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第一死 高等部に進学しましたがやっぱり勇者が死んでしまう件 前編

 皆さんヤッホ!スピカ15歳だよ! 『合同演習終了証』は取れたのかって?


 取れる訳ねえええええだろおおおおお。


 

「ほい、落とすなよ。落としたら死んでしまうでな」


「おっと、あわわわわ……」


 シリウス校長の氷像をホイっとリゲルに投げる剣聖。リゲルはしっかりキャッチしたんだけど、思いのほかツルツルしていたのでポルックスがサポートに入る。



「『合同演習終了証』はいつでも取りに来て構わんからな。亡くなったシリウス校長の為にも必ずワシから奪い取るんじゃぞ」

 

 シリウス校長は亡くなってないし、取れる気がしないんですけど。


 だって嘆きの剣に操られていた時とは比べ物にならない位早いし、隙はないし、一応勇者込みの5人で追いかけているのはずなのに、まったく触ることすら出来ないんだもん。


 結局時間切れになって、私達は一旦学校に戻ることになったのだ。



 一か月間も行方不明だったリゲルだけど、やっぱりその犯人はシリウス校長だった。


「突然現れてスピカさん達をビックリさせましょ。それまで鍛えてあげるわ」と言われて連れてこられたみたいね。


 ……多分『鍛えてあげる』の部分に釣られて、ホイホイついて行ったんだと思うよこの人。


『ヒーローは最後に現れて、お姫様達を助けちゃお作戦』にまんまと乗せられたリゲルは、嘆きの洞窟内で監禁(厳しい修行付き)されていたらしい。


 そこにやってきたのが氷血女帝エメラダと黒獅子の仮面の男プロキオン。



 おまけにリゲルの代わりに参加したカノープスがエルフ国のスパイで、アルタイル王子を誘拐しちゃうなんて嘘みたい。


 ジジイとの謎の追いかけっこから解放された、王子の護衛役のポルックスは、アルタイル王子がエルフの国へ誘拐された事を伝えに城へ向かった。


 既に概要は使い魔で送ってあるらしいけど、絶対怒られるよね。


 怒られるで済めばいいけど。



 ちなみにポルックスの使い魔は『飛びモモンガ』のモモちゃんらしい。見せてもらったけどめちゃめちゃ可愛かった。


 使い魔ぽぴい。可愛い子希望。




 シリウス校長の氷像をリゲルがかつぎ、私達は学校へと帰った。



 こうして私達の合同演習は終わったのだ。(終わったとは言われていない)




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 半年後。


 あの合同演習での出来事で世間は大騒ぎだったみたいだけど、私達はあまり咎めらず、無事に中等部を卒業し、高等部へ進学する事となった。


 今日がその騎士学校と魔法学校の合同入学式だ。


 中等部の入学式と同じく、巨大な守護女神トレミー様の像が見下ろす大聖堂で行われており、アルタイル王子の姿はない。



 シリウス校長の『氷の監獄(アイスプリズン)』も未だに解除できてないので、氷像のまま壇上の左側に置かれて入学式に出席している。


 なぜか壇上の右側には私のスピカちゃん人形ダブルピースが置かれているから恥ずかしい。


 だれが置いたのって…あのエロジジしかいない。



 アルケナル騎士学校校長の挨拶が、額に『合同演習終了証』を貼ったまま始まる。



「HELLO!皆さん。ワシがアークトゥルス騎士学校校長のアルケナルじゃ。世の中、色々と物騒な世界になっておるが、若者達にはこの高等部の3年間で、大いに恋や青春に励んで頂きたい。それは今は亡きシリウス魔法学校校長の願いでもある」


 亡くなってないってば……


「そこでワシは考えた。騎士学校と魔法学校の男女比率おかしくない?」

 

 ん? 何を言い始めたの?


「騎士学校の女子生徒の数は1割、魔法学校の男子生徒の数も1割。これじゃあ恋がはじまるもんも、始まらんちゅー訳じゃ。そうだろう?」


 ソウダー!!!っと騎士学校の男子生徒達から歓声があがる。


「だからワシは決めた。用事がある度に魔法学校に行くのもめんどくさいし。やるなら口うるさいシリウス校長がいない今しかない。本日より騎士学校と魔法学校を併合し、アークトゥルス騎士魔法学校とする!!」


 男子も女子も大騒ぎになる。


 シ、シリウス校長!? あなたが凍ってる間にとんでもない事になってますけど……



「それと制服も新しい形の物を国の予算で用意させておる。今後はそれを着て登校するように。ついでに校長室には男子出入り禁止じゃ。新しいクラス割については、守護女神トレミー様への祈りの儀式の間に先生達が決める。以上」


 い、今からクラス割決める? なんか先生達が大慌てで走っていったけど、先生達にも内緒だった訳?


 

 きっと今まではシリウス校長がアルケナル校長を止めていたんだね。最早これは独裁国家だわ。


 私にはシリウス校長の氷像が怒りの炎を上げている様に見える。

 

 アイスプリズンが解除されたらただじゃすまないな。きっと。


 


 壇上には親の顔より見た神父。



 守護女神トレミー様への祈りの為に、ハダル神父が待機した。


 そう、これで普通の人なら3回目の守護女神トレミー様への祈りの儀式が始まる。


 私はResultのせいで10回も祈っているけどね。



 高等部卒業後に最後の『守護女神トレミー様への誓い』があって、そこで夢を誓って決意し、終わりになるらしい。



 私にとっては11回目の守護女神トレミー様への祈りだけど、【賢者セージ】にするつもりだ。


 リゲルと私は運命共同体。


 勇者が願いの彼を、一番サポート出来るのは【賢者セージ】だと思って既に決めてある。



 だけど壇上のハダル神父がさ……私のスピカちゃん人形(岩)ダブルピースにプリティプリーストの礼装(黄)を着せているんだよね。


 はぁ。順番が回ってくるのが本当に鬱になる。


 しかもあなたはいつも遅いから最後って決められてるし……


 遅いのは私のせいじゃないんですけど。



 祈りの儀式の準備が終わったみたいで、生徒達が順番にトレミー様へ祈りを捧げ始めた。


 

 デネブ・フォーマルハウトの番。

 

「デネブ・フォーマルハウト。あなたは守護女神トレミー様へ、何を祈り何を願う」


「…………」


 守護女神トレミー様の像から暖かい風が吹いた気がした。大勢の男子が喝采を上げる。


 どうせこれからクラス割が変更になって、デネブと同じクラスになるかもしれない。そんな期待から男子達が沸き上がったでしょ。


 まったく男子ってスケベなんだから。


 

 リゲルの番になった。


「リゲル・ロワーエ。あなたは守護女神トレミー様へ、何を祈り何を願う」


「俺の願いは【勇者】だ。必ず魔王を倒し、世界に平和を取り戻す」


 守護女神トレミー様の像から熱風が確実に吹いた。トレミー様の像は赤面して手で顔隠した。……様に見える。


 女子達が黄色い悲鳴を上げ、中には失神するものも現れた。


 どうせこれからクラス割が変更になって、リゲルと同じクラスになるかもしれない。そんな期待から女子達は興奮したんでしょ。


 まったく女子ってスケベなんだから。




 リゲルの次はカペラだ。


 カペラ大丈夫かな。ちゃんと魔法使系のお願いにするんだよ。


 でもダメだろうな……よりにもよってリゲルの次なんて。


「カペラ・サンダルフォン。あなたは守護女神トレミー様へ、何を祈り何を願う」


「わ、わたくしは……」 


 キョロキョロと周りを見渡し、リゲルを見つけるカペラ。目はハートになり、鼻息がフンフン言い出す。


 ステイ、ステイよカペラ。


「素敵な……」


 だめよ~落ち着いて~ほら、すーはーすーはー。素数を数えて~。


「素敵な……魔法使い!!」


 良くやった!!!って【素敵な魔法使い】?


 魔法系……だよね?


 守護女神トレミー様の像から水が噴き出しカペラをビショビショにした。トレミー様の像はなんでやねんと突っ込みのポーズとった様に見えた。




 そしてついに最後の私の番。


「よ、スピカちゃん」


「待ってました!!」


 生徒達から謎の掛け声がかかる。私に何を期待しているの? 今日は一発KOですから。



「お久しぶりですね。スピカ・プラーエさん……」


「【賢者セージ】」


「えっ?」


「【賢者セージ】で」


 ブーブーと観客(生徒達)から不満の声が上がる。


「鬼!!」「人でなし!!」「神父が泣いているぞ!」「このヒラタムネ!」


 は?


 なんで私がそんなこと言われないといけないのよ。特に最後の奴、顔覚えたからね。



 神父が泣きながら私に言う。


「スピカさんお願いして役目でしょ」


 貼れないクエストを要求するゆうたみたいな台詞を言うんじゃない。(謎)



「わかったわよ。聞く聞く。でももう決まってるから早くしてね」


「え~どうしよっかな~ハダル困っちゃう~」


「早く!!」


「は、はい!!」


 どたどたどた、と一旦壇上のスピカちゃん人形の裏に行き、三つ編みのカツラをかぶり、ハートの柄のエプロンを付けて戻ってくるハダル神父。



「たけし~たけし~朝よ~起きなさい。あーもうあの子ったらいっつも寝坊するんだからトントントントン(包丁の音)」


 するとシリウス校長の氷像の後ろから7歳くらいの男の子が出てくる。


「ママおはよう~(棒読み)」


 いや、誰?


 HAHAHAHAHAH~って観客(生徒)達が笑ってるし。誰の子よ。


「ほら、あなたも新聞なんて読んでいないで(熱演)」


 付け髭を渡してくるハダル神父。


 私がお父さん役って事ね。



「たけし~早く朝ごはんを食べちゃいなさい。今日はトーストよ(熱演)」


「えーやだよ僕、昨日の残りのプリンが食べたい(棒読み)」


「だめよ。朝からプリンだなんて、ほらあなたが二つとも食べちゃって(熱演)」


 二人がプリンとトーストを指さす。


「えっと……プリンとトースト?」



「プリンと(棒読み)」


「トースト(熱演)」


「プリンと(棒読み)」


「トースト(熱演)」


「プリンと(棒読み)」


「トースト(熱演)」



「プリースト!!!!」


 

 ドヤ顔でポーズを取る二人。気が済んだのか男の子は走って何処かへいった。



「いや。誰?今の子誰?」



「続きましてショートコント『セクシーな労働組合』……」



「もういいですから!!そんなタイトルで落ちてるのやらなくていいですから!」


「え、じゃあ【神官プリースト】OK?」


「NO!!!!」


「そんな~こんなに頑張ったのに……」


「勝手に頑張ったんでしょーが。私の願いは【賢者セージ】」


「チッ」


「舌打ちしない!!」


「はいはい。スピカセージ」



 なんだかソーセージみたいな言い方で、つまらなそうに守護女神トレミー様にお祈りした神父。


 守護女神トレミーの像からは冷たい風が吹き、『82点』と少し厳しい評価の看板を持っていた。




 謎のコントに本格的に巻き込まれた感じになったけど、これで私の女神の祈りは【賢者セージ】。


 今度こそしっかりサポートしてリゲルを守る。絶対にね!

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