第三死 卒業旅行!? どう考えても任務なのですがそれは……
アルケナル校長が装備した『血塗られし人斬りの刃』を破壊して、剣聖の意識を取り戻したりして、布団に入れたのは深夜を過ぎだった。
なんでそんな名前の剣を簡単に装備しちゃうんだろ。
見た目だってどう考えても『触ったら呪います』的な感じの剣だよ?
剣聖って、剣の腕はすごいけど、剣を見る目が全くないよね。
布団に入ったのが深夜にも関わらず、目をつぶると昼間のリゲルとの事を思い出してしまうので結局ほとんど眠れず、寝不足のまま突入した卒業式だったけど、無事何事もなく終了した。
はぁ。私……やっと卒業出来るんだね。
実に長かった。私、何年通ったんだろ(遠い目)
卒業後の予定は……リゲルと一緒に世界を平和にする旅にでる?
なんかちょっとアバウトすぎてわからない。
リゲルは何か考えているんだろうか……絶対考えてないんだろうな。
例えば最初は何処の町に行こうとか、絶対考えてないよあの人。
正直この先の人生設計が不安ですね。
あ、一緒に行くなんてまだ答えてないんだった。アハハハハ。
なんて将来について悩んでいた私を、アルケナル校長が卒業式後に呼び出した。
校長室に入るとそこには既にリゲルが待機していて、私が来るのを待っていた。
「おうおう。やっと来たようじゃの」
「アルケナル校長、お呼びでしょうか?」
「まずは卒業おめでとう。お前達二人は厳しい稽古にも良く耐え、立派に成長したとワシも関心しておる。いやー実にすごい。あんたらは偉い」
「やけに褒めますね。何か怪しいんですが……」
私がジト目で睨みつけると、校長はスッと目線をそらした。絶対なんか隠してるでしょコレ。
「そんな目でみるでない。なーに今日は頑張ったお主たちに、ワシからプレゼントを渡そうと思ってな」
「プ、プレゼントですか? まさかイヤラシイものじゃないですよね?」
「だ、大丈夫じゃ、至って健全。場合によっては不健全か」
健全だけど、不健全? いったい何?
「スピカ・プラーエにはこれじゃ」
校長が私の右手に何か握らせてくる。何かフワフワした……えっと布?
……
恐る恐る手を開けると真っ赤なイヤラシイ下着だったので、校長の頭を堅い杖でボコボコ殴る。
「ま、間違えただけじゃ。本当はこっちじゃ」
校長が『豪華賢覧☆エルフ国満喫ツアーペアでご招待☆』と書いた紙を私に手渡してくる。
「えっとこれは?」
「ワシから二人へ、卒業旅行のプレゼントじゃ」
「ちょっと待ってくれ。エルフの国とは、アルタイルの事で戦争になりかけてるんじゃ?」
「そうじゃよ」
「私達、エルフの国に入国なんて出来ないでしょ」
「普通なら入国はおろか、国境に近づく事すら出来んじゃろうな」
「じゃあだめじゃないの」
「お主たち、【勇者】と【賢者】になりたいんじゃろう? 正式に【勇者】と【賢者】に認められるには、三つの必要なものがある」
「必要なもの?」
「実力と実績と……装備じゃよ。お主らはもう勇者と賢者と言っても過言ではないレベルの実力がある。これはワシも認めよう。一方で実績としては……国に報告出来るものがまだない」
確かに私は沢山の魔物を倒して来たかもしれないけど、すべて隠れてやってきた事だし、リゲルに至ってはまだ修行しかしてないもんね。
「それと装備じゃな。やはり凶悪な魔物達と戦うの勇者が、その辺の店で買った様な鉄の剣はないじゃろう」
私達二人をじっと見比べて溜息をつく校長。
「そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫だ。問題ない」
ズバッと答えたリゲルだけど、言われてみれば確かに全然大丈夫じゃないよね。
まずリゲルの防具。これ革の鎧じゃん。
武器だってマジでその辺のお店で買った普通の『アイアンソード』だし。
盾なんて、私が杖で殴って凹んだ後が残ってる使い古した『アイアンシールド』だもん。
今まで良くそんな装備で耐えれてたよね。
店で買った鉄の剣で四天岩に傷をつけるとかありえなくない?
リゲルって本当はめちゃくちゃ強いんじゃないかな。
もっといい装備してたら、楽に戦えたんじゃないの?
まぁ私も人の事を言ってらんないかな。
武器は研究所から持ってきたただの堅い杖で、防具は黒い革の手作り猫耳付きマント。下なんて学校の制服だ。
たしかに賢者としては装備が貧弱すぎる。
「そこでじゃ、リゲルよ。お主にはこの剣を貸してやろう」
アルケナル校長が豪華な装飾を施されたキラキラ光る黄金の剣を、リゲルに放り投げる。
「ありがとうございます。よっし。これで俺の武器の問題が一個解決したな」
「違うぞ。その剣で解決するのは実績の方じゃ」
「へっ?」
剣を借りて……実績になる? ちょっと意味わかんないです。
「持ち主に返してきて……」
校長がボソッと言う。
「えっ?」
「持ち主に返して連れて来て」
「「えっ?あああああああああああああああああああああ」」
間違いない。この黄金の剣の持ち主は金ぴか装備のアルタイル王子だ。
つまり、エルフの国に誘拐されている王子を救い出してこいってこと?
「わかりました。必ずアルタイル王子をエルフの国から連れて帰ります」
「ちょ、ちょっとリゲル勝手に返事しないでよ。これって卒業旅行じゃなくて、もう任務じゃん」
「いいだろ。どうせいつかアルタイルは助けに行くつもりだったし」
「私と相談くらいしてもいいじゃない」
「これこれ、校長室でいちゃつくんじゃない。シリウス校長も見ているぞ」
そう言われて、卒業式の壇上に飾られるという仕事を終え、校長室に置かれているシリウス校長の氷像の方を見る。
氷像の全身に、「卒業してもまた会おうな」「〇〇君実は好きでした」「ヒラタムネ ホントはちょっと ムネガアル←嘘で草」などと、生徒達から多数の寄せ書きが書かれていた。
これ一応銅像とかじゃなくて、本人なんですけど。氷像で告白するんじゃない! あと最後の奴いったい誰の事を言っているの? 絶対に捕まえてやるから見てなさいよ。
「あ、そーじゃそーじゃ。シリウス校長と言えば、ヘヴェリウス国ではどうやっても解除の方法がみつからんかった『氷の監獄』。もしかしたらエルフ領にある世界樹の木の麓にある妖精の村の住人なら、何かしっているかも知れんな」
「『氷の監獄』の解除方法が妖精の村に!?」
「どうじゃ。スピカ・プラーエもエルフ国満喫ツアーに行きたくなったじゃろう」
うーん。
確かにシリウス校長を解除する方法が、本当に妖精の村にあるなら行きたい。
やっぱり私のせいで凍っちゃったんだし、私が治してあげたい。
でも、なんか怪しいんだよねー。アルケナル校長の話って出来すぎてない?
もしかしてだけど、校長は『氷の監獄』を解除する方法は妖精の村にあるって、最初から知ってたんじゃない?
下手したらシリウス校長が凍ってる事すら、国にちゃんと報告せずに独裁政権をしていたんじゃ……
それにこれってやっぱどう考えても、どこかから依頼された任務だよね……
めんどくさい事を全部私達に押し付けてる感じがするんだけど。
ジト目で再び校長を睨みつける。
スッと視線を外す校長を見て確信する。
このジジイ……
「ぶ、武器と防具に関してはエルフ国を旅する内に、必ずや自分に合った最高の武器に出会っちゃうんじゃろうな……多分(適当)」
「そうですか。俺に合う武器も頑張って探してみます」
ちょっとリゲル素直過ぎない? 一緒に行動する身としては不安なんですけど。
「ほれ、リゲルはもう決心したようじゃぞ。お主はどうするんじゃスピカ」
「うーん。ちょっと考えたい事が……」
「『世界を平和にする旅』に一緒に行くんじゃろう。『私の勇者さま』と」
「は?」
顔面が恥ずかしさで沸騰する。
校長はわざとらしく、ハグしてチューの動きを何度もする。ぶちゅーぶちゅーってうるさい!!!
こんのエロジジイイイイイイイイイイイイイ!!見てやがったな!!
「行くわよ行かせてもらいます。ただし!! このエロジジイを殺してからね!! ウリャウリャウリャ!」
私が校長の首をギリギリと絞めて「死んじゃう。まじでワシ死んじゃう」なんて言わせていると、突然校長室のドアが何者かによって蹴り開けられる。
バァァァァアアン!!
「やはりエルフ国か……いつ出発する? ワタクシも同行しますわ」
「カペラ院」
「……プ、プリティプリーストの聖地に行けると聞いて!!!」
「デネブ!!」
校長室に入ってきたのはカペラ・サンダルフォンとデネブ・フォーマルハウトだった。
「あ、あなた達、勝手にそんな事言い出したってだめよ」
「あらあら、スピカさんがワタクシを裏切って、お二人で不健全な旅行に行くと聞いて慌てて来ましたのに……」
「誰に聞いたのよ」
「乙女の勘よ。やはり来て正解だったわ」
なんという執念。やはりカペラは恐ろしい子……
「デネブも今度は安全な合同演習とは違うのよ!」
「……いい。エルフの国にはプリティプリーストの作者もいるの。聖地に行けるなら……死んでもいい」
なんという執念。やはりデネブも恐ろしい子……
「二人追加って事でいいかのう? せっかく二人だけのイチャラブ不健全旅行、帰った頃にはご懐妊ツアーになるかと思っておったのに……」
イチャラブ不健全旅行になるかどうかは知らないけど、本当は二人きりでの旅行がちょっと嬉しかったり……
それなのに明らかに邪魔者なカペラが同行してきたら台無しじゃない!!
帰りなさいカペラ。ハウスよハウス!
デネブもお土産買ってきてあげるから我慢我慢。
「校長! りょ、旅費とか倍になっちゃうんですよ。やっぱり私とリゲルの二人だけの方がいいかなって。ほらここにもペアでご招待って書いてあるし」
「二人増えるくらいなら、ヘヴェリウス国から直々に予算が出てるから大丈夫じゃ……ハッ!?」
「やっぱり任務じゃないのーーーーーーー!!!」
こうして私達4人はアルタイル王子を助ける為、そしてシリウス校長の『氷の監獄』の解除方法を知る為に、エルフ国へ卒業旅行と言う名の任務をしに行く事となったのだ。




