第八死 世界樹 中編 ②
先ほどまで聞こえていた虫や鳥の声がぱたりと止んで、突然の静寂が訪れる。
恐る恐る目を開けてみれば、一面真っ白な不思議な空間。
何処かで見た事あると思ったら、Resultの空間によく似ている感じね。
「ここは?」
「世界樹の聖域だよ~」
「えっ!? もっと樹木っぽい感じの場所かと思ってた」
「わたくしもそう思ってました。この空間、すごく暖かいというか、魔力が満たされているという感じですね」
「うん。確かに。でもここでウィルギニスは何をしたらいいの?」
「世界樹に聞いてみて~心に思うだけで通じるはずだよ~ここは世界樹の心の中だから~」
心で思う?こんな感じかしら。目を閉じて頭に言葉を思い浮かばせる。
(ファ〇チキ下さい)
(なんやねん姉ちゃん。急に注文しよってからに)
(えっ!?頭に直接!?)
(当たり前やろー気軽に起こさんといてや。ワイは疲れてるんや)
(そ、それはすいません。世界樹さんでいいんですよね? えっと……ウィルギニスにエルフ国王家専用の魔法を……)
(あーそれならいい。今直接教えたってるから。それよりあんさんの事や)
(はぁ。私のことですか?)
(なんやけったいな事になってるなーおそろしいこっちゃで)
(もしかしてResultの事ですか?)
(あーワイにもよーわからんが姉ちゃん何歳やねん。ぐちゃぐちゃすぎひんか?)
(一応ピチピチの18歳なんですが、何度かやり直しているので、うーん、50年以上生きている感じですかね)
(えっ急に無言に?)
(あーすまんすまん。可愛い姉ちゃんかと思ったらババアだったとはびっくりしてな)
(は? ババアじゃありませんけど!?)
(あんまり怒るとシワが増えるでー。まぁええわ。姉ちゃんとりあえず、よー生きとるな。精神がボロボロやで)
(わかって貰えますか……結構辛い目にあってるんですよ)
(ああ、人生の経験についてやない。無理やり薄っすい魔力を引き伸ばしてるから精神がちぎれそうになってる。ちゅーこっちゃ)
(魔力を引き伸ばしてる?)
(せや、ここに入ってこれたちゅー事は、エルフの王家の血がはいっとるはずや。せやけど、あんさんエルフの魔力がまったくない。ホンマにゼロや)
(それって混血だからって事ですか?)
(いーや。ちゃうな。もしかして姉ちゃんのおかんはママ・エルフィンちゃうんかな?)
(そうです)
(道理で似てるはずや、もっともママ・エルフィンちゃんはもっとボインちゃんやったけどな。そこは似なかったんやなー残念や。さぞ無念やろ)
(べ、別に気にしてませんけど(涙))
(それでな、ママ・エルフィンはやっぱり女王になるのやめる言うてな、例の魔法が使えない様にワイが魔力を封印したんや。魔力ゼロになるけどいいんか?って何度も聞いたんやけどな。素敵なお嫁さんになるんだって言いよってなぁ)
(だからママは魔法使えないんですね)
そういえば最初のResultの時、魔力0だったな。0なんておかしいって思ってたけどそう言う事だったんだ。
(そん時にお腹の中におったのが姉ちゃんやっちゅーことやな。一緒に魔力を封印してもうてたわ。すまんすまん。今解除しといたからな)
(解除って? えっ?)
ヤバイ!!!!!
ホントにヤバイ!!!!
魔力が……あふれる!
制御するので精一杯。正直いつ爆発してもおかしく……ああやっぱりちょっと無理かも。
(我慢せんでええやで。ここはワイの中やドーーーーーーンと一発スッキリしときや。ウィルギニスとアップゥはワイが保護しとる)
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ドワーフの女の子に連れられて、ドワーフ村のはずれにある家に到着したリゲルとペテル。
「父はこちらです」
家の中に入ると、中に座っていたドワーフの男が鼻をクンクンとさせて匂いを嗅ぎ始めた。
「ドワミ。客か? ん? この匂いはミュルグレス。アケルナルが来たのか?」
「違うわ、お父さん。この方は勇者のリゲル様です」
「はぁ? 勇者が俺になんの用だってんだ……」
「ドワミさん。もしかしてお父さんは……」
「そうです。事故で目が見えないんです。で、でもこのミュルグレスは父さんが作ったの! 目さえ見える様になれば、必ず素晴らしい剣が打てるはずなんです!」
ドワミの父はゆっくりと深いため息をつく。
「ドワミいい加減にしなさい。もう二度と見えないと言っただろう。生きているだけでも奇跡なんだ!」
「だって、リゲル様なら……お父さんの目を治せるかもしれないのよ?」
「他人を巻き込む必要などない。すべては俺が欲を出したせいなんだ」
「でも……」
「いいから帰ってもらいなさい!!」
バタンとドアを閉められ、家から追い出されてしまったリゲル達。
リゲルはペテルと顔を見合わせてゆっくり頷く。
「ドワミさん。聞かせて貰えるかい? 俺なら治せるって何のことだ?」
両肩に女の子を乗せた勇者が鉱山の坑道をノシノシと進んでいく。
目指すのは金の鉱山を抜けた先に住んでいるという太陽鳥の巣だ。
「リゲル様。ありがとうございます」
「ああ、肩に乗せるのは一人も二人も対して変わらないさ。二人の方がむしろバランスがとれるって奴だな」
「いえ、そうではなくて父の目の事です」
「まだ治してないさ。要は太陽鳥の卵の殻を取ってくればいいだけだろ」
「あうー。この危険生物図鑑によると、太陽鳥は危険度『★★★★★★★』のS級。太陽の光を何万年も集め続けた太陽石を食料とし、巣に近づく者には容赦なくサンアタックを浴びせるとありますー」
「あ、それですね。サンアタックで父の目は……治す方法は太陽鳥の卵の殻が必要なんです。それと出来れば太陽石も持って帰りたいです。太陽石を使えば最高の剣が出来るはずだと……」
「太陽鳥の卵の殻と太陽石だな。任せとけ」
「ありがとうございます!!!」
金の鉱山。
と言っても既に金の鉱脈は掘りつくされており、何年にも渡って放置されている。
その結果、無数の魔物が住み着いており、当然リゲル達に襲い掛かってくる。
が、その辺の魔物がリゲルの相手になるはずもなく、3人は問題なく先に進んでいった。
「あうー流石かっこいいですー」
「私達二人を肩に乗せたままなのに凄いですね。まぁちょっと酔ってしまいましたが……」
「うう。私もですーうっ……」
「ちょ、ちょっと休憩するか!!」
慌てて二人を降ろすリゲル。すっかり酔ってしまった二人が壁に寄り掛かる。
「おーい……」
壁に寄り掛かった二人が顔を見合わせる。
「今何か……」
「はうー聞こえたですよね」
壁の中から声が聞こえた様な気がしたので、壁に耳を当てる。
「おーい……誰かいるのか……」
「ひぃ!!中から声が!!!」
「あうー!!本当です!!!この岩の中に人が!!!」
「嘘だろ!?岩の中に人なんて……おーい誰かいるのか?」
リゲルが近寄ってきて岩に向かって話しかけ、ドンドンと壁を叩く。
「そ、その声はリゲル? リゲルなのか? 俺だ!!!アルタイルだ!ここから出してくれ!!」
「な、なんでお前がこの岩の中に!?今出すから待ってろ」
リゲルはドワミから渡されたハンマーで岩をガンガン砕いていく。
「痛い!痛たたた!もっと優しく!!!リゲル!!もっと優しくしてくれ!!こんなの初めてなんだ!」
「初めてってそりゃそうだろ……」
「ああ。あああん。いたたたた。優しく!!リゲル!や さ し く」
ペテルとドワミはなんだか見ていいものだか悪いものだかよくわからなくなり、両手をパーにして目を隠して隙間から覗いた。
やがてボコっと大きな岩が崩れ落ち、アルタイルの体の一部が露出する。
出て来たのはアルタイルの尻だった。
「お前……どんな姿勢で岩に入ってるんだよ」ガンガンガンガン!
「自分でも知らないぞ!ともかくまったく動けん!!」
「尻で喋るんじゃない」ガンガンガンガン!
「あおっあおっ痛っだめ!癖になりそ!」
「余計な事を言うな!!!」ズガンズガンズガン!!!
女の子二人が謎の尊さに目覚めそうになる一歩手前で、なんとかアルタイルを掘り出す事に成功した。
「ふぅ。助かったぞリゲル。感謝する。しかし何発かワザと尻を叩いた事は絶対に許さんからな」
「お前がうるさいからだろ。それにしてもプリップリッて……だめだ思い出して笑ってしまう。ハッハッハッハッハ」
「笑うんじゃない!!今度は俺が叩いてやるからな!!プッハッハッハッハッ」
無事に脱出出来たことでからかいあう二人を見た女の子達は、結局何か不思議な感覚に目覚めてしまうのであった。
ちなみにドワミの父の名前はドワエモンです。




