54.クリスマスプレゼント*柏木&アリス*
***
クリスマスが来た。冬休みも。テニス部も冬休みは休みになる。鏡野に家に誘われた。きっと外で始まるこの計画に巻き込まれないためだろう。美咲にやいやい言われたが、今日からの計画は話してある。美咲には出歩くように言った。僕と美咲しかパソコンを使わないから、美咲にはパソコンを使わないように言っていた。だけど、出歩いて、美咲には力をなくしてもらいたいからだ。
鏡野の家に着く。佐々木先輩は今日も勉強らしい。先輩も同じく家にいないといけないからだ。僕らは楽しく過ごしていた、そのうちに佐々木先輩が部屋から出てきた。
「お前ら、うるさい」
なんていいながら参加してきた。鏡野の料理を食べ意外に上手くて驚いたら、先輩がアリスの料理はなあ。などと言って、すっかり鏡野は拗ねてしまう。意外な鏡野が見れた。六月からずっと毎日のように一緒にいたのに知らない面がまだ沢山あったんだとしみじみ思う。
今日は僕らにとって特別な日だ。
「あ、アリス!」
「何よ? 桃李?」
「研究室!」
「えっ?」
佐々木先輩は立ち上がり下へと階段を駆け下りていく。僕らも慌てて続いた。
鏡野が研究室のドアを開けると佐々木先輩は研究室においてあるテーブルの裏側を探り始めた。
「あった」
「何なの、桃李? 何でそれがそこに……あっ!」
過去を見たんだ。多分鏡野のお母さんの。
「母がそこに……見たのね?」
「ああ、アリスが子どもみたいに拗ねるから子どもの時のアリスを想像したんだ。そしたら、アリスの母さんが見えて……ここに手紙を……」
「何で見えたの? ここにはブロックがあるからこの中は見えないのに」
「切ってたみたいだ。ここに入ると映像が切れたのに、すぐに見えるようになって、手紙を隠したらまた消えたから。はい。アリス、アリス宛だよ」
佐々木先輩は鏡野にさっき取り出した手紙を渡した。
短い手紙を読んで鏡野は泣いていた。そして、ドアを開け外へと飛び出した。僕らも後に続く。
***
私は外に出た。
雪だ。……私の大好きな雪。いつも母に怒られても雪の中で回ったりはしゃいだりしていた。手も足も耳も凍えつき寒さに震える迄雪の中にいた。普段は寒いのが苦手なクセに。母は怒りながらもお風呂を沸かして、私が寒さに震えて家に入って来るのを待っていてくれた。お風呂上がりには温かいココアを入れて、ココアを飲む私を見ては呆れて言う。『アリスは本当に雪が好きねえ』と。
庭に行き昔みたいに上を見て手を広げ舞い落ちて来る雪を浴びる。お母さん……見ていてくれてるんだね。
「アリス?」
桃李に手紙を渡す。
「柏木君も読んで、他の二人にもさっき送った」
『アリスへ
まだ幼いアリスを残して死を迎えるばかりか、あなたにこの研究を引き継がせるなんて、辛くて仕方がありません。そのためにアリスには厳しくしなければならなかったことも、そして千里眼を持ち苦しむアリスを見て、未来を変えようと何度もあがきました。
全てが無駄に終わり諦めた頃、あなたにヒントを残してる未来を見るようになりました。少しでも手助け出来ればと思い、色々な事をして来ました。それでもあなたを巻き込むしかなかった事を悔やんでいます。もう少し母親としてあなたに接してあげたかった。もっと一緒にいてあげたかった。
最後に出来る事は何か思い悩んでいたら、さっき未来を見ました。私の手紙を読むあなたを。アリス、クリスマスに発動させた計画は世界中に広まっています。もう大丈夫。
外に出てみなさい。お母さんからのクリスマスプレゼントです。
母より』
「これって……成功したってこと?」
私は雪を楽しみながら答えた。
「うん。もう何も雪しか見えないよ。さっき二人に送った後に消えたの全て」
「えっ?」
「あ、俺も出来ない」
柏木君も試してるようだ。庭の石を見てる。
「出来ない……」
「成功って事か?」
「そうみたい」
回りながら答える。
「近所の誰かがパソコンの電源をいれたんだな」
「世界の終わりの終わり……」
未来もここで消えているのかな? お母さんありがとう。最高のクリスマスプレゼントだよ。お母さんも普通のお母さんだったんだね。恨んでごめんなさい。
しばらくして、私は桃李と柏木君に引きづられる様に家に入れられ、風呂場に連れて行かれた。
お風呂から出た私に桃李がココアを入れてくれた。二人も寒かったくせに。
こんな幸せな日が来るなんて思わなかった。
「あ!」
「何?」
二人が声を合わせて聞いてくる。
「復讐……相手が……記憶にない」
「アリス、もう十分に復讐したよ」
「えっ?」
「奴らの兵器、この、いや、あの力を持つ者を利用してたんだろ? それを全て奪ったんだ。しかも消滅させた。どれだけ探しても見つからないよ」
「……うん。そうだね。そう。皆を自由にしたんだよね。それで十分だよね」
そうだ。これで全てが終わったんだよね。私の心もまるで雪のようの真っ白になった。何を見てあんなに気分が悪くなったのか、その気分すら思い出せない。




