第六死 金の王子とエルフの姫 後編
「スピカ。スピカ大丈夫か?」
リゲルが肩をゆすって私を起こす。どうやら気絶のフリをしていたら、昨日の寝不足がたたって本当に寝てしまったみたい。
「大丈夫。イッタイナニガオコッタノ(棒)」
「隕石に続いて雷が落ちたらしい」
「そ、そうなんだ。ふーん」
ちょっとキョドって範囲魔法を炸裂させてしまった事に大反省しつつ、『初級回復魔法』を天災の被災者達にかけて回る。
親善試合を再開出来たのは結局1時間後になった。
次の機会の為に、自分の決め台詞って奴を考えておこう。そう心に誓った私であった……
「皆さまお待たせいたしました! 突然の落雷により一時中断となりましたが、親善試合を開始いたします!」
落雷で感電し、アフロヘアーになったペテルが司会を再開する。
落雷で頭がそんな風になる? アフロになったのペテルと女王だけですよ。
「ただし、試合開始時間が予定より1時間遅くなりましたので、女王さまからの提案により、試合形式を一対一での対決方式からバトルロイヤル方式へ変更させて頂きます!」
バトルロイヤル方式……
「それって……」
「そういう事よスピカさん。丁度いい機会ですわ」
深紅の宝石で装飾された杖を私に向けるカペラ。
「お待ちなさい。私がこの人の相手をします。ペローリ」
ポポナ・ペロリーナも私に氷の結晶を象った槍を向ける。
バトルロイヤルならさっきの雷神撃で決着で良かったのでは……
まぁやるって言うならやっちゃいますけど。まだ試合開始前ですよ。
プリティプリーストの白黒コンビのデネブとアーニャが睨みあい。
水魔法のソフィアはこっそりとカペラへ向けて杖を向けている。
「はわわ~!! 試合開始前だというの既に火花が散っている様です。今回の親善試合の解説としてリゲルさんに来て頂きました!」
「ああ、リゲルですどうも。あんまり慣れてないけどよろしく」
女生徒達からきゃーーーーーと黄色い歓声があがる。
ちょっと訂正、トリマン校長と女王も歓声をあげているので、恋するプリンセス以外は全員が黄色い歓声をあげている。
一部の女子達が「私の勇者だ」「わたしの」などと喧嘩を始めている。
「会場も大いに盛り上がっている様です!!さて、試合のルールを説明いたします。えー相手の攻撃でのKO、もしくは舞台から落ちたら負け。ルールはたったの二つ!」
「武器での攻撃もありってことだな」
「そーです!何でもありのバトルロイヤルです。さぁ、ミミ・エルフィン女王の合図で試合開始となります」
羽織っていたマントを颯爽と投げ捨て、舞台に上がり、水晶の散りばめられた豪華な杖を掲げる女王。
「はい、では皆さんよろしく……試合開始ッッッ!!!」
ミミ女王が豪華な杖を振り下ろすと共に、舞台上に吹き荒れる暴風。
「さぁさぁ学生達よ。学んだモノを我に見せてみよ」
「あうー!開始の合図と共に放たれる女王の上級風魔法『暴風』!!!言い忘れていましたが、このバトルロイヤルには女王も参戦いたします!!!」
「それ、先に言っとかないといけない奴だよな」
全くだよ!なんで親善試合に女王まで参戦してるわけ。
ミミ女王を中心に吹き荒れる暴風。
流石に上級魔法なだけあって、迂闊に女王に近づけば痛い目にあうのは間違いない。
だけど……
カペラと目を合わせ頷く。最初に倒すべき相手は一番邪魔な暴風をまき散らしてる女王に決まった。
それは、ポポナも同じだったようで、攻撃のタイミングを計って女王を睨みつけている。
「皆さん全然攻撃しませんね。これはいったいどうしたんですか? リゲルさん」
「邪魔な女王を最初に消したいが、これはバトルロイヤルだからな。味方がいつ裏切るかわからん状況って事だ」
女王に最初に仕掛けたのは、やはり直球イノシシガールのカペラだった。
だが、カペラの放った『初級水魔法』が、ソフィアの放った『初級水魔法』で相殺される。
「な、なんですの!?」
「あーら。カペラさんのお相手はワタシですよ」
「あーあなたは泥水の使い手でしたっけ? それともお便所のお水でしたかしら?」
「業火のカペラさん。我がバルディエル家の水とあなたのサンダルフォン家の火。どちらが強いか試してみましょう」
「水が炎に勝てるとでも?」
「その言葉お返ししますよ」
カペラとソフィアの壮大な水遊びが始まった一方、舞台の逆側では白と黒の光が飛びかっていた。
デネブが『神聖魔法光盾』の裏にしゃがんで杖を構え、『神聖魔法光弾』をバスンバスンと狙いをつけて撃つ。
黒いプリティーブラックことアーニャは両手に短い黒い杖を持ち、デネブの弾丸を素早い動きで避けながら、『闇魔法暗黒弾』をズガガガガッと乱射している。
たまにデネブの光弾がアーニャに直撃するんだけど、『影分身』で回避してる。
とりあえずあの二人はほっとこう。どうせ後で握手して仲良しになる系の奴だし。
となると、私の相手はペロリーナ。ミミ女王暴風の中心で笑っているだけで出てくる気配はない。
ペロリーナが放った約50本の氷柱が、私に向かって容赦なく飛んでくる。
地味に『凍土』で足元を凍らせてきてるのは流石に上手い。
でもそれって私の十八番なのよね。
氷のリンクを滑りながら、飛んできた氷柱サッサッと避けて、堅い杖でペロリーナをポコッと殴る。
「魔法を使わないなんてずるい……」
「ごめんね。何でもありなのよ」
ペロリーナがドサっと倒れたので、念のため舞台の下へ転がして落とす。
「はわわ~!どうやら最初の脱落者が出たようです!!ペロリーナさん場外!!」
「あの杖めっちゃ痛いんだよな。俺なんて盾で受けたのに腕折れたことがあるんだぜ」
「ほえ~。大丈夫でしょうかペロリーナ選手。首の骨が折れてないといいいですが……」
し、失礼ね。ちゃんと手加減したし、リゲルって意外に根にもつタイプなんだね。
一方その頃、水と炎(水)対決の方は、壮絶な水魔法の撃ちあいとなっていた。
「業火のカペラと名乗っているにしては、水魔法しか使いませんね」
「バルディエル家如きにワタクシの炎は不要だという事ですわ」
「へーそうですか。じゃあコレならどうですか?」
ソフィアを中心に大量の水が滝の様に発生して壁を作る。上級水魔法の『大瀑布』だ。
「わたしのこの『大瀑布』をあなたの初級の水魔法で破れるのかしら? さっさと炎でもなんでもだしたらどう?」
「そうですわね。本当にその水のカーテンを破れないかどうか試してみますわ」
そういうと、カペラは『初級水魔法』を放つ。
が、水の壁に阻まれてソフィアまでは届かない。
「言った通りでしょ。ほら見せなさいよあなたの炎を……ってなにしてるの!!」
「え、ほら……壁があったら中に水を溜めろって、そこの糞緑の人から教わったのですわ」
『大瀑布』でソフィア中心に作られた水の壁の中へ、カペラが全力で放水し水を溜める。
大量の水であっと言う間にソフィアの胸元まで溜まる。
「ちょ、ちょっと止めなさいよ。私、泳げないんだから……ガボガボガボ」
「あら、初級魔法では破れないんじゃございませんでしたっけ?」
「アボボボボボボ。……か、解除」
水の壁が崩れ溜められた水が一気に流れだし、大波となってソフィアとカペラを飲み込むと舞台の下へと押し出した。
「ゲホゲホッ。やっぱりお便所の水魔法でしたわね」
「ゴホッゴホッあなたがあんな汚い事するからでしょ」
舞台の下で素手による2回戦が始まったみたいだけど、一応これで2名場外KO。
「はううう~ここで、カペラ様、ソフィアさん二人そろって場外!!」
「すごい水魔法の撃ちあいだったな。最後の大波で観客席にも被害がでたみたいだけど大丈夫か?」
「大丈夫のようです!!さすがポラリス大魔法学校の生徒達。慣れた様子で会場を直しております。ちなみに実況席も流されてしまったので、このままリゲルさんの肩の上から実況させて頂きます」
会場は大変な事になったけど、私は『浮遊』で飛んだから余裕の回避。
ミミ女王は暴風で大波を吹き飛ばして微動だにしていない。
白黒コンビは今の大波を、デネブが『神聖魔法光盾』でアーニャごと防いだので熱い握手をしている。
もう、戦線離脱ってとこかしらって思ったら、一旦離れて正々堂々もう一度戦うみたい。
デネブが『神聖魔法光雨』を使い、上空から光線が雨の様に降り注ぐ。
アーニャが華麗に舞いながら回避しつつ、『闇魔法暗黒弾』をダララララッと連射する。
デネブは闇の弾丸を『神聖魔法光盾』受けつつ、光弾を撃ち返す。
「……流石プリティブラック。でも負けられない」
「あなたもね!!!プリティホワイト!!いっくよ~!!!『闇魔法暗黒霧』」
アーニャがが黒いモヤモヤした霧を発生させて姿をくらます。
「……見えない。きたないな。さすがブラック汚い」
「へへへ~ど~お? この闇の中から撃ったら、その盾じゃ防ぎようがないよネ~」
モヤモヤは段々と広がり舞台の上を包み込む。せっかくなので私も霧に紛れる。グヘヘ。
ミミ女王の周りは暴風が霧を吹き飛ばしているので効果がないようだ。
「大変だ~霧が濃くて何も見えません!!! これじゃリゲルさんの肩の上で、エルフ国名物のエルフィン団子を食べるくらいしか出来ません!!!もぐもぐもぐ……リゲルさんは見えそうですか?」
「ごめん、霧がこくてあまり舞台が見えない。ありがとう。モグモグモグ」
食っとる場合かー!!!
闇の霧に隠れて色々準備している間に、どうやら白黒コンビの決着も付きそう。
霧の中、どこから攻撃が来るかわからないデネブは全方位に『神聖魔法光盾』を展開する。
「……仲良くなれるかと思ったけど。やっぱりあなたとは無理」
「どうして~仲良くしようよ~。一緒にプリティプリーストが苦しむシーン見よ~。いいよね!!!みんなが苦しんでる顔って!!」
「……違う」
「どうしてよ~。女の子が苦しんでいるとゾクゾクってフワフワってほら。いいじゃないの~鏡があったら見せたいわ。あなたの苦しく顔って最高よ~」
「……違う。プリティプリーストはみんなの笑顔を見るもの。苦しい闇は必ず消えて笑顔の光が産まれる。そう。こうやって」
デネブは『神聖魔法光爆弾』を手の中へ発動し、放り投げる。
収束されていた光が一気に解放されて弾け、闇の霧を吹き飛ばす。
「うおっ眩しッ!!目が!!!」
「……本当の楽しみ方を知らない子に、プリティプリーストの本を読む資格はない」
ドンドンドン!!
『神聖魔法光弾』の三連発が直撃し、アーニャは目を押さえたまま倒れる。
「まぶしー!!!なんと!闇に包まれた舞台は一瞬光り輝くと既に勝負はついていたー!!アーニャさんKO!!!残りは3人となりました!!!」
「光と闇が交わって最強にみえる」
ああ、しまった。もう決着がついちゃったみたい。想定より大分早く霧が晴れちゃった。
まぁ、やるしかないか。やるって決めたし……
闇の霧が晴れた事によって、私が舞台の上に『岩石魔法』で作ったものすんごくカッコイイ崖が姿を表す。
その頂上に立つのは当然……私!!!
腕組みをし、少し浮遊しながら電撃玉をクルクル回す。
雷神撃を範囲極小にして演出として使用する。
「雷轟電撃!! 我が名は雷霆の女神スピカ・プラーエ! 鳴神轟ここに参上!」




