第二死 捕らわれの女王と…… 中編
ヘヴェリウス王国の遥か北。雪と氷に閉ざされ、容易に侵入する事も出来ない魔王軍の領土。
当然魔王の城はそこに有るわけで……
シリウス校長に行けと言われても「はい、行ってまいります」とホイホイ行けるような場所じゃないのはわかってる。
まず、遠い。魔王の領土までは普通の人の歩行速度で3ヶ月以上かかる距離なのだ。
そして三か月かけてたどり着いたとしても、どこに魔王の城があるかわからない。
大体さ、ムム女王を攫うのはわかるよ。
魔王が女王とかお姫様を攫うなんておとぎ話でもよくある話じゃん。
でもさ、それを助けに行く勇者まで連れて行くとかありえなくない?
だれが助けにいくのよ?
え? 私?
シリウス校長は「あなたなら行けるでしょ」なんて気軽に無茶ぶりしてくるし。
アルタイル王は全軍を率いて魔王の領土へ攻め込む着満々だし。
リゲルが心配なのは当然なんだけど、いつResultになってもおかしくないこんな状態は精神的にもきつい。
とは言った物のの、早々に行く手段がない。
完全にお手上げ状態。
\(^o^)/オワタ
出来ない行けないと、いつまで悲観していてもしょうがないので、プラーエ村の例の研究所にやって来た。
ここに来た目的は、妖精の王アップゥが使っていた『次元跳躍』か、それに匹敵するレベルの空間移動の魔法。
今迄読めなかった例の研究所の本達の中に、空間移動に関する本が必ずあるはず。
例の研究所の本棚にドーンと並んだ数千冊の本達。上から順番に高難度となっていたはず。
ふっふっふ。昔は殆どの本が魔力が足りずに読めなかったけど、2万くまで上がっている今の私の魔力なら読めない本なんてある訳が……
あった。
嘘でしょ……この本書いた人はどんだけ凄かったのよ。
最上段の一番左の本。これだけはタイトルすら見えない。
空間移動がその本の中じゃない事を祈って、綺麗に整頓されている本棚をじーっと眺める。
……た、沢山の本棚の中から検索する魔法とかない?
ありませんか……ですよね。
……
私は数時間かけてやっと見つけた『時間と空間』の本をパタリと閉じる。
これ、魔法の本じゃなかったわ。空間はどうやって出来てるとか時間の流れの概念とか……
読めるけどさっぱりわからん!!!
こんな本が数千冊……うへぇ……これ走った方が早かったかな……もしくは『隕石』で飛ぶか……
最早魔法より、直接乗り込んだ方が早い気もしてきた私の前に、一冊の本のタイトルが目に入る。
『検索魔法でお気楽簡単検索』
あるじゃないの!!いい魔法が!!!
慌てて本を本棚から抜こうとしたら、周りの本毎バラバラと地面におちて大きな本の山になってしまった。
ああああああ。検索魔法を探す探索魔法はどこにあるの!!!
小一時間探して『検索魔法でお気楽簡単検索』発見し、検索魔法を使えるようになるまでにまた小一時間。
やっとこれで、本棚から移動の魔法を探索できる。
早速『検索魔法』を使用してみる。
検索するワードは……「移動 魔法 早い」。
検索魔法を使用すると、本棚の本のいくつかがポウッと光り出した。
『古代乗物図鑑』……これは違う。あ、でも乗物が気になるからキープ。
『古代列車時刻表。これで安心旅っポル』……これも違う。へー昔はそんな列車って物が走ってたんだ。
『彼氏の異動が早い件。上司を魔法でぶっとばす10の作戦』……これ移動違いじゃん。彼女頑張れ!
『空間移動の魔法』……お、これっぽくない? というかそのまんまの名前じゃん。
やっとの事で見つけた『空間移動の魔法』の本を読み漁り、使用出来るようになるのに結局半日かかってしまった。
そして『空間魔法』が使えるようになってから気が付く驚愕の事実。
・空間魔法は行った事ある場所にしかいけません。
マジカ。
移動先の空間を認識出来ないと移動できない=一回行った事がないと行けないみたい。
貴重な私の一日が……急いで助けに行かないといけないのに……
(´・ω・`)ショボン。
早速空間魔法を使用して、へヴェリウス城の大広間に戻る。
突然目の前に現れた私を見て、びっくりするシリウス校長。いや、私もめちゃくちゃビックリしたからね。
「きゃ!!!突然目の前に現れて!!それにその汗はどうしたの?」
「汗?」
額をぬぐうとシリウス校長に言われた通り大汗を掻いていた。
この『空間移動』、便利魔法かと思ったら、めちゃめちゃ魔力の消費が激しいみたい。
魔力が桁違いに上がった私でも連発は厳しい。マスターしたら少しは変わるのかな。
「『空間移動』を一応使える様になったんですけど、行った事ある場所にしか行けないみたいで……」
「え?たった一日で『空間移動』を……」
「使える様になっただけでマスターは出来てないですが」
「恐ろしい娘ッ……」
白目で私を見つめるシリウス校長。
大広間にいた来賓客達は既に帰宅し、残っていたのはアルタイル王、ミミ元女王、アケルナル剣聖、それにシリウス校長の4人だけだった。
「スピカ。丁度よかったな。今へヴェリウス国とエルフ国の全軍勢を集結させる作戦を決めていた所だ。最初の共同作業がまさかの魔王軍討伐とはな……」
「烏合の衆を集めても勝てまいて」
「まず二人の救助が優先では?」
アケルナル剣聖とシリウス校長は全軍での侵攻を危険視しているようだ。
私も魔王軍四天岩の底知れない能力と、魔王の恐ろしい闇の力の前には一般の兵士が何人いても無駄のような気もする。
「残りの賢者一人と勇者二人を探すのが先では?」
ミミ元女王の提案に三人ともうーんと首を傾げる。
賢者は私の他にシリウス校長、トリマン校長、がいるのは知っていたけど、そういえば後の一人って?
勇者もリゲルの他に二人もいたんだ……それは知らなかった。
露骨に探すのを嫌がるアルタイル王とシリウス校長とアケルナル剣聖。何か深い事情でもあるのかな。
「とりあえず、スピカさんに二人を救助して貰いましょ。人質がいたんじゃ動きにくいわ。ね。スピカさん」
いやいや。ね。じゃないし。助けに行きたくても行けないの。
「救助には行きたいのですが、魔王城に行った事なくて『空間移動』が使えないんです」
「ワシ、行ったことあるよ。魔王城」
「え?」
「魔王城なら行った事あるゾイ。ワシの記憶で飛べないもんかのう」
他人の記憶で空間認識して……出来そうな気もするし、出来なそうな気もするし……
「試してみたらどうだ」
アルタイル王が何も考えずに提案する。危険だとか思わないんだろうか。
剣聖と一つの体になってしまったり……ブルブルブル……
「今使える様になったばかりで自信がないんですが……」
「大丈夫だって。スピカなら出来る。ワタシの姪っ子なんだから」
ミミ元女王が訳の分からない理由で大丈夫だと言う。
「ほれ、どうじゃ。ここを掴んでワープかな。あ、掴む場所がなかったわい。ぐわああッ」
わざとらしく私に抱き着いてきた剣聖の頭に肘鉄を落とす。
「スピカさん。天才の貴女にならできるわ」
シリウス校長がにこりと笑う。本当? 出来るかなー?
やってみますか……私って乗せられると弱いのよね。
「えっと。じゃあ剣聖さん。魔王城を思い浮かべて下さい」
「ほいきた。ええぞーええぞー」
本当は繋ぎたくないけど剣聖の手をとり『空間移動』を使用する。
いきなり魔王の前とかだけは止めてね……
シューン。
バシャン!!!ジャブン!!
冷たっ……くない。熱い!お、お湯? なにここ!?
「ここって?」
「アークトゥルス騎士魔法学校高等部の女子風呂じゃ」
「はっ?」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」




