


 え? ああ。そんなこともあった様な……そうなの?


「あぁ……昔を思い出します。シリウスよりも愛していると何度も私を……いつかシリウスと別れたら一緒になろうと」


 ふ、ふーん。


 それってさ。


 不倫ってやつじゃね? まじなんケンちゃん? 


 潰れた目がキョドってるけどそれって本当の事なん?



(ボスケテ)



 助けられません。自己責任でしょ……



「その時がついに来たのですね。ああ。ケンちゃん。こっちを向いて下さいまし」


「………」


 ダッ。


 猛スピードで駆け出す剣聖。目が潰れているはずなのに器用に障害物を避けながらあっと言う間に走り去っていく。


「ああ!? お待ちください!!! ケンちゃあああああああああああん」


 裸のままそれを追いかけるエメラダ。



 そしてポツンと一人取り残された私。



 えっと。



 じゃあ。


 スニークミッションスタート!



 リゲルとムムを助けるゾイ!



 誰が見ている訳でもないけど、両手でグーを作ってギュッと握った。

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