22.ハッカー *桃李*
***
「佐々木先輩何か思い浮かびます?」
「いや」
「僕も」
柏木も無口になりアリスは話をしない。
アリスの予想は的中した……アリスのお母さんのノートはそのロゴのページから一ページも進むことはなかった。やはりアリスの言った通りこの後のヒントはその大学の助手自身だったんじゃないかと思うようになっていった。もう夏休みになろうとしているのに、全く進まない。この一ヶ月以上三人で毎日のようにノートの続きに取り組んだが時間だけが過ぎていった。もう少し出来るんじゃないかと思っていたのだが、高校生に解ける物ではなかったんだということがわかっただけだった。
柏木には助手の事は話した。やっぱりホッとした様子だった。前に進まない事を焦っていたからだ。だけど、俺らは何とか自分たちの力で解こうとした。危険は出来るだけ回避したいからだ。いくらアリスのお母さんが指し示した人でも、アリスのお母さん自身が死という結果だったのだ。信用性が高いとは言えなかったからだ。だけど、そうも言ってられない。
だが、見も知らぬ大学の物理学の助手にこの話をどうやって信頼させ、納得した上で協力してもらえばいいんだ。彼は力を持っていないのに……。俺の時のように柏木の能力を直接見せるという手しかないが、そこまで話をどう持って行き話を聞いてもらうかだ。アリスもそちらの方向を考えているんだろうか、今日は上の空だった。いつものように柏木が帰って俺と二人でノートに取り組むのを疲れたからとパスしてアリスは部屋にこもった。
俺はすることもないので晩飯を作っていた。食事を作るのはもうすっかり俺の仕事だ。母がいる時は勿論しないが、頭を整理したり気分転換になるのできっと料理が好きなんだろう。
何て事を考えていたら、アリスがキッチンに駆け込んできた。真っ青な顔だ。
「どうしたんだ? アリス。顔色悪いぞ」
俺は心配になりアリスに近寄りその肩を持った。アリスが今にも倒れそうだったからだ。
「わ、私のパソコンが……」
「パソコン?」
「パソコンが乗っ取られた」
ハッキングにでもあったのか。この家はセキュリティーは高くそう簡単に入り込めない。物理的にも電子的にも、そのはずなのに。それに、ただそれだけで真っ青になるってどういう事なんだ。
「それって……」
「それだけじゃないの。打ち込まれた文章が……この力を知っている人のようなの」
「力をっ! アリスどういうことだよ。はじめから話して」
「私、何かいいヒントがないかってパソコンで探してる時だった、突然パソコンの画面が変わったの。そして、そこに私は何もしていないのに文字が打ち込まれだしの。
『君は何を調べてるの? 超能力ってあると思ってるの?』
って打ち込まれたの。私びっくりしてパニックになって画面を見つめてた。そしたら……
『驚いた顔もかわいいね。いったい超能力について何を調べてるの?』
って。カメラ越しに見られてるのに気付いて慌ててカメラを紙で隠したの。でも………
『君のデータは全て見たよ。今さら隠しても無駄だよ。この力はなんなの? どのくらいの人が持ってるの?』
ってどんどん乗っ取られるような気がして、LAN回線を抜いてパソコンの電源を落として電源コードも抜いてここまで来たの」
アリスは話出して自分の言葉で状況を再確認したのか、最後の方はいつもの落ち着いたアリスになっていた。顔色も元に戻っていたので、俺はアリスから手を離した。実はこんな状況なのにアリスに触れている間胸の鼓動が異常に脈打っていたからだ。
「アリス、相手はわかるのか?」
「わからない。見張ってる組織ではないし……相手の場所や顔がわからないと、千里眼じゃ見えないし……この家のセキュリティーをかいくぐった相手なら私達の技術じゃ追跡できなし……力の話をしてたからお父さんに頼む訳にもいかない……どうしよう。桃李。パソコンに入れてた情報はたいしたことないし、マイクがついてないから会話も聞かれてないし。カメラで見ても何してるかわかんないし……。あ!ねぇ、桃李ちょっと試してみる!」




