26.鍵*柏木&桃李*
***
リビングに鏡野が入ってきた。うわの空だから、さっきのハッカーを探っているんだろう。
「アリスどうして呼ばなかった。見れたんだろう?」
佐々木先輩が問い詰めるような口調で聞いた。さんざん心配して成功したのに何もしなかったからだろう。僕も焦れったい思いを抱えていたのだ。いつ映像がきてもいいようにと、ずっと心の準備をしてたのに。
「彼は九条裕太。本来なら高三だけど、ずっと引きこもっている。学校での雰囲気からすると原因はイジメかも。家庭にも問題ありそう。彼の母親が電話で愚痴ってたわ。鍵をつけてない部屋になぜかこちらからは入れないのに、彼はそこから出てきて冷蔵庫の中のものを持って部屋に戻ってるって。一時期は冷蔵庫にもトイレ、風呂場にも鍵をつけたのに、どれも使ってるみたいだったって」
鏡野はハッカーの情報を話してくれる。イジメか。
ところで何の力だろう? 鍵……。
「どういう力かはわかったのか? というかそれがわかってから連れて来るのか?」
「うーん。彼は迷っていた。たぶんずっと外に出ていないのに、直接会うとなれば外に出ないといけない。彼にはチャンスなのかもしれない。外に出るための。だから、ちょっと様子を見ようかと。あと力も、あの話だと壁とかすり抜ける力なのか鍵を操る力なのか、なんなのかわからないから。とにかく彼は私に最初に当たったみたい。他と接触してなくて、私との接触を考えてくれているなら待ってもいいかなって思って」
「そうか。アリスがそう決めたなら。それに見張ってれば他との接触を断てるしな」
「うん。だから、柏木君。急に彼の映像が来たら飛ばしてね」
「あ、うん。って、どこに?」
僕に急に話を振られて少し戸惑う。
「それはそのとき一緒に送るよ」
「わかった。じゃあその時はその通りにするね」
「ありがとう」
鏡野はホッとした表情をしている。突然の計画変更だったけれど、鏡野が見張ってれば大丈夫だろう。危険な相手か偵察してからの方が、僕も安心だし。
***
そうして、そのまま柏木は帰って行った。今日は結局何にも出来なかった。どうせ進まないでいるノートの心配より今はハッカーをどうするかだった。警戒させないようにその話は禁止していつもの通りにして、ハッカーを警戒させないようにした。
次の日も同じようにいつも通りに過ごした。帰り道はいつもアリスに苦情を言われるが、柏木と二人きりになると不安になるんだ。兄としてだと自分に言い聞かせているが、アリスには俺の気持ちバレているんだろうな。
今日も相手の様子を見てアリスが判断するということになっている。アリスは昨日からハッカーを探っている。何か見つけたのか、まだなのか。いずれにしろアリスの力と柏木の力があれば、いつだって移動可能だし、何をしてるかすぐにわかる。もう恐れなくていいのは安心だ。昨日はアリスの身が心配だったから。
家に入り昨日と同じように柏木とリビングに入りソファーに座ったあたりで映像が飛び込んできた。




