第三死 剣聖と賢者と…… 後編①
説明役の魔法学校の校長含む7人が、騎士学校と魔法学校の合同演習へ向かうため、嘆きの洞窟へ続く森の入り口に集合した。
合同演習の説明役として、恋のレクリエーションの仕掛け人のシリウス校長。これから私達を剣聖と戦わせるって言うのにニコニコの笑顔だ。
合同演習という名の恋と青春のドキドキ☆レクリエーション(本当に死亡する可能性有り)に参加する、6人のイカレタメンバーを紹介するぜ。
まず、中央で金ぴかの鎧に身を包み、腕組みをしたまま偉そうな態度をしているが、アルタイル・ヘヴェリウス。
太陽の光が反射して眩しい金キラ鎧と金の剣の王子様。相変わらずやたらにこっちを見てくる。
座って静かに目を閉じているポルックス・ジンバブエ。確実に寝ている。
剣聖との戦いの時に見かけなかったけど、いったい何処に行ってたんだろ。
無表情でじっと立っているのがデネブ・フォーマルハウト。白いプリティプリーストの礼装で、美しい装飾のなされた杖を持っている。
あの杖プリティプリーストの杖と同じ形だったんだね。
私の横で水芸を披露しているのがカペラ・サンダルフォン。相変わらずはしたない胸を強調する真っ赤なドレス。
どうせ破けるのに何故着てくるのか。
その横で入念に道具や斧の手入れをしているのが……誰?
ん?
二度見する。
いや、誰ええええええええええええええええええええええええええ?
え? 嘘でしょ? 慌てて合同演習のお知らせをガサガサと確認する。
騎士学校 3名
☆アルタイル・ヘヴェリウス 3年 男子
カノープス・アラビアータ 3年 男子
ポルックス・ジンバブエ 3年 男子
魔法学校 3名
☆スピカ・プラーエ 3年 女子
デネブ・フォーマルハウト 3年 女子
カペラ・サンダルフォン 3年 女子
おぎゃああああああああああああああああああああああ。
は?
両眼を腕でこすり、お知らせを再確認する。
カノープス・アラビアータ 3年 男子
ええええええええ?
アラビアータ? パスタみたいな名前しやがって……
リゲルは? リゲル・ロワーエさんは?
シリウス校長をキッと睨みつける。校長は私にグッと親指を立てた。やりやがったな。
「あ、あのシリウス校長。リゲル君がいないみたいなんですけど」
「リゲル? 知らない子ですね。ここには合同演習に参加する6人しか呼んでいませんが……」
「で、でもリゲルは……」
「リゲル・ロワーエならここ一ヶ月見てないな。行方不明だそうだ」
アルタイルが私と校長との会話に口を挟む。
「お前がスピカ・プラーエか。リゲルから聞いたことがある。あの正門前の石造より大分小さいな」
金ぴか王子は胸の辺りをさすりながらそう言った。は?
「あなたがアルタイル王子ね。よろしく金ぴか君」
「何だと!」
「はいはい。皆さんお静かに。時間になりましたので、本日からの演習について説明します」
魔法学校の校長がパンパンと二度手を叩き、騒いでいた二人を静めると説明を始めた。
「どなたかが事前に行先を漏らしたので、既に噂になっていてご存じかと思いますが、皆さんは合同演習として、嘆きの洞窟へ行ってもらいます」
ジッと校長がアルタイル王子を睨んでいた。極秘の情報を漏らしたのはやはりアルタイル王子なんだろう。
「あなた方には明後日の夕方までに、嘆きの洞窟に隠されたこの『合同演習終了証』を取ってきて頂きます」
校長が手に持った『合同演習終了証』をピラピラさせる。
「無理と思っても諦めずに、『必ず』皆さんで協力して『合同演習終了証』持って帰って来て下さい」
「ふん。まったくもって下らないお遊びだ」
「はいそこ。アルタイル君。真面目にやるように。お父様からも真面目にやらせるように言われていますので……」
「チッ」
えっと、そもそもリゲルを助ける為に、嘆きの洞窟に行くんだよね?
じゃあもう参加しなくていいっていうか、今すぐリゲルを探しに行かないと……
「シリウス校長。私、急に用事が……」
「あなたの用事は嘆きの洞窟でしょう? あなたの大切なモノもあの洞窟に……ね?」
「へっ?」
ウィンクするシリウス校長。嘆きの洞窟にリゲルがいる……そういう事なのね。
「そうでした。嘆きの洞窟に用事がありました」
校長にどんな企みがあるかわからないけど、どうやら行くしかないみたいね。
シリウス校長が手を叩き、出発の合図を出した。
「それでは。皆さんお気を付けて行ってらっしゃい」
「よしっ行くぞ! リーダーは俺だ」
校長の出発の合図の後、やっぱりリーダー宣言したアルタイルを先頭に、6人は嘆きの洞窟へ向けて歩き出した。
「ふははは、レクリエーションと聞いていたが中々楽しいではないか」
「流石ですね。アルタイル様」
危険度【☆☆☆】の魔物、氷穴トカゲを討ち伏せた金ぴか王子が喜び、カノープスが称えた。
すでに10匹は倒しただろうか。
今回は私が間引きしなかったのでそれなりに魔物が出る。
デネブの『神聖魔法光弾』の連射が、ホワイトウルフの群れを駆逐し、ポルックスのロングスピアがアイスゴーレムを砕いた。
「やはりサンダルフォン家は火ですわ!!!」
危険度【☆☆☆☆】の雪食い熊に、しょっぼい初級火魔法をぶつけて勝利のポーズをとるカペラ。
「いや、全然倒してないし、あんたいつの間に火の魔法を? 確か諦めたはずじゃ」
「おーっほっほ。確かに諦めましたわ。校長の前ではね」
笑いながらしょっぼい初級火魔法を連打するカペラ。やっぱり人に言われても、意見を曲げないイノシシ女だわ。
まぁその結果、雪食い熊に齧られているみたいだけど。
「今助けます!」
カノープス・アラビアータが斧で雪熊を真っ二つにする。多分『大木断』て技だと思う。
騎士学校の優秀な3人に選ばれるだけはあるわね。
「ありがとうございますですわ」
ちょっと照れた様子で赤面し、お礼を言いながら、スカートの雪をサッサと払うカペラ。
……雪?
ああ、雪だこれ。前は降って無かったよね?
確か前回間引きした時は、氷穴トカゲやら、雪食い熊なんていなかった。
いったい何が起きているっていうの……
嘆きの洞窟前に着く頃には日が落ちて薄暗くなり、チラチラと雪が舞っていた。
嘆きの洞窟の攻略は明日だ。
結構温度が下がってきたが、今夜はテントで寝るしかない。
昼間多数の魔物を倒してきた事からみんな疲れてしまい、女子会も開かずさっさと眠る事となった。
ちょっと楽しみだったんだけどね。女子会。
翌日。準備を整え、嘆きの洞窟内に突入し、王子を先頭に進む私達6人。
「つまらん。中に入った途端に魔物がいなくなったぞ」
嘆きの洞窟に入った途端、魔物の気配はぱったりと消えてしまった。
危険度【☆☆】の洞窟カエルですら現れない。
「アルタイル王子の強さを見て慌てて逃げだしたといった感じでしょうか」
「あーつまらん。やはり所詮レクリエーションか」
昨日とは違って不機嫌になった王子が、金の剣をブンブン振り回しながら進む。
「アルタイル王子、『合同演習終了証』はこちらと書いた紙が……」
カノープスが指さした先には『合同演習終了証はこちら』と書いた紙が地面に落ちていた。
「どこかから剥がれたのかしら」
洞窟内を見渡すが、それらしい場所は見当たらない。
もしかして迷宮化……されてない?
「あら?ここにも落ちていますわ」
また、しばらく先に進むと、今度はカペラが紙を発見した。
そこには『合同演習終了証はこの先』と書いた紙が地面に落ちていた。
確かこの紙は三方に分かれた場所の上に貼ってあったはず……だけど、今私の目の前にあるのは長く続く一本道だ。
迷宮化されていない。もしくは解除されている。
一本道の先を覗き込むと、私の危険察知が発動し肌がピリピリしだした。
「まったく、レクリエーションの演出すらまともに出来んのか」
アルタイル王子が拾った紙を、ぐしゃぐしゃにして放り投げた。
「さっさと終わらせるぞ」
「ちょっとまって、何かおかしいから」
「おかしいからこそ、さっさと終わらせるんだろう」
「でも、前回とは……じゃなくて、この先絶対危険なのよ」
「ふははは、優等生とは困ったものだ。いいぞ俺が直々に守ってやる。ついてこい!!」
いう事を聞かず、突撃を開始するアルタイル王子。
私はデネブとカペラに目配せして頷くと、一緒に王子を追って走り出した。
もーなんで勝手に先に進みだすのよ。
やがて6人は大広間の前ににたどり着いた。『迷宮』で作られた広間ではなく、明らかに自然に出来た広間だ。
「ストップ!!」
「ぐえっ」
そのまま広間に突入しようとした金ぴか王子の腕を、力いっぱい引っ張り止める。
「な、何をする。腕の関節が外れたぞ」
「しっーーーーーーーーーーー」
人差し指を口の前に当て、ジタバタする王子を力で押さえつけ、広間の中を覗き込む。
広間の中央をウロウロする巨大な剣を持った老人。剣聖のアルケナル校長だ。
剣聖は、少し右に歩いては止まり、今度は左に少し歩いては止まる。それをただひたすら繰り返していた。
「あ、あれはアルケナル校長!!こんな所にいたのか!!」
「しっーーーーーーーー!!!」
ゴチンとゲンコツで王子の頭を殴って黙らせる。
王子は泡を吹いて倒れた。ごめんね。
「カペラ、デネブ。いい?作戦通り行くよ」
「……うん」
「わたくしの火の魔法が火を噴く時が来たようですわね」
「火の魔法は作戦にありませんけど……」
「冗談よ。準備OKですわ」
「カノープスとポルックス。あなた達は王子をお願い」
「……いいでしょう。おまかせ下さい」
二人に王子を預けると、私達3人は剣聖との戦いの準備を開始する。
私の戦い方が汚いとシリウス校長は言った。
汚くてもいいじゃない。だって人間だもの。
もし私が騎士や勇者だったとしたら、今すぐ剣聖へ名乗りを上げて、正々堂々戦いだすだろう。
その必要が私にあるか……答えはノー。
私の相手は剣聖とかいう化物のおじい様。
そしてその剣聖さんは私に気が付いていない……
ぐふふ。
剣聖が突然襲って来るってパターンも考えていたけど、考えていた中で一番いい状況。
やってやりましょう。
ただし、私が考えられるだけの罠を仕掛け終わったらね。グヒヒ。
「オーッホッホッホ。わたくしはサンダルフォン家第一長女! 業火のカペル・サンダルフォン! 望みとあればかかってらっしゃい」
うおおおおおおおおおおおおおいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!
やはり長くなったので分割します。




