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28.ロゴ

 

 ***



「アリスが呼んでる」

「鏡野が呼んでる」

 僕と佐々木先輩は同時に叫んで立ち上がり駆け出した。まるで競い合うかのように。鏡野の部屋にはあっという間についた。佐々木先輩は呼ばれたんだから当然だろうとばかりに、ノックもせずにドアを開けた。僕も後に慌ててついた。あの九条とかいう奴を鏡野の部屋に移動してからは心配でたまらなかったからだ。

 鏡野は入ってきた僕たちを紹介する。


「こっちが兄の桃李でこっちが柏木君。二人と私で世界を守ろうって。なんて……どう説明しよう。」


 鏡野が困るのも無理はない。佐々木先輩や僕にも説明するのが大変だったんだ、初対面の相手にどう説明すればいいんだろう。僕たち三人は誰がどうするかという風に顔を見合わせていたが、九条が切り出した。


「それって、ファティマの聖母の第三の預言の秘密と関係あるの?」

「そう! それ、それよ。はじまりはそれなの」


 鏡野は嬉しそうに話しはじめた世界の終わりについてと、この力を生み出した富士山の動きと、それによって変わってしまった遺伝子を持つ者が出てきたこと、その血の濃さが力の強さになること、その遺伝子を元に戻すことで世界の終わりを回避するという僕たちの目的も。鏡野の母親の死も、その原因についても。だから、鏡野が見張られていることも。

 その長い長い話しを九条は疑問を挟みつつ聞いていた。鏡野の調べていた資料なんかを見ていたせいだろう九条は話をそんなに驚かずに聞いていた。ある程度予測もしていたんだろうか。見た目よりもずっと頭が良さそうだ。


「ってことで仲間になるか、大人しく何にもしないでこの事を調べたりも力を使ったりもしないか。どちらかしかないよ。あとはバレて誰かに使われる事になるか」

「そういうことだったんだね。仲間って言っても僕じゃ力になれないよ。ドアを開けれなくするとか、それを元に戻したりとか、鍵を開けたり戻したりできるだけだし」

「アリスが言ってたけど念動力って、ドアや鍵を捻じってるってっことか?」


 よくテレビで見るスプーン曲げの類か。だが、スプーンどころかドアとは大胆なねじり方だ。それも元に戻せるって、超能力にしたらすごいが使い途が確かに微妙だ。


「そう。使い途ないだろ?」


 九条は自嘲気味に答えている。引きこもっているんなら誰からも必要とされてない人生を送ってきたはずだ、ここで僕らも彼を引き離したら、折角鏡野が彼に部屋を家を出る決意をさせたのが無駄になる。本題とは関係ないが関わったのだ、何とかしたいんだけど、どうすれば……。


「力は万一の時に役に立つよ。武器の類は捻れば使い物にならなくできるでしょ? それに、私達がしたいのは武器や力で戦う事じゃない。ある周波数なのかエネルギーなのかそれを作り出したいの。念動力じゃない方の力が何かで役に立つのかも。それに……」


 確かに僕の移動もそうだが彼いれば心強い。それに、すっかり前に進まなくなってしまったが、鏡野の母親の研究にだって彼の知識が役に立つのかもしれない。鏡野は机に向かい何か書いている。それを見せて言った。


「九条君これに関係あるでしょ?」

「あっ!」

「それっ!」

「ああ、ん。それが?」


 僕たちはそれぞれ声を上げた。九条はこれに心当たりがあるようだ。鏡野が描いたのは鏡野の母親の研究ノートの進まなくなったページに描かれていた大学のロゴだ。


「何で知ってるんだ? あのロゴを……」


 佐々木先輩が聞くのは無理もない。鏡野ですら父母の母校の大学のロゴを見てもそれが何かずっと気付かなかった。


「それがさっき兄貴の部屋に入った時に見たんだ。今通ってる大学のロゴってこんなんだあ。結構堅苦しくないんだと覚えていたんだ。そのロゴがなんなの? 皆して?」


 みんなの反応に九条は戸惑っている。


「母の研究ノートの進まなくなったページに描かれているの。この大学のロゴが。あなたが私にアクセスしたのはただの偶然じゃないのかも」


 九条君はそう鏡野に言われて戸惑っている。


「鏡野のお母さん鏡野が小学生の頃に亡くなっているんだけど、未来をみる力があったみたいなんだ。そのお母さんの研究ノートには何度も絵が描かれていて、鏡野に遺された研究のヒントをくれているんだ。そのページを解くためのヒントが」

「次のページにはこのロゴが描いてあった。この一ヶ月三人で解いても一ページも進まなくなった。このロゴ前にも出てきたの。その時のヒントの答えはその大学の物理学の院生だった。そのページはその院生が研究していた研究テーマと同じだったの。だから、わかった。今回も同じ人かどうか迷っていたんだけど……もしかしたらあなたの事なのかも」

「い、いや無理だよ僕はずっと学校行ってないし。違うんじゃないのか?」


 九条の言う通りかもしれない。でも、彼と出会ったのが偶然だとは思えない。僕らは皆この遺伝子なのだ。すごい倍率でしか存在しないはずなのに、ここにこうやって四人ものその遺伝子を持つ人間が集まったのだ。


「僕らはこうして出会った。きっと何か意味があるはずだと思う。それが何かはわかんなくたっていいじゃないか。やってみよう一緒に」

「でも……危険なんだよね。というか君達も何か能力を持っているの? どうして僕の事をそんなに知っているの?」

「ごめんなさい」


 鏡野が九条に頭を下げ謝った。


「えっ?」

「あなたを移動させたのは彼なの」


 と、鏡野は僕を指差し言った。九条は目を丸くしている。鏡野の能力だと思い込んでいたからだ。


「じゃあ、君は?」

「私は千里眼って言われてる能力かな。どんな場所も相手も見たり聞いたり出来る。あなたの姿を見せてと言ったのは千里眼であなたを見るためだったの。危険な人物か確認しないといけないし、どんな能力を持っているのか知らないといけなかったから。危険な力じゃなくても、その能力を誰かに見られて、知られてないか確認しないとあなたと接触するのは危険だったから。ごめんなさい、騙すようなことして」

「えっ! じゃあ、昨日カメラに写った時には……」


 九条は相当焦っている。まあ、見られてたら焦るよな。僕は今もその状態なんだけど。


「そう。その時から見てた。本当は昨日ここにあなたを移動する計画だったんだけど、あなたのこといろいろ見て、あなたを知ってから呼ぼうと思ったの。あなたやあなたの家や家族、学校、いろいろと見て、あなたに外出する決心があるか確かめたの。試して、ごめんなさい。2年近く家から出てなくてその理由も何となくわかったから……」


 九条は肩を落としている。学校のことや引きこもっている話が出たからだろう。


「いや、いいよ。ハッキングされたんだ。それに君はいつも見張られているんだろう? こっちこそ怖がらせて悪かった」

「うん。正直怖かった。いつも見てるから逆に見る事ができない事が怖かった。だから、あなたの姿を見せてもらえて良かった。ただ、いつもはもっと長く見るんだけど、あなたが他のところをハッキングしたりしてバレる恐れがあったから、急いだの」

「うん。でも、僕の答えを待ってくれてたんだね」


 九条は穏やかな表情だ。


「まあ、どう答えても連れては来たんだけどね。でも、家を出る答えを出してくれて良かった」


 鏡野の笑顔に九条は顔を赤くした。


「その。うん。君に……あっと、その……この力がなんなのか知りたくって」


 九条の反応と答えで、九条が鏡野にこの遺伝子特有の惹かれるという状態になっていることがわかった。僕は狼狽えた。九条は引きこもりというイメージとは程遠く、髪は切りには行けないから自分でしているんだろうが……いや、自分でしたにしては整いすぎだ。鏡野に会う決心をしたのですでに家を出て髪を切りに行ったんだろう……それに顔だちも整っている。本当に引きこもりのハッカーなのか? 佐々木先輩にも全く引けをとらないじゃないか。

 鏡野の気持ちが揺らいでないのか不安になり鏡野を見て見るが……全くわからない。鏡野の心は全く読めない。だいたい僕を好きだって事すら気づかなかったんだ、わかるわけがない。

 というか、この一ヶ月の付き合いからして、本当に付き合っているとは言い難い。周りからはもう定着して認められているが、会っている間二人きりの時間は少なくいつも佐々木先輩がいるし、内容は研究ノートについて頭を寄せ合っているという状況だ。正直付き合っていると自信を持って言えない。鏡野が付き合っているという状態を利用しているんじゃないかと思う時もある。鏡野は本当に僕のこと好きなのか、疑問に思っても口にだせない。聞くのが怖いほどこの関係に自信を持てないからだ。

 状況が状況だ。そんなこと言ってる場合ではない。が、何も進展がないのに周りにはやいやいと言われてるなんて……。そこに九条だ。佐々木先輩がやたらに鏡野にかまってくる以上に気になる。あー僕って嫉妬深かったんだ。


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