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精霊国物語  作者: 物語
11/12

11.雷蛇討伐

「貴方がカルフ大将で間違いはありませんか?」

「ああ」


 イツラトゥスの国境線。

 山々から連なる防御堤の一角。

 そこにカルフはいた。

 目の前には若い男が立ち、今回の討伐作戦の概要を説明していた。


「私はグレートン。サンゲン山、第一ブロックの指揮を一任されております。今回は、応援に来ていただき感謝の極みです」

「いや、我も精霊軍。民の命を守る仕事ならいつでも頼まれよう」

「ありがたい……それでですね、実は雷蛇が山の頂上に巣を作ってしまい、防衛の邪魔になっているのですよ。私たちもなんとかしようと努力はしたのですが……やはり、雷を抑えられなくて」

「――ああ、それで我が呼ばれたわけだ」

「はい。国最強の雷使いであるカルフ大将であれば、討伐も出来るかと考え」

「ふむ。任された。皆は危険だから下がっておけ。この戦、我一人で終わらせよう」


 そう言うとカルフは背中に担いだ大剣を鞘から抜き。

 大剣に雷を付与した。


「(雷蛇か……level4なら、一日で終わるか……)」


 

 雷蛇。

 Level・4。

 大きな蛇であり、電気鰻のように前身に雷を覆わせる。

 そして、口より繰り出す舌は雷を纏っているため、相当な一撃だ。

 個体によりサイズは異なるが、過去最高はlevel・9.

 神種。

 名をイルルヤンカシュ。

 ただ一つのみ。


「(それが、最大だったか。おそらくそこまでのlevelではなかろう。それこそ、level9など滅多に居ないのだから……)」


 カルフは山を登っていく。

 その遥か頭上、そこにいる雷蛇を殺しにと。



 ◇



「初めまして、拙者はクザヌキ。カルフ殿の案内を任されたのでござる。おおっと、拙者は戦うつもりなどないのでござるっ!」


 少し歩いていると、いつの間にかに目の前に少年が立っていた。

 警戒心を露わにしつつ、カルフは一応、剣を下ろした。

 少年の姿は真っ暗だ。

 と、いうのも全身を真黒い服で包まれていた。

 顔も黒いお面を被っているため表情は読み取れない。

 そして、手には何も持っていなかった。

 だが、魔法を使えるかもしれない。

 そのため、カルフは鋭い眼孔で睨み付け。


「我は、誰一人近づくなと言ったはずなのだが……何のようか」

「拙者は頼まれたので来たまで。文句なら、ドドン殿に」

「ドドン? 誰だ、それは?」

「ドドン殿は拙者の主であり、この山の持ち主でござる」

「持ち主……つまりは、山神のことか」

「そうでござる。主をご存じでござるのか?」

「ふん、ならば、さっさと姿を表せ、表さんと魔法を使う。――3、2、1」

「――ま、待ってくれ‼」


 カルフが数を数え、0になろうかとした時。

 誰かの声が場に響いた。


「まったく、大将はなんでこう、すぐに壊そうとしてくるかね、ああ、怖い、怖い」

「ふん、我の忠告を無視し、ここに現れたのだ。命の保証は出来んぞ、山神」

「まったく、君は変わらないね。昔のままだ。少しは成長したかと思ったのに」

「ふん、貴様こそ」

「二人は友でござるか?」

「「違う」」

「ふん、こいつは我の敵だ」

「大将は友では無い。親友だ……あっ、首を閉めるのはやめて、止めてくれ、しゃれにならない!」

「ふん、貴様など我の敵――人族の敵だ。今すぐにでも殺しても構わんのだぞ?」

「はぁ、僕が何をしたというんだい?」

「ふん、人族を壊滅に追い込んだ、人族を滅ぼそうとした」

「はぁ、昔の話じゃないか、まったく、いつまで覚えるつもりなんだか」

「――やはり、変わらんか。魔王ガフールよ」

「ああ、君を殺すまではね、この性格を直すつもりはないさ、英雄くん」



 ◇



「それで、何の用だ」

「うん、この先にいる子を殺すのを止めてほしいのさ」

「なんだと?」

「……あの子は可哀想な子なのさ。まだ、赤ん坊の頃に親を人族に殺され、ずっと一人ぼっち。それでも、なんとか生きているのを君は殺すのかい?」

「ああ」

「ひええ、これが英雄なんて終わりだね、人族は」

「我は人族の英雄。人族に害を及ぼす存在は殺すだけだ」

「どうしてもかい?」

「ふん、それが嫌ならこの山から出ていかせろ」

「はぁ、それが出来れば僕も苦労しないさ、当の昔にやって、嫌われちゃった、テヘペロ

――あ、ギブギブ、閉めるのはやめて……はぁ、つまりはさ、逃がすのを手伝ってはくれないか?」

「断る」

「ええっ、僕と君の仲じゃないか。少しは協力してくれてもいいじゃん! しないなら、人族をほんとに滅亡に追いやるよ?」

「勝手にしろ。貴様にはもう力はない。今の貴様では、死ぬぞ?」

「はぁ、まったく少年のときの君に施しをしてあげたのに、その恩は返してはくれないの?」

「施しだと? 人族に魔族の肉を喰わせ、挙句の果てに、魔族にさせようとしたことがか? あれは施しではなく、嫌がらせだ」

「僕としては、君が同族になれば――配下にでもなればずいぶんと楽ができて嬉しかったのに」

「ふん、ならば交換条件だ。赤竜の情報をよこせ……つい先日、殺したはずなのに消えうせた赤竜の情報をよこせ」

「仲間を売れと? 仕方ないか。まぁ、いいよ。君たちではあの子を殺すのは無理だからね」

「どういうことだ?」

「あ、これは秘密なのだった……ごめんね、これについては言えないかな」

「ちっ。まぁ、仕方ない、貴様の口の堅さは知っている」

「はぁ、それなら良かった。それで、赤竜だっけ? 言ってもいい情報は……3つかな」

「話せ」

「じゃあ、特別に前払いで一つ教えてあげよう。あの子は、他の赤竜とは違う、それこそ、赤竜では無い」

「ふん、言葉遊びか?」

「いや、これは本当の情報だよ。これも少し考えれば、アレス君ならば、あるいはわかるかもね」

「そうか、まぁ、仕方ない。貴様の協力など嫌だが、情報の為だ。ここは、引き受けよう」

「ありがとう、流石僕の友なだけあるね……あぁ、腕がおれる、折れるうううううっ!」



 ◇



「作戦はこうだ、まず僕が蛇をおびき寄せる。それをカルフ君の電撃で気絶においやる。簡単だろ?」

「なるほど、その後は任せてもいいのか? 我ではおそらく持ち運べないぞ?」

「それは拙者の仕事でござる。こう見えても、拙者は力持ちなので」

「ふん、そうか。それにしても。魔王の側近か……強いのか?」

「滅相もないでござる。拙者は新入り、怪力だけが取柄でござる」

「そうそう、僕の最近のお気に入りの鬼の子なのさ」

「鬼の子だと……?」


 カルフは大剣を持ちあげる。

 そして。


「ふんっ!」


 カルフの渾身の一撃が鬼の子にあたる。

 だが、ビクともしない。

 大剣がまるで岩にでも当たったかのような衝撃が手に走り、思わずカルフは大剣を手から放した。


「さすが、僕の部下……やるねっ! ――あ、やめて、首をねじるのはやめて、取れるからっ!」

「こいつはなんだ? あまりにも頑丈すぎる。我の一撃を食らい、のけ反らないどころか、傷一つ無しだと?」

「それは、カルフが弱いだけじゃないの? それに、この子の情報は売らないよ?」

「拙者、得意体質で他の鬼に比べて、頑丈で怪力なだけでござるよ」

「なるほどな」

「はぁ、せっかく黙ったのに」


 せっかく言わなかったのに部下が簡単に自己紹介をしてしまい。

 魔王は頭を抱えた。



――――

――


「では行こうか」

「ああ」


 カルフに二人? を加えた三人は山を登る。

 山の斜面は草木で覆われ歩きにくく、苦戦しつつ上る。


「そう言えば、碧眼に負けたんだってね。まさか、僕の手よりも早く負けるとは思わなかったよ」

「ふん、あいつは変位種。Level8だった。我では無理だ」

「それを言うと、僕にも敵わないよ? なんだって、僕はlevel・15なのだからさ」

「それはまだ神種だった頃、500年以上前のことであろう。今のお前はlevel0だ。一瞬で殺せる」

「まぁ、殺すことは出来るかもね、だけど、僕が居なくなったら魔族、魔人は人族に総攻撃を仕掛けるかもねえ……くくっ」

「くそっ、やはり貴様は、最悪だ」

「他の二人よりはましだと思うけどね。暴殺の魔王なんかが政権を握ったら君たちが困ることになるし、僕が王に君臨している方が都合いいでしょ?」

「ふん」


 この男を殺したところで変わりが出てくるだけ。

 それをわかっているからこそ、カルフは怒りを抑える。


「主殿、やつのテリトリーでござる」

「そうかい。なら、僕がおとりをするから、カルフくん頼んだよ」

「いいだろう」


 魔王だけが先へと歩いていく。

 しばらくすると、遠くより悲鳴が聞こえ、地が震えた。


「あとはまかせた!」

「……任された――・【サンダー・ネット】・」


 カルフの手から網状に組まれた雷が飛び出し。

 そして、雷蛇に絡まった。


「シャァアアアアアアアアアアアアア!!」

「・【チェンジ、サンダーボール】・」


 さらに雷の網が丸まり。

 雷蛇を覆っていく。

 雷蛇は必死に抵抗し、体から雷を放つも網に遮られ。

 そして、全ての雷が収縮した。


「ほう、これが封印かい?」

「ああ」

「すごいのでござる」


 三人が見つめる先で、雷蛇は暴れる。

 だが、次第に雷の威力も弱まり。


 ――雷の球体へと変貌した。


「おいおい、これは生きているのかな? まさか、殺してはいないだろうね?」

「約束は守る。これは痺れているだけだ。だから、早く情報を教えろ」

「了解だよ。あ、悪いが先にこの子を運んどいてね」

「わかったのでござる」

「それじゃあ、赤竜について教えてあげるよ」



 ◇



「赤竜はlevel7以上、そして不死の生物。これが教えられる限界さ」

「level7以上だと? それは、普通ではないか。それが情報か?」

「ああ、赤竜は最大7さ、今回の赤竜は8かもしれないし、もしかしたら僕を越えるかもしれないよ?」

「ふん、そして不死だったか。不死ならば、忽然と消えたことも説明がつくか……だが、そうなると、それは赤竜ではないではないか」

「そうさ、だから言っただろ? 赤竜であって赤竜ではないってね」

「ふん、なるほど。まぁありがたくいただく」

「ああ、じゃあねえ」

「さらばでござる。ドロン!」


 いつの間にかに鬼の子がカルフと魔王の間に現れ、そして言った途端に二人が消えうせた。

 なんとも。


「(怪力。頑丈。転移。合計3つの異常値か……これは手ごわい相手だな。赤竜だけでは無く、魔王ら周辺にも気を付けるべきであるか)」



――



「討伐は終わった。我は帰るとしよう」

「いやぁ、今回は本当にありがとうございました。まさか、雷蛇を仕留めるとは……それで、死体はどちらに?」

「死体は焼いた。すまないな」

「いえ。獣の死体は新たに獣を呼ぶ可能性があるので、焼いていただき感謝しかありません」

「そうか、では我は本部に戻る。何かあれば、また応援で来るとしよう」

「いえ、このように手を煩わせることはもう二度とないように善処します」

「そうか、なら精進せよ」

「はい!」


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