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第五死 エルフの国のポラリス大魔法学校で私と握手 前編

 ヤッホー! スピカ18歳卒業旅行に出発です!


 エルフの国との境界までは、ヘヴェリウス国から馬車で南へ走る事なんと4日もかかるそうだ。


 最初、「走った方が早いし安い、修行になるし」なんて言う大馬鹿がいたけど、無視無視。


 私だけならまだしもデネブやカペラも走れっていうのか、この勇者は。


 


 馬車ならワタクシの家のを使うといいですわって事で、サンダルフォン家の馬車が用意された。


 一応国からの予算で馬車代も考えていたんだけど、結構お値段が高いから助かったよ。



 サンダルフォン家の馬車は、真っ赤な炎が装飾された4人乗りの車体で、栗毛の凛々しい馬2頭が引いていた。


 馬の扱いは庶民の私やリゲルじゃ当然わからないので、サンダルフォン家の可愛い女の子が運転手として付いてきた。


「お嬢様方、私にお任せください」 


「ペテル。本当に大丈夫なの? 本当はあなたの父が来るはずだったんでしょう?」


「大丈夫です! 産まれた時から12歳に至る現在まで、ず~っとこのイフリトとイグニスと一緒に生活してきましたから、誰よりも信頼関係バッチリなのでってふぁあああああ~」


 ペテルと呼ばれたその運転手の少女は、信頼関係ばっちりの馬2匹に両袖を噛まれてブンブンと振り回されている。


 出発前から、おもちゃにされてるようですけど大丈夫? 



「おっと」



 馬達にブンブン振り回された事で洋服が破けてしまい、あられもない姿で空中に投げ出されたペテルが、リゲルによってしっかりとお姫様抱っこの形でキャッチされる。



「はわわ。申し訳ありません。えっとこのカッコイイ殿方はどなたでしょう?」


「リゲルだ。よろしくな」


「お、お嬢様!? 女子だけの卒業旅行になぜ殿方が……」


「ペテル。母上殿には黙っていなさい。いいですね? さっさとお洋服の乱れを直してワタクシの大事な殿方から離れなさい」


「へっ!? この方が噂の!?申し訳ござません」


 まるで小動物の様にカペラの元へ走り、頭をペコペコ下げるペテル。


「この糞緑の胸無しがスピカさん。こっちの白いぶりっ子はデネブさん」


「あっペテルです。よろしくお願いします。スピカさまとデネブさま。お噂はお聞きしております。本当に私の方が胸が……あ、すいませんなんでもありません」


「スピカよよろしくね」


「……よろしく」


 挨拶と同時に悪口を言われた気が……。サンダルフォン家は全員で私を敵に回すって事でいいのかしら。


「ヒッ……しゅ、出発します」


 私の怒りの視線を感じ取ったのか慌てて馬車の運転席へ座り、出発の号令を出すぺテラ。



 私達が馬車に乗り込むと同時に、馬車は勢い良く走り出した。


 運転席の方から「速すぎです!言う事聞きなさい!!コラッ!!まったく糞馬なんですから」などと聞こえてきて不安になる。


 

 ちなみに馬車の座る席について、誰がどこに座るかどうかでかなり揉めた。


 馬車は向かい合わせに座るタイプで、前の席にカペラとデネブ。後ろの席に私とリゲルが座っていたんだけど、イノシシ女が「何を当然の様にリゲル様の横に座っているのですかコラ」と抗議の声を上げた。


 しょうがないから代わって上げると、今度はデネブが後ろ向きだから酔ってしまったと、カペラとリゲルの間にちょこんと入り込む。


 狭さでこれは無理だとリゲルが私の横の席に移動。


 すると、イノシシ女が再び抗議の声を上げて、リゲルの横の隙間に無理やり尻を突っ込んで、色々とバルンバルン当てながら入り込む。



 女性二人にサンドイッチされたリゲルが、さすがに赤面しながら後ろの席のデネブの横に移動してようやく収まった。

 

 席なんてどこでもいいじゃない。なんて思ってたけど、馬車に酔ったとはいえ、リゲルに甘えるようにもたれ掛かって眠るデネブを見て、素直にうらやましく思う。


 それはカペラも同じみたいだけど、デネブのナチュラルに甘える姿に何も言えず、ただ歯ぎしりをしている。


 もしだけど、デネブが馬車に酔ったふりをしているとしたら……ううん。


 デネブはそんな事を計算するようなイヤラシイ子じゃない。



 ジッと見つめると、一瞬デネブの頬を冷汗が流れたような気もする。ぐぬぬぬ。




 さて、私達が向かっているエルフの国だけど、へヴェリウス国と国交断絶しているだけあって、入国するには厳しい審査がある。


 卒業旅行が理由では入国出来ないし、当然「誘拐された王子を取り返しにきました」なんて言ったら殺される可能性もある。


 という訳で、表向きの理由として用意されたのが、エルフ国にあるポラリス大魔法学校への親善大使。


 


 『アークトゥルス騎士魔法学校では、近年稀にみる、どこよりも優秀な生徒達が卒業する。もしよかったら学校を通して親善を深めましょう』




 書面上の文章は丁寧にそう書かれているが、よく読み解けば、『うちの生徒は、あんたの学校の生徒より強いよ 試してみる?』という喧嘩を売る内容の書類を、シリウス校長名義で送り付けたらしい。


 当然、激怒したポラリス大魔法学校校長がエルフの長へ直訴し、特別に入国が許可される事となった。


 私達女子3人が親善大使で、リゲルは一応護衛役って事になっている。



 これあれだよね。


 向こうの生徒達と仲良くお茶でも飲んで『いい魔法ですね』じゃすまないよね。きっと。



 ともかく卒業旅行の最初の目標地点はポラリス大魔法学校。入国まで4日、そこから3日程度かかる予定だ。


 

 その7日間。馬車でひたすら移動する。研究所から新しく借りて来た本達が旅のお供。


 ゆっくり読書しながら旅行気分を満喫しよう!!







 なんて甘い考えは当然許してもらえるはずもなく……わかりますよね?





「いい機会だからみんなで修行しようぜ」






 馬の休憩時間。お昼の休憩時間。夕飯を準備したりする時間。そんな短い時間を狙って悪魔が修行を申し込んでくる。


 私達3人の女子達は、しかたがないので交代制で修行馬鹿の相手をすることにした。



 最初はリゲルと二人きりでイチャイチャ出来ると喜んでいたカペラも、後半になるにつれて段々と無言になり、馬車の中では疲れ切って幸せそうに寝ていた。


 デネブは神聖魔法に目を付けられて、ひたすらレクチャーをさせられていた。リゲルがたった二日で神聖魔法『神聖魔法光剣ホーリーソード』をマスターしたの見て、目を白黒させていた。


 私はいつもの実戦方式で修行。赤い馬車が通った道には、草さえ生えないと噂になるほど激しい修行だ。

 


 そうそう。


 サンダルフォン家の真っ赤な馬車は、やはり凄く目立つ様で、国境に着くまでに山賊が何回も襲って来た。

   

 古代の娯楽本『竜を倒せし者達』によると、山賊に人権はないと書いてあったので、私もそれに従って盗賊には容赦しない。


 襲ってきた山賊や同族は片っ端から、無言で吹き飛ばした。


 


 修行を繰り返しながら先に進むこと4日。私達は予定通りエルフの国との国境へたどり着いた。



 街道沿いに丸太で作られた簡易な関所。長身で耳の長いエルフの衛兵達が警備している。


 ここから先はエルフの国の領土だ。

 

 国交が殆ど行われていないから、関所を通ろうとする者は私達以外に誰もいない。



「どうも。親善大使でやってきましたアークトゥルス騎士魔法学校の者です」 


「あんたらが噂の親善大使か……大変だったな」


「えっ? 何がですか?」


「あんたらは出会わなかったのか?血塗られた悪魔の馬車と」


「ち、血塗られた悪魔の馬車……」


「最初はついにヘヴェリウス国からの攻撃が始まったと思ったがそうじゃないらしい。4日程前からこの街道沿いを破壊しながら走ってる馬車がいるそうだ。血塗られた赤い馬車。新たな魔物か魔王軍の兵器か……」


「ぐ、偶然出会わなかったみたいです。よ、良かった~」


「ワタクシの馬車以外に赤い馬車がいるだなんて生意気ね、ぶっ壊してふhすhhdhhfほs。何をするんですのスピカさん」


「いいから黙って」


「ともかく、あんたらが来る事は聞いている。通行届も本物の様だ。通っていいぞ」


「あ、ありがとうございます。行きましょう。ペテル早く出して」


「は、はい。行ってイフリト!イグニス!」



 ヒヒヒィィイイイイイイイイイン。



 両馬は一声上げると走り出し、あっと言う間に関所が見えなくなった。


 あーあぶなかった。絶対血塗られた馬車って私達の事だわ……やっぱり、範囲魔法を連打したりとかはしばらく禁止にしよう。




 ついにエルフの領土へ突入した私達。最初に目指すのはポラリス大魔法学校。




 絶対、親善じゃすまないけど頑張ろう!

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[気になる点] 星座シリーズならベテルでは? ペテルだとあの怠惰な人に……
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