第二死 突然のResult!巻き戻る学園生活!勇者リゲル暁に死す! 前編
ヤッホー皆さん。スピカ(体は13歳。中身は27年生きてる)だよ。上のタイトルは私に見えないから何も問題ないわ。
なんと今日はアークトゥルス騎士学校と魔法学校の合同入学式が、学校内にあるヘヴェリウス大聖堂で行われているの。
大聖堂の壇上の後ろには、プラーエ村の像よりかなり大きな守護女神トレミー様の像が立っているわ。
そして今、壇上で挨拶しているのは魔法学校の校長。
毎年騎士学校の校長が、挨拶するのが通例だったんだけど、今は不在だそうだ。
今年もヘヴェリス領各地の優秀な若者が集まった。騎士の心得を学び、魔法の神秘を探究し、大いに成長していただきたい。
校長の挨拶は要約するとそんな感じ、あ、そういえば校長ってあの試験官だね。
入試のあの騒動でちょっと不合格に変更されたかもって心配になったけど、しっかり合格通知が届いた。
魔法学校側の新入生代表挨拶をお願いされたけど、丁寧に辞退しておいたよ。ほら、貴族とか偉い人の子供がきっとやりたいでしょ?
私なんて村長の娘ですから、あまり目立たたない様にというか、そもそも、もうResultしないんだから、後は魔法の研究家とか生物学者とかの道に行くのも悪くないと思ってる。
魔法を覚えるのがすごく楽しくなってきちゃったしね。
きっとリゲルは勇者として成長し、村長の娘なんかの私とは違う、強い仲間達と一緒に、変態蝿とか魔王なんてコテンパンにぶち倒してくれると信じてる。
私のあの2年間の繰り返しは、リゲルを救う為の大事なイベントだったんだ。
中高一貫校だから6年は一緒の学校内にいれるけど、その先は……ううん、入学前からこんなつまらない事考えてちゃだめよね。
そんな私の気持ちをまったく知らないリゲル君。彼にもしっかり合格通知が届いた。
あーよかった。もうダメかと思ったよ。
そして不合格になったかもしれない不安の理由を作った奴が、騎士側の新入生代表挨拶をしている。
アルタイル・ヘヴェリウス。この国の王子らしい。
すっかり治った両腕でオーバーリアクションする気品溢れる挨拶。というか最早演説だった。
時々真っ赤に光る瞳でリゲルを睨みつけていたけどね。
当のご本人様は目をつぶって「うん、うん。そうだよなぁ。良い事言うなぁ」なんて頷いているし。
盛大な拍手で終わったアルタイル王子の後に、魔法側の新入生挨拶。
壇上に上がったのは、真面目でおとなしそうなデネブ・フォーマルハウトって女の子。
見た目通りものすんごく小さな声で、ポソポソって挨拶してさっさと壇上を降りちゃった。
男子だけ拍手喝采だったけど、やっぱりあーいう子が人気あるのかな。
その後壇上に上がってきたのは……
……
……………
……………うそでしょ。
どーみてもハダル神父です。本当にありがとうございました。
「それでは皆さん。守護女神トレミー様にどう生きていきたいかを祈り、願いましょう、さぁ右の列の方から順番に壇上へ」
え、え、聞いてない。嘘だよね? 全部で100人位いるから時間無いよ? やめよ?
動揺し顔色が悪くなる私。心臓のドキドキが止まらない。
守護女神トレミー様への祈りとハダル神父が合わさるとトラウマが。ううう……
そうこうしている内に、アルタイル王子の番になる。
「アルタイル・ヘヴェリウス様。あなたは守護女神トレミー様へ、何を祈り何を願いますか?」
「決まっている。誰よりも立派な王だ」
守護女神トレミー様の像から暖かい風が吹いた気がした。生徒達は喝采を上げた。
続いてデネブ・フォーマルハウトの番。
「デネブ・フォーマルハウト。あなたは守護女神トレミー様へ、何を祈り何を願う」
「…………」
守護女神トレミー様の像から暖かい風が吹いた気がした。一部の男子達は喝采を上げた。
いやいや聞こえなかったから。
そしてリゲルの番。
「リゲル・ロワーエ。あなたは守護女神トレミー様へ、何を祈り何を願う」
「僕の願いは、誰も魔物に怯える事のない世界を作るために【勇者】をお願いする」
守護女神トレミー様の像から熱い風が吹いた気がしたし、像は照れていた様に見える。女子達が黄色い悲鳴を上げ、男子はブーイングした。
そしてついにまわってきた私の番。
「さて、お久しぶりですね。スピカ・プラーエ」
「えっはい。お久しぶりですハダル神父。憶えていてくれたんですね」
え? 何々? なんで私だけ突然会話形式?
「もちろんですとも。あなたのように【生物学者】なんて珍しい祈りする方は少ないですから」
「そ、そうなんですね。ほら勇者とか王様も珍しいですよね」
ハダル神父が私にコソコソと耳打ちする。
「ここだけの話、王様はともかく、勇者はそんなに珍しくないんですよ。毎年何人も祈っていますし。努力し続ける事がこそ重要です。皆さんすぐ諦めるか居なくなっちゃうんですよね。先程のリゲル・ロワーエ君の様に中等部になっても【勇者】を願うのは本当に稀。まぁ【生物学者】なんて貴女が初めてでしたがフフフ」
へーなんかちょっとした裏話を、めちゃくちゃ早口で教えてもらっちゃった。そうよね。どんな事でも願うだけなら誰でも出来るもの。
オホン。と咳をするハダル神父。いよいよか。
「それではスピカよ。あなたは守護女神トレミー様へ、何を祈り何を願う。お勧めは【神官】」
もうお勧めしてくるんだね【神官】。
でも今は魔法をもっと覚えてみたいんだよね。ん~【生物学者】は目立つし、ここはひとつ。
「私は沢山の魔法を覚えてみたい。魔法の神秘の探究【魔導士】でお願いします」
「なんと!? 【神官】ではなく【魔導士】ですね? 本当に【神官】じゃなくていいのですね?」
「【魔導士】で」
なんで私にだけ何度も聞くのさ……
「わかりました。スピカ・プラーエ。あなたの願いは【魔導士】!!」
守護女神トレミー様の像から冷たい風が吹いた。ハダル神父があまりにも大げさに騒いでいたので。入学式会場は静まり返っていた。
【魔導士】は【魔法使い(マジシャン)】の上位職で、より魔法の探究を目指す職業だ。
魔法学校の生徒の願いとしては割と普通で、私以外も何人かは願っていた。
神父が騒がなきゃ話題にもならない感じだったのに……あのロリコン……
ともかくこれで私の楽しい魔法学校生活の始まり。
これから一生懸命頑張るゾイ!
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あ、どうもクラスで一番目立たない女スピカです。ええ。そうです。あっと言う間に3年生の夏になりました。
15歳だけど29年生きてるって事になりますね。繰り返した2年×7回は重いのだ。
まぁともかく、私はこの魔法学校の3年間を、普通に目立たず魔法の研究に没頭したよ。
魔法学校の中等部って3年間で魔法の初級魔法を一個マスターするのが目標なんだね。
でもこれぶっちゃけ幼児向けの本『はじめてのまじしゃん』の内容を難しく長くやってるだけだと思う。
まぁ私も2年で一個マスターのペースだったから、普通っちゃ普通だけど。
という訳で、独学で3年かけて『マジシャンの魔法』の中級属性魔法をコンプリート。
中級魔法以上になると、さすがに他人に撃たなくても熟練度が上がるみたいで、その辺の森にいる魔物達に使ってマスターしたよ。
さぞ森から魔物が減って平和になったことでしょう。
今は村の研究所から持ってきた、高等部向け教育本『魔導士入門』を授業中に読んでいるよ。
いや、正確に言うと読もうとしているか……周りからは授業についていけず、白紙のノートを見つめる初級魔法もマスター出来ない落ちこぼれ魔導士志望だと思われているはず。
え? リゲルとはどうなったんだって?
いやはや情けないというか、思春期特有のあれと言うか……
ま、まぁ彼も忙しいものでね。察してください。
学舎も変われば事情も変わる。そりゃ顔を合わせれば挨拶くらいするけど、向こうは騎士学校の女性達の憧れの人ですから、ね?
あ、はーい。特に進展はございません。むしろ後退してます。回答はこれでよろしいかプンプン。
初恋は叶わないモノ。なんて言葉もありまして。アレが恋だったのか。なんだったのかわからないまま今に至ります。
はぁ。なんて溜息をついたら。
「あらあら、ツルペタゴリラも悩むのですわね」
やけに胸の大きくなったイノシシのメス。ではなくてカペラが話しかけてくる。
彼女が祈ったのは【素敵なお嫁さん】どうりで胸がママと同じで大き……はっ!?これだ!ってもう遅いか。
「うるさいわね。発情イノシシ。私だって悩むのよ」
お互い悪口を言い合っているように見えるけど、実はカペラとはすごく仲がいい。彼女は正直だから。いい意味でも悪い意味でも。
「私も悩んでいますの。あのお方が騎士学校と魔法学校の合同演習で嘆きの洞窟へ行ったとか」
「へーそうなんだ。嘆きの洞窟。恐ろしそうな名前ね。心配だわ」
全然心配じゃない。だって一昨日その洞窟の魔物を殲滅したばかりだもの。
「あらあら、私が心配しているのは魔物の方ではございませんのよ。騎士学校と魔法学校の合同演習は男女混合で、しかも2泊のお泊りまであるのですわ」
「そ、そうなんだ。ふ、ふーん。」
そう言われるとなんだかイライラしてきた気もする。男性的幸運持ちがお泊り遠足だとおおおお?
「残念でしたわね。合同演習には選ばれた優秀な6人でパーティーを組んで行きますの。そもそも魔法も使えない私や貴女じゃ足手まといですわ」
え、カペラ魔法使えないの? 一個も? ウププププ。
「あ、そうそう。この後ランチに行きませんコト? とても美味しいパン屋が期間限定で学校に来ているようなの。貴女悩んでいるようだし、私が奢ってさしあげますわ」
「う、うん。ありがとうカペラ」
カペラのこういう気使いが出来るとこも好き。魔法教えてあげればよかったな~。まさか本当に使えないとは思わなかったよ。
そもそも魔法学校に入学して【素敵なお嫁さん】を願ってるんだから、そりゃ使えないよね。
そんな事を考えながら期間限定のパン屋の前まで来て驚愕する。
「げぇ!?マルコ」ジャーンジャーンジャーン。
露店のパン屋を見て驚愕する。看板にマルコのパンって書いてある。
「あら?あのイケメンのパン屋。貴女のお知り合いみたいね。こっちを見て手を振っているわ」
「おーい。スピカちゃーん。こっちこっちー」
「ちょっとまって、これダメな奴。危険が察知してるから……」
痩せてイケメンになったマルコが、歪ないやらしいピンク色のパンを持ってこっちに走ってくる。
「いやあああああああああああああああああああああああああああ」
ブツンッ……
次回予告
やめて!黒獅子将軍プロキオンの特殊能力で、音速剣を討ち払われたら、
嘆きのモンスターと繋げられたリゲルの精神まで燃え尽きちゃう! お願い、死なないでリゲル!
あんたが今ここで倒れたら、スピカやカペルとの約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、Resultに勝てるんだから!
次回 勇者リゲル死す。




