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六花立花巫女日記 外伝  作者: あんころもち
41.成長と変化
421/952

『メルク』因縁⑥



 十五メートル程離れ、ルイースヒェンさんが止まりました。


「これ、何か知ってる?」


 ポケットから取り出したのは――小瓶です。あの、因縁浅からぬ形状は……間違いなく、”悪意”瓶でしょう。


「悪意が入った瓶ですね。エッボからですか」

「あら。出所まで知ってるのね。会ったのかしら」

「ここに来る前に、少し」

「そう」


 瓶を見せた後、私達の動きを観察しながら離れていきます。私達の警戒心を感じ取ったのでしょう。十五メートルでは足りないと感じたようですが――それでも尚、足りません。


「一歩」

「?」


 私の呟きに、ルイースヒェンさんは止まりました。この声が届く範囲に居るようでは、足りません。


「リッカさまが、そこに到達するのに必要な歩数です」

「”疾風”でここに来る前に開けられるわ」

「疾風より早いです」

「……ッ」

私の強き(【マモ)想いを抱き、(フォルテス】)力に変えよ(・オルイグナス)


 開けるなら、この瞬間でした。常人の”疾風”ならば二回必要な距離ですが――リッカさまが”抱擁強化”の詠唱を完了した以上、一度の発動すら必要ありません。()()()()()()、止められる状態になりました。


 昔よりもずっと、お互いの言葉を尽くせたと思います。本音をぶつけ合い、譲る事の出来ない考えを確認し合えました。このまま無理矢理瓶を奪う道もあるのでしょう。それだけでも、蟠りは少しだけ解消出来ると思います。ですが――私は、まだ言葉を尽くしていません。


「ルイースヒェンさんの怒りは、分かりました」

「そう。だったら何? 死んでくれるのかしら」

「それは出来ません。私はあなたの為に生きていないのです。私はあなたの為に何もしません」


 私の人生、私の命、私の想いは全て――リッカさまの為に使います。ここで、あなたの為に使えるのは――言葉だけです。


「じゃあ話は終わりね。これを開ければ一帯は悪意に包まれる」

「いいえ。それには何も入っていません」

「さっき震えたもの。溜まってるわ」

「私達は悪意を感じ取れます。それには何も入っていません」

「嘘よ」

「私は嘘で止めるような人でしたか?」

「成長した貴女なら、嘘を使う事もあるんじゃない?」

「そこだけは変わっていません」


 嘘で止める事はありません。嘘ではないけど真実とまでは言えない事は、許容できるようになりました。演技もしましょう。敵を倒すためならば、”お役目”を完遂するためならば、何でもする覚悟はあります。ですが――嘘は吐きません。特に、こういった場面では。


「ルイースヒェンさん」

「何」


 これは、試金石なのでしょう。私が変わったかどうか、あなたは確認したいのですね。ちゃんとあなたを見て――私の言葉で止めるのかどうかを。


「アルツィアさまが悲しみますよ」

「……ッ。それが、何? 言ってるじゃない。寂しいけど、そんなのどうでも良いってッ!!」

(あの時と、一緒じゃない……っ結局そうやって、アルツィア様の言葉で――)

「あんな事があったので、私の前であなたの事を話すことは殆どありませんでした」


 あの事が起きる前は、私が求めると答えてくれました。求めずとも、私があなたに不信感を抱く度に諭すような言葉を掛けてくれていたのです。


「でも一度だけ、話してくれた事があります」

「……」

「無理やりつれてきてしまった少女が居たと。気が弱く断れずに諦めて、”神林”にきた少女には悪い事をしてしまったと」

「殆どの”巫女”が、そうでしょ」

「はい。無理やりだった子の方が多かったかもと、珍しく自嘲気味に言っておりました」


 無理やりじゃなかった子なんて、居なかったでしょう。高圧的な態度こそなくとも、周囲の賛美や歓喜、期待は……多感な少女に、避ける事の出来ない物なのだと感じさせたはずです。その中でも……その少女に対しては、特に心配していました。


「長い”巫女”の歴史の中で、一人だけ道を踏み外してしまった子が居たと言っておりました」

「……ッ」

「ずっと心配していましたよ。最後まで力になれなかったと」

「……止めなさい」

「ずっと後悔していましたよ。選んでしまった事を」

「……止めなさ、い」


 謝罪してはいけないと思いながらも、申し訳ないという表情を崩す事はありませんでした。自分で選んでおきながら謝るという事は、あなたの努力を否定する事です。選んだ事で、あなたの人生を壊してしまった事を謝りたいと思ってはいたようですが、アルツィアさまはそれでも――あなたに、感謝だけを述べていました。


「私の繋ぎ。あなたはそう思っているようですけど、アルツィアさまはそんな事を思っていません。早い段階で私に渡す事は決めていたようですけど、あなたの状態も気にしていたのです」

「止めなさいッ!!」


 私に早く渡す事にしたのも、あなたの”悪意”を心配したからでしょう。”光”を自分に掛ける事が出来るのは――リッカさまだけです。私でも自分を浄化する事は出来ません。


 世界の危機を知っても、焦らずに()()()()()アルツィアさまが、強制移譲という焦りを見せたのは――あなたのためです。呆れたから強制移譲したのではありません。ただただ……慌てたのです。


「そんな事、どうでも良いのよ……。私の人生を滅茶苦茶にして、そんな……母親面しないでッ!!」

「”巫女”として生きた人ならば、分かるはずです。アルツィアさまの心が」

「ッ……」


 確かに、母ではありません。アルツィアさまが言っていた事です。母ではありたいけど、母になりきれないと。その時の表情も覚えています。アルツィアさまも私と一緒です。”人”の心を視る事が出来ても、気持ちを理解する事が出来ませんでした。その事に苦しみ、その所為であなたに寄り添えなかったことを、後悔していたのです。


 その気持ちが、あなたには伝わっていたはずです。”神林”の凄さを知らずとも。お母様の心配から目を逸らそうとも。アルツィアさまの心だけは、伝わっていたのではありませんか? 


「声は聞こえずとも、暖かさは感じていたはずです」


 何故ならあなたは――私の特異性を感じ取り、遠ざけようとしたのですから。


「そんな物に、何の意味があるのよ……ッ」


 その暖かさからも、あなたは目を逸らしました。意味が無いと。でも、今だからこそ、その暖かさを思い出してください。私への怒りはずっと持っていて構いません。憎むのも良いでしょう。危害を加えようとする事さえ止めません。


 その全てを私は”拒絶”しますが――受け止めます。


「止めたい癖に、私の神経を逆撫でして……ッ!!」

「私が優しく出来るのは、リッカさまだけのようです。私はあなたに、本当の事を告げるだけです。あなた自身が気付くしかないでしょう」

「な、にを……気付けっていうのよ!」


 あなたも、私と一緒です。誰にも言えない物があるのでしょう。誰にもぶつける事が出来ない感情があるのでしょう。正論ではなく、本音を――私が受けましょう。


(何を……? 分かってるわよ……ッ! でも、それが出来たら世話ないわ……)

「ふざけないで……。人に相談なんか、出来るわけないでしょッ!?」

「出来なかったのではありません。しなかったのです」


 あなたは理解出来ないと言いますが、理解しようとしなかっただけです。一緒だから分かります。


「司祭イェルクには話さなかったのですか」

「一番話したらいけない人間じゃない。私が”巫女”を嫌ってるなんて知ったら、何もしてくれなくなるでしょッ!?」

「いいえ。あの人は”巫女”の中でもあなたを敬っていました。”巫女”の辛さを話せば、より援助したはずです」


 確かめた訳ではないので、これは想像でしかありません。ですが――聖伐派かどうかで人を判断するあの人なら、”巫女”の辛さを告げた程度では豹変しません。むしろ尊敬するあなたのために、より良い集落作りを目指したはずです。


 あの人が嫌っていたのは、私やお母様のような……聖伐を否定する者達だけなのですから。


「あなたみたいに、私には分からないのよッ! 話してからじゃ遅い……。失くしてからじゃ遅いのよッ!」


 嗚呼――やはりあなたは、私と一緒です。停滞を望み、現状が壊れる事を恐れています。流れに身を任せれば、自分の核を守る事は出来るでしょう。ですが――外側から削れていきます。そして気づいたら……周りには何もないのです。そして最後には、何もかもを失います。


 人との交流は激流に身を任せるような物です。話さずとも、失います。今のあなたがそうでしょう。だから――自分から行動しなければいけません。アルツィアさまから諭され、リッカさまに教わった、歩み寄る事の大切さを、あなたに示します。


「もう良いでしょ……ッ。私の為に……この町では……最低で居て――ッ!!」


 悪意瓶の蓋に手を掛けたルイースヒェンさんに、私は――最後に、自分の考えを伝えましょう。


「あなたがそれで良いのなら、それでも構いません」

「――は?」


 完全に予想外の言葉だったようです。ルイースヒェンさんが止まりました。”巫女”は誇りと、”巫女”で在る事の矜持と覚悟を突き付けていた私から出た言葉とは、思えなかったようです。


「分かり合うことは無理でも、歩み寄る事は出来ます」

「歩み、寄る……?」

「私達の名誉を犠牲にする事で”巫女”の呪縛から逃れられるのならば、差し出しましょう」

「どう、して……」


 あの頃では考えられない言葉でしょう。私もそう思います。ですが、これこそが――私の、”人”としての矜持です。


「あなたが私を苦しめたように、私もあなたを苦しめていたのです。お互い、それを理解していました」

「……」

「でも、歩み寄る事をしませんでした」


 自分の言葉ではなく、アルツィアさまの言葉だけであなたに突っかかりました。それは――ただただ卑怯な行いだったのです。自分が傷つく事なく、あなたに文句を言いたかっただけなのかもしれません。でも、今は違います。私の言葉で、あなたに物申しましょう。


「それならば、今ここで歩み寄りましょう。”巫女”の名誉で救えるものがあるのなら、安いものです」

「アルレスィア……。変わったわね。本当に」

「でしょうね」

「貴女が”巫女”を安い物、だなんて」

「安いです。この旅で多くを学んだ私にとっては、ですけど」


 ”巫女”の名程度で”人”を救う事が出来るのなら、安いでしょう。”巫女”とは名誉ではなく、在り方なのです。


「アリスさん。私も使って」


 この町で私は、神隠しの原因となり、マリスタザリアを呼ぼうとした張本人になってしまいます。この町で留まらず、北部後半全てに波及するかもしれません。


(それに、リッカさままで巻き込む訳には……)

「リッカさま……」

「二人で”巫女”だよ」

「……分かりました。勝手に決めてしまって――」


 謝ろうとした私の唇に、リッカさまが人差し指を当てました。


「言ったでしょ? 我侭して良いって」

「――はいっ」


 私達は、二人で”巫女”です。一緒に、居てください。共に乗り越えましょう。

 

「はぁ……だから、睦み合うなって……。ま、良いか……馬鹿らしくなってきたし」


 毒気を抜かれたルイースヒェンさんが、瓶に視線を落としています。その手はもう、瓶の蓋にはかかっていません。


「歩み寄る、か。馬鹿ね……。さっきあれだけ罵った相手にそれを言う?」

「本音でぶつかり合った方が良い事もあるのです」

()()()?」

「私の全ては、()()です」

「……出会いの差、か……」


 一歩踏み出すと、ルイースヒェンさんもこちらに近づいてくれました。少しは、歩み寄れたでしょうか。


「……?」

『それって、何だろう』

「この子、なんでキョトンとしてるの?」

「その、お気になさらず」

「やっぱりガキんちょか」

「……何で馬鹿にされて?」

「リッカさまを馬鹿にしないで下さい。歩み寄りを止めますよ」

「アルレスィアもガキんちょだったのね……。アンタが最初からそうだったら、私もムキになんて……」

「今アリスさんを馬鹿に……?」

「何なのよアンタ達……面倒ね!?」


 歩み寄る事が出来た記念という事で、許してください。そもそも、あなたの言葉遣いが直接的すぎるのです。言いたい事を言うのはあなたの美点なのかもしれませんが、軋轢を生むだけに終わる事の方が多いでしょう。


「はぁ……」


 ルイースヒェンさんが瓶をじっと見ていますが――”悪意”が込められていないと、リッカさまの感知が言っています。開けてみても良いですが……私の”箱”の中でお願いします。


「あげるわ」

「え」


 ぽいと投げられた瓶を、リッカさまが受け取りました。私達の言葉を信じたというよりは……やる気がなくなった、みたいですね。


「マリスタザリアが出ても出なくても、貴女達を陥れるのなんて簡単だし?」

「アリスさん。私ちょっとだけイラっとしちゃった」

「私も少しだけ後悔しています」


 この人なら出来るあたり、質が悪いと思います。瓶によるマリスタザリアは出なくなったと、断言して良いでしょう。ですが、私達が神隠しの原因というのは町民達の事実ですし……出なくとも、マリスタザリアを呼べる()()()()()()と思われている時点で問題なのです。


 その事を含め、納得して歩み寄りはしましたが……私達が旅を終え、()()()()()を果たすまでは、この町以外に噂が行かないようにして欲しいと思っています。


「浄化どうしよう」

「町民は今、ルイースヒェンさん宅の地下に集まっています。今から戻り、”光”を当てましょう」

「それなら、同意はいらないね」


 せめて、ルイースヒェンさんがどう動くのか確認してから出て行きたいですが……浄化後すぐに、この町を出るしかありません。これ以上不安と敵対心を煽るのはよろしくないでしょう。


(少しは、気が晴れたわね……。何処にでも行きなさい。しばらくは言わないでいてあげるわ。また耐えられなくなった時に、アンタ達を利用する)

「ルイースヒェンさん」

「何?」

「今から家に行きますけれど、よろしいですか」

「好きになさい。それが終わったら、すぐに出ていく事ね」

「分かりました」


 時間稼ぎくらいは、手伝ってくれるみたいです。長居するつもりはありません。神隠し被害者に話を聞きたかったとは思っていますが……この状況では、無理でしょう。そちらの配慮は、ルイースヒェンさんに任せます。


『浄化して、終わり――だけど……何で、この瓶がこんなにも気になって――』

「それに入ってないって、本当なの?」

「嘘はつきません」


 つきません、が――リッカさまの第六感が警鐘を鳴らしている以上、まだ油断出来ないのでしょう。やはり一度、浄化すべきでしょうか。


「あの似非……」


 偽物と思ったようで、ルイースヒェンさんが怒っています。この瓶自体は、恐らく本物でしょう。ただ、エッボが説明したであろう機能は何一つ無い、というだけです。


「買ったんですか?」

「買うわけないでしょ。置いていったのよ。あのインチキ貴族が」


 あのエッボが、ここまで来たのですか……? 随分と厚遇されていますが、ルイースヒェンさんにとっては迷惑なだけですね。


「何で置いていったか分かりますか?」

「さぁ? 元”巫女”から悪意が取れるかって実験とかじゃないの」


 エッボなら、そういった実験をするかもしれません。アイフォーリ作りや悪意実験、銃製造と、研究に意欲的でしたから。


 元”巫女”が居ると聞いて、”悪意”の実験をしようと思いついたのでしょうか。もしくは、元”巫女”と繋がりを求めたのかもしれません。ですが……エッボが、物だけ置いて帰るという事があるでしょうか。


 この瓶はかなり重要な要素だったはずです。受け取らなかった場合、一度持ち帰るのではないでしょうか。捨てられたり、割られたりしたら事です。確かこの瓶は、魔王から直接送られてくる物だったと記憶しています。一本であっても無駄にはしたくないと思うのですが……。


(ルイースヒェンさんなら有効活用すると、思っていたのでしょうか)

「それにしても、ルイースヒぇンさんは良く知ってますね」

「ま。それだけの憎しみだったって事よ」


 過去形な事に、「素直じゃありませんね」と肩を竦めそうになりますが、今は……そちらを気にしている場合ではありません。ルイースヒェンさんさんが私達を調べ上げたように、エッボもルイースヒェンさんを調べたのでしょうか。


 先代国王時代の”巫女”であるルイースヒェンさんは、司祭イェルクを通じてエッボとも知り合っている可能性はあります。


(ルイースヒェンさんは、そういった事に頓着しないので、忘れていそうですが……エッボは覚えていて、ルイースヒェンさんの欲望に働きかけたのでしょうか)


 無いとは、言いきれません。


「悪意の事は、王国の情勢に目を向ければすぐ分かるじゃない。ま、北の人間はそんな面倒な事殆どしないから。ちなみに、騙しやすいって話よ?」

「この町を見ていたら分かります。あなたに騙されている方ばかりですから」

「騙してないって言ってるでしょ。私の言葉は、アルツィア様が認識出来ない人達にとっての真実よ。気をつけなさい?」

「え? あ……は、い?」


 また言い争いになるかと思っていたので、間抜けな声が出てしまいました。ルイースヒェンさんが言っている事は正しいです。私達の方が異端であるのは、紛れもない事実でしょう。ですがそれを、警告として伝えてくれるとは思いませんでした。


「初めて、先代と思えました」

「私も」

「アンタ達って本ッッッ当に面倒な性格してるわ」


 時間稼ぎに付き合ってくれるようですが、それでも陥れたままでいようと考えているのは分かっています。それなのに警告はするというルイースヒェンの方が、面倒だと思うのです。


(はぁ……うだうだ考えても仕方ありませんね。その時の状況を尋ねましょう)

「エッボから何か聞いてませんか?」

「何も。会ってすらないわ。その瓶は玄関に置いてあったの」


 会ってすら、いないのですか? てっきり家に上げたものと――いえ、この人が自分の領域に人を入れるはずがありませんでした。入られるのが嫌だからと、集落の集会所に詰めていた事があったのを覚えています。


(そうなると……)

「本当にエッボが置いたんですか?」

「どういう事?」

「会ってすらないのなら、それがエッボの物だという確かな証拠はないのではないのでしょうか」


 対面していると思ったから、考えから外していましたが……会っていないのなら、ありえるのではないでしょうか。リッカさまの第六感も、そこに引っ掛かているのかもしれません。


「似非貴族が尋ねてきた後に置いてあったのよ?」

「……」

「納得してないみたいね」

「魔王の手で置かれた物だった場合、私達は今も見られている可能性が――」


 突然、地面が無くなったような感覚に襲われた私は――口を噤んでしまいました。それが、”悪意”によるものだと気付くのに時間が掛かったのは……マクゼルトの時でさえ生温いと感じる程の濃度だったからです。


『遂に――』


 そう、遂に――です。マクゼルト以上の”悪意”を宿す者など、一人しかいないでしょう。だから私達は、最速にして、最大の魔力でもって、”悪意”へと体を向けました。


「なに……?」


 数瞬すらなく、それこそ――あの時のマクゼルト強襲すら防げたであろう速度でもって振り向いたというのに――私達は、固まってしまったのです。


 まるで、闇が人形(ひとがた)になったような……そんな、黒い塊を見てしまったから。



ブクマ評価誤字報告ありがとうございます!

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