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第三死 剣聖と賢者と…… 後編②

 ぐあああああ。もうだめだああ。速攻で私の作戦が脆くも崩れ去ったあああああ。


 お願いデネブ。信頼できるのはあなただけよ。


 デネブと顔を見合わせ一緒に頷く。


 デネブはカツカツと前に歩み出て……



「……わ、私は快楽天使プリティープリースト! プリティホワイトのデネブ・フォーマルハウト! 洞窟にはびこる悪魔の騎士よ! 天使に変わって~~~~絶頂よ☆☆」


「」


 普段は絶対出さないような大声でポーズを決めるデネブ・フォーマルハウト。



 思わず後ろを振り返り、パチパチと拍手をしているカノープスと目が合う。


 その目がこう言っている「あんたは行かないんですか?」

 

 いやいや、私は行きませんよ。お家帰るんで、そこどいて貰えますか?


 あ、だめですかそうですか。



 ………


 ええぃ。



「わ、私はスピカ・プラーエ!……えっと…か、雷とか、雷とか得意です!!!」


 前に走り出て、赤面しながら叫ぶ。本当に恥ずかしい。せめてもうちょっと考えさせて。



「……悪は絶対許さない! アークトゥルスのプリースト。三人揃って~」


「スリーアークスでございますわ!」


 赤と白と黄色の爆煙がドーン!!!! 




 ……いやドーンじゃなくてナニコレ。聞いてないんですが……




「……ワレハケンヲキワメシケンセイ。スベテヲタツモノ」


 剣聖も答えるんかーい。って突っ込んでる場合じゃない。




 剣聖の目が赤く輝き、カペラ目掛けて駆け出す。


「カペラ!」


「わかっていますわ。獄炎の『水流の渦(アクアム)』!!!」


 剣聖の走り出した足元に、大きな水流が渦を巻いて発生したが、剣聖は軽々とジャンプで避ける。



「……『神聖魔法光弾ホーリーバレット』!!」


 空中で避ける事の出来なくなった剣聖に向けて、デネブの神聖魔法光弾ホーリーバレットが連射される。


 剣聖は怯むことなく連射された弾丸をすべて切り落とし、そのままカペラへ向けて落下してくる。



「『爆裂魔法フレア』!!」


 私は地面ごと爆裂魔法で吹き飛ばす。何をって……カペラを。


 突然目の前の標的がいなくなり、一瞬だけためらった剣聖だが、そのまま標的をデネブに変えて突っ込んでくる。


 デネブの体の周りへ4個の電撃玉サンダーボールを出現させ、高速で周回させ防衛。


 接近してきた電撃玉サンダーボールの一つをバチバチっと斬り、バックステップで退避する剣聖。


 普通の人なら痺れて丸一日は動けなくなるはずなんだけど、やっぱり全然効いていない。

 


「火炎よ! 舞い踊れ!! 『初級水魔法プチウォタ』」


「……『神聖魔法光雨ホーリーレイン』」


 剣聖へ向けてカペラの放水が圧縮されてレーザーの様に横に薙ぎ払い、デネブのホーリーレインが光の柱となって無数に降りそそぐ。



 回避しようとする剣聖の足に、私の『岩石魔法ストーンで作った長靴を、無理やり履かせる。


 突然岩石の長靴を履かされた事により一瞬ためらう剣聖だったが、即座に長靴をスパスパ(一応岩石なんですけどそれ)切り裂くと、プチウォタとホーリーレインを避けながら私へ駆け寄る。



「早い!!」


 とっさに堅い杖で斬撃を受けるが、凄まじい衝撃で壁まで吹き飛ばされる。


「スピカさん!きゃあああああああああ」


 続けて蹴り飛ばされるカペラ。


 残されたデネブも斬撃で吹き飛ばされる。一応『神聖魔法光盾ホーリーシールド』で防いでいたからなんとか大丈夫だと思う。



 先程壁にぶち当てられた傷を『初級回復魔法プチキュア』で癒しながら立ち上がる。



 ……強い。

 

 

 ……強いけど。



 ………剣聖が本気で殺そうとして来ていたらこんな強さなはずない。



 やはり、シリウス校長の言う通り、誰かに操られているか、スキルの狂戦士バーサーカーが暴走しているか、ボケちゃったかの内のどれかだと思う。


 操られていようが、暴走していようが、ボケていようがどれでも構わない。


 普通だったら絶対気が付く事に、意識が回らず気が付けない状態なら、私の勝機に繋がるのだから。


 

「カペラ、デネブ。まだいける?」

 

「ええ、なんとかいけますわ。私の心が真っ赤に燃えている限りは」


「……悪には絶対負けないんだから」 

   

「うん。じゃあ、今度こそ作戦通りで」


「よろしくってよ」


「……うん。わかった」



 私は杖を構え、剣聖の正面に立って覚悟を決める。


 息を整え。集中し、魔導『雷神降臨ライトニングインストール』を発動させる。


 ……私に与えられたのは5分。


 私は雷神降臨ライトニングインストールで、5分だけ速度が2倍になる。




「私が相手よ! 来なさい!!」 


 私の挑発に乗り、一瞬の内に迫る剣聖の刃。上段。下段。迫りくる刃を杖で受け、回避し、受け流す。


 ……速度が2倍程度じゃホントにギリギリ躱すのが精一杯。攻撃を返すなんて絶対無理。


 危険察知に集中し、ともかく躱す事に専念する。



 がああああああ、誰がどちらでも構わないよ!! こんなの死んじゃうじゃない!!


 

 残り3分。


 攻撃を本当にギリギリで回避しながら、カペラとデネブを見る。


 うん。順調っぽいって、うお危ない!!


 ああああ私の前髪がちょっと切れたあああ!!!このじじいいいいい。



 残り1分。


 やっばい。剣聖の攻撃の速さが上がってきた。もうちょい!!もうちょいだから!!


 

 残り30秒。


 私の準備はOK。でも予定より雷神降臨ライトニングインストールが早く切れそうかも……




 二人は? 



 ……OK!!



「今よ!!!!!」



 合図と共に轟音を響かせながら頭上から大量の水の塊が降ってくる。


 洞窟内の天井付近に作られた、デネブの『神聖魔法光盾ホーリーシールド』で作った直径20m位の巨大なバケツ。


 その中には業火のカペラによって溜められた大量の水が満杯になっており、合図と共に『神聖魔法光盾ホーリーシールド』が解除されたのだ。


 最早小さなダムと化していたその水が、私が広間にこっそり作っていた『岩石魔法ストーン』のプールを、一瞬の内に満杯にする。


 落下してきたものすごい量の水圧で、深さ2m直径20m程のプールの中心に沈む私と剣聖。


 

 やることは決まっている。剣聖がどこにいようが関係ない。



 最大の魔力を込めて、今解き放つ!!!



「『雷神撃サンダースパーク!!!うわあああああああああああああああああ」



 洞窟内に響き渡るスパーク音と閃光。


 

 

 高圧の電撃により少しぬるくなった水中を確認するが、校長の姿は見えない。



 「ぷはっ」


 私は魔導「浮遊レビテーション」を使って水中から飛び上がると、水蒸気の立ち上がっている水面の上にへ立った。


 


 剣聖の反応は……ない。




 確実に倒せたはず、っていうか死んでないよね? 


 シリウス校長は、アルケナル剣聖は死んでも死なない人だから遠慮しなくていいって言ってたけど、流石にいまのは……




「や、やりましたの!?」


 


 激しい斬撃音より一瞬早く危険察知が発動し、水中から放たれた攻撃を回避する。


 私の作ったプールは綺麗に水ごと真っ二つにされていた。



 ザーッとこぼれ出る岩石プールの水。中心の剣聖は、赤い目を光らせてニヤっと笑うと、巨大な両手剣を頭上に構えた……



「あ、あの構えは斬光断罪剣!! 」


「しっているのですかアルタイル王子」


「ああ、その斬撃は光をも切り裂く……」


 いつから起きていたか知らないけど、洞窟の隅っこで流暢に解説しだす王子を無視する。





 やっぱり一緒に溜めておいてよかった。絶対こうなると思ってたんだ。



 さっきのプールの中で放った『雷神撃サンダースパーク』を付与した堅い杖に、中級風属性魔法の『竜巻トルネード』を合成する。



「斬光……」



 この一瞬をずっと待っていたのよ!



「疾風迅雷!! 貫けぇえええええ!!! 『雷神龍撃槍らいじんりゅうげきそう』!!」



 私の必殺技フェイバリッドスキル雷撃槍らいげきそうを上位魔法へ改良した。



 新必殺技。



 緑と黄色の光を纏った『雷神龍撃槍らいじんりゅうげきそう』が私の渾身の投擲により、超高速で斬光断罪剣を構えている剣聖の両手剣へ直撃する。



「断罪……クッ」


 

 私の狙いはただ一つ!!!それは、剣聖ではなく、剣聖が頭上に高々と掲げたその両手剣だ!!!



 ズガアアアアアアアアアアアアン!!!



 『雷神龍撃槍らいじんりゅうげきそう』は激しい閃光と雷撃音を上げながら両手剣を破壊した。



 

 ………



 …………



「アルケナル校長、アルケナル校長」


 倒れているアルケナル校長に近寄り、跪いて『初級回復魔法プチキュア』を使用する。





 ……使用する必要があったかどうかはわからない。





「やっぱり死んでしまったんですの?」




 ……死んでしまえば良かったのに。だってコイツ。



「パンツを覗いてんじゃないわよ!!!このエロ爺!!!」


 そう、この剣聖ことアルケナル校長は、薄目を開けて私たちの下着を盗み見ていたのだ。


 思わず手が出てしまったが、許されるよね。



 だって今は大きなたんこぶを付けて倒れたまま、カペラの足に頬をスリスリしているんだもの。


「ヒッ」


 ほら、カペラのハイヒールのカカトが校長の頭を踏み潰したわ。





「おっほん。ともかくじゃ。お前達が誰か知らんがありがとう」


 やっとの事で立ち上がった剣聖がお礼を言った。ハイヒールの刺さった頭から血を流したままだけど。



「いやーまいったまいった。綺麗でエッチなお姉ちゃんがワシにカッチョイイ剣をプレゼントしてくれてのう。そっから記憶が全くない。いやーお恥ずかしい話じゃ」


 ああ、やっぱり。


 校長が暴走していた原因は、私が破壊した『嘆きの剣』。


 しっかし、剣聖ともあろう方が剣に操られるって……しかもその理由が綺麗でエッチなお姉ちゃんに貰ったからって……


 そりゃシリウス校長から呆れられてるはずよね。お恥ずかしい話じゃじゃないわよ。



「えっとそれでアルケナル校長……」


「待て、ふむ。積もる話はあるが、どうやら後のようじゃな」


「えっ!?」



 アルケナル校長がカッと目を見開くと、広場の左右の壁が同時に破壊された。


 左の壁からはリゲルが何者かの攻撃でこちらへ吹き飛ばされて、右の壁からはシリウス校長が冷たい冷気と共に吹き飛ばされてきた。


 二人ともかなりの重症を負っている。いったい何が起こっているの……



「あらケンちゃんたら。私のプレゼントしたせっかくの剣をもう壊しちゃったの?」


 シリウス校長が吹き飛ばされてきた右の洞窟から、スケスケの青いロングドレス(カペラよりエッチ!!)の女が現れて妖艶に話した。


 左の洞窟から出てきた黒い獅子の仮面の男は無言で剣を構える。



「いいかげんにしなエメラルダス!」


「だ~から、昔の名前で呼ぶのは止めていただけますか? シリウス校長さん。今は魔王軍四天岩、氷血女帝のエメラダって名乗ってますの。あ、こっちの坊やは知り合いの変態から貰ったプロキオン君よ。皆さん仲よくね」


 紹介しながらいやらしくプロキオンに抱き着いて舌なめずりする氷血女帝エメラダ。


 合同演習に魔王軍の四天岩が来るなんて冒険のしおりに書いてありませんでしたよ……


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