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第八死 世界樹 後編 ①

「とりあえずこの剣を返すぞ」


 リゲルは背中に背負っていた鞄の中から、金色の剣を取り出してアルタイル王子に渡した。


「これは……俺の金の剣(ゴールドソード)か……」


「ああ。お前を連れて帰ってこいってさ」


「そうか。……だがまだ帰れぬのだ」


「帰れないってお前幽閉されてたんじゃないのか? なんでこんな鉱山の岩の中に?」


「話せば長くなるんだが……かくかくしかじか」



 ………鉱山を奥へと進みながら王子が今までの経緯を説明する。




「惚れた女を置いて国に帰れない。つまりそう言う事だな?」


「一言で言えばそうなるが、立場が立場なだけに色々問題がだな。それほど単純ではないのだ」


「俺にはその立場って奴の価値がわからんが、その価値はウィルギニスって子より大事な事なのか?」


「ウィルギニスより大事なものがあるわけが……はっ!?」


「そう言う事だろ。ウィルギニスが一番大事だと言っておきながら、王子の立場を捨てる覚悟も、ウィルギニスを連れて出ていく度胸もない。アルタイル。お前の一番大事なものはなんだ? 国か? 女か?」


「俺は……」


「な、単純な話だろ。まぁ田舎者の俺からみれば、お前らがとっとと結婚してヘヴェリウス国とエルフの国が一つになれば、それで丸く収まるじゃねぇかと思っちまうぜ」


「……なんだと?」


「ああ、すまんすまん。いくら何でも無茶苦茶だったか。実はな。アルタイルがいない間に、騎士と魔法に分かれていたアークトゥルス学校が一つになった。アケルナル校長の勝手な独裁行動だったが、校長でも出来るのに、もっと偉いはずの王が出来ないなんて不思議だと思ってな」


「まったく考えてもみなかった。国を捨てウィルギニスと生きるか。ウィルギニスを捨て王として生きるか。その二つしかないものだと勝手に思い込んでいた。色々問題はあるが……そうだな。ウィルギニスに会ったら相談してみよう」


「あ、今のは冗談で言ったんだぜ」


「わかっている。が、参考になった。ありがとうリゲル。やはりお前は信頼できる友だ」


 熱いグータッチを交わすリゲルとアルタイル。



 リゲルの肩の上では女子二人がニヤけていた。^p^




 金の鉱山の坑道を歩き続け、4人は太陽鳥サンバードの巣がある場所へとたどり着いた。


 鉱山の山頂部分の一部が崩落し、大きな穴となっている為、太陽の光が差し込んでいた。


「ここです。あの穴の頂上付近に太陽鳥サンバードの巣があるそうです」


「はうー眩しくて全然見えないですー」


 鉱山の壁から露出した鉱石達が、差し込んで来た太陽の光を反射しあっているので、頂上付近はかなりの明るさだ。


 まともに見れば太陽の光によって目を傷めるのは間違いない。



「ほう。太陽鳥の巣とは崖の上のアレの事か。問題はあそこまでどうやって行くかだな」


「アルタイル。お前眩しくないのか……ってなんだそれは?」


「ん? ああ、これは太陽の光が眩しい時に目に付ける黒眼鏡だ。砂浜とかで付けたりするだろう?」



 黒い眼鏡を付けて自慢げにクイックイッとするアルタイル。

 


「いや、初めて見たが……砂浜でいったい何をするんだ?」


「寝転んだり体を焼いたりだな、焼きすぎない様にちゃんと薬剤を塗ってだな」


「何の為に?」


「何の為ってリゾート?ヴァケーションって奴だ」


「……全然わからん。ともかくその眼鏡を貸してくれ」


「……丁度4個あるからプレゼントしよう」


 アルタイル王子は金の鎧の中から、黒眼鏡を取り出して配る。


 ペテルにはハート型の枠、ドワミには星型の枠の黒眼鏡が配られた。



「はう!!本当に眩しくありませんです!」


「本当だすごい!!」



 二人はそう言ってお互いの顔を見あって爆笑し、追撃のリゲルの黒眼鏡を見てさらに爆笑する。



「アルタイル。なんで俺だけ付け鼻とヒゲまでついてる奴なんだ!!」


「しょうがないだろ。それしか無いんだから……プッ」


「ちっしょうがねぇ。巣の近くまで行ってみる。幸い太陽鳥サンバードはいないみたいだ」


「ああ、そうだなぷぷぷぷ。が、がんばってくれっはっはっはは」


 アルタイル王子はもう一つある普通の黒眼鏡をこっそり鎧の中へ潜めた。



 付け鼻ヒゲ眼鏡の勇者が、崖をヒョイヒョイと器用に登っていく。


 やがて、あっさり巣に手が届くところへたどり着き、辺りに太陽鳥サンバードがいない事を確認すると、頭上の巣の中へ手を入れた。



 手探りで巣の中を探索していると、ギュムッとした感覚の後、自分の手が何者かに踏まれている事に気が付く。



「痛っ。何だ?」


 見上げると、巣の上に黒い人影が立っている。


「お前は……プロキオン!!!」


 巣の上に立っていた人物は、黒い獅子の仮面の男プロキオンだった。

 

「勇者リゲル。お前を殺……ブホッゲホゲホブフフグフフ」


「何だ!!」


「ゲホッゲホッ……お前を殺……プフフフフ」


「何がおかしい!!」



 リゲルの付け鼻眼鏡を見るたびに吹き出すプロキオンだが、やがて我慢できなくなり、踏んでいたリゲルの手を蹴り飛ばした。



「クッ!!!」



 たまらず落下してしまうリゲルだが、壁にミュルグレスをガツンと差し込みギリギリ空中に留まる。


 プロキオンが巣から飛び降り、地面にスッと着地したのを見て、追うようにリゲルも地面へ飛び降りた。


 

「3年前の合同演習での借りを返させてもらうぜ。プロキオン」


「お前を殺……クッ……いい加減外せ。その顔で真剣に喋るんじゃない」

 

「えっ?」


「その眼鏡だ」


「ああ、いつもより黒いと思ったらそう言う事か」


 リゲルは付け鼻の黒眼鏡を取り、アルタイルへ向かって放り投げると、プロキオンに向かってミュルグレスを構える。


 黒獅子仮面の男プロキオンもそれに応じて構えをとった。



「あうー!!!やっちゃえーリゲルさまー!!!」




 

 何もない不思議な白い空間の中に、蓄積されていたスピカの魔力が爆発的に放出され、やがて持ち主へと吸い込まれるように帰っていく。


 深い深呼吸の後、スピカはゆっくりと目を開いた。



 両手を握ったり開いたりして、その感触を確かめ、問題なく動く事と、自分の中の魔力が増大している事を確信する。




(どや。生まれ変わった様な気分やろ)


(……そうね。本当に生まれ変わったみたい)


(まぁ爆発して半分肉体溶けたしな)



(は?)


 世界樹がとんでもないことを言った気がする。


 半分溶けた?いやいや。全然溶けてないよ?



(しっかし脱いでもやっぱり……あーあかん。残念胸や)


(脱いでもって……ちょっと!!!なんで私裸なのよ!!!脱がしたのね!この変態世界樹!!)

 


 全然気が付かなかったけど、どうみても裸です。本当にありがとうございました。


 慌てて大事なところを手で隠しながら、世界樹に対して猛烈に文句を言う。



(まてまて、ワイやない。ホンマ怖い奴やなぁ。言う? 普通世界樹に向かって変態世界樹って言う?)


(あなたじゃなかったら、いったい誰がこの空間中で私を脱がすのよ)


(せやから言うたやろ。爆発して半分とけてもうたって。まぁワイがサービスで治しといたけどな。消し飛んで足りひんかった部分はワイの魔素で足しといたから感謝するんやで)


(マジデ?)


(オオマジや。あー失敗や。胸にも肉足しといたら良かったか。何しろワイも必死やったし堪忍やで)


(そこは……足しときなさいよ……)



 18歳から胸が大きくなる人だって世の中にはいるらしい。あ、それって自分の妄想ですよね。言わないでくれる?



(それって自分の妄想やな)


(うっさい変態世界樹。この裸もなんとかしなさいよ)


(おー怖。姉ちゃんホンマ何でも頼みよるな。まぁええわ。裸同士の付き合いやし。この際何でも言う事聞いたるわ)


 私の体が光り出し、あっと言う間にエメラルドグリーンの可愛いドレスが着させられる。


(どや。姉ちゃんが着てた服をベースにちょいアレンジしたワイの感性。最高やろ? そうやな世界樹の衣と言うたところか)


(世界樹の衣ね。うん。確かに可愛いけどスカート短くない?)


(そりゃそうやろ。そこは譲れんのや。姉ちゃんの杖として使ってたワイの枝も、死んどったから治しといたで。ただ、枝はあくまで枝や、妖精達に杖に加工してもらうとええやろ。あいつらめっちゃ器用やからな。あーそれにしてもワイ優しすぎやろ。惚れたらあかんでーマジで惚れたらあかん)


 

 ……怪しいな。


 付き添いで来ただけの私に、こんなに何でもしてくれるのおかしくない?


 ただより高い物は無いって言葉もあるんですけど。



(何を不審に思ってるねん。この中じゃ丸聞こえなんやで、姉ちゃんの声もワイの声も)


(じゃあ。何で優しくするのか教えて)


(うっ……それはやな)


(それは?)




(魔王倒して来て(小声))


(えっ?)




(魔王倒して来て!!!!)

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