金田バイクに乗ってる鬼娘の友達
ギンは相変わらず苦虫をかみつぶした顔をしておった。
うーむ、役所が復旧工事となれば大変なんじゃろうなあ。
「ハーッ……事情はだいたい粗忽な姪から聞いておりますよ。とりあえずしばらくは母上の観光客ということでのんびりしていてください」
「う、うむ。すまないギン殿」
「お互い不幸な事故であったという事なのであなたが責任を感じる必要はありませんよ。ただ、あくまで客という事で騒ぎは控えめにしていただきたい」
おう。徹夜明けなんじゃろうなあ……目と声にドスが効いておる。
「もちろんだとも!客分の分際はわきまえる」
「そう願いますよ。母上もしっかりもてなしてご無事に帰っていただけるようにうまくやっていただきたい」
「おお、任せておけ。それよりギン、やはりだいぶ忙しいようじゃが大丈夫か?」
「まあ、それに見合った給料はいただいておりますのでお気になさらず。何かあれば向こうの世界の案内役という事で協力していただければそれでかまいません。どうぞ紺野町を楽しんでください」
相変わらず修羅場じゃの~。
うーむわしにもせいぜい帰りに寄付していくくらいしかできん。
人手ばかりはの~。まあ早々に退散するか。
「あれがご長男か……やはりコン殿はこの街の領主なのでは!?」
「いや~、明治時代くらいまではそうだったんじゃがの。まあややこしい歴史的経緯というやつで土地はお国にお返ししたよ」
大変だったのじゃよ大政奉還。帰りは天丼屋でも寄っておこうかのう。
このストロードというんか、ありふれた片田舎の無限に続く国道ぞいの飯屋通りは心が和むのう。
「それは少なくとも今でも代官くらいではあるのでは……?」
「いや~普通にただの地元名士というやつじゃよ。ほほほ」
いや~自慢は楽しいのう。
まあ実際盆踊りで挨拶してる街の顔役にはわしのような氏神が割と多いんじゃよ。
わしはその中でもだいぶ控えめな方じゃ。
■
天丼食ってひよりにおみやげのテイクアウト持って帰ったら駐車場にクソデカ金田バイクが止めてありよる。
ははあこれはあやつじゃな。
「おーヒビキ。来とったのならラインしとったらよかったんに。また京都から高速のってきたのかや?」
「おー、おひさじゃんコン。お土産テーブルに置いといたからな」
「なっ……魔族?ではないのか?コン殿?」
アーネスト殿が慌ててシートべルトがちゃがちゃしておる。
まあ鬼じゃからねヒビキ。
見た目が角のあるメスガキじゃがこれで平安時代から普通に生きておるからのう。
「大丈夫じゃよ。わしの古い馴染みじゃし、たぶんそちらの種族と同じではない」
「まあ私は首から下は新品にして頭ン中を全部弄ったからその辺の心配はいらねえよ」
こやつこの手で鬼という種族の殺人衝動を全部治してしもうたんだからだいぶ危険人物なんじゃけどね。
やってることが浦原喜助か涅マユリなんじゃよ。
かといって犯罪やるタイプではないからのう。全部合法というか脱法の範囲内でやる点では信用できるんじゃ。
「本当に大丈夫なのかこの御仁は……」
「まあ暴れたりするタイプではないのは保証するのじゃ」
「ヒビキだ。よろしくな異世界人ちゃん」
「アーネストだ。ところでそれは何を?」
ヒビキはダンジョンの入口に鉄格子扉を溶接しておった。
溶接面が蔵にあってよかったのじゃ。うおっまぶし。
こやつ工学系と生物系じゃったらだいたい日曜大工でなんでもやれてしまうからのう。
「いやーひよりちゃんがこの間の地震で困ってねえかなと思ってラインしたらダンジョンの入口できて困ってんだろ?だから塞いでんの」
「だいぶ思ったより塞ぎ方が即物的ではないか!?」
それはそう。アーネスト殿もカルチャーギャップで大変じゃのう。
「下手に魔法だの妖術だので弄ったら復旧するときにめんどくせえんだよ。それに帰るときはここ通って帰るんだろ?だから鍵付きにしといた」
「おー、すまんのう。助かるのじゃ~」
わしは笑顔で手を合わせておく。お礼はしっかり言っておかんとな。
さてと……
「それで対価はいかにすればよいかの?」
こやつ鬼じゃからそのへんの対価はハッキリさせんと機嫌悪くなるんじゃよ。
鬼の貸し借りを放置してても面倒じゃし。
普通にブチブチ小言いわれるのは地味にきついんじゃよ。
「それな。神在祭あるじゃん?出雲の。十一月の」
「うむ、そろそろじゃのう」
神社で祭られとる神々は旧暦神無月に行われる神々の年次報告会議みたいなのに出なければならんのじゃよ。
わしらみたいな木っ端でもな。神道の神の義務じゃから。あれクソ面倒なんじゃよね……
会議終わった後にハトヤみたいなひなびた温泉ホテルで宴会するのが楽しみなんじゃけど。
「熊がさあ……!」
「あっ」
ヒビキの顔がしおしおになっとる。
思い出した……!わしらの共通の友人で北海道の熊の神キムンカムイの一人がおるんじゃよ。
「熊?熊がどうしたのだ?」
「いや、わしらの友達で熊の神がいてのう。ほんで来月には神々の会議があってのう」
「うむ、その話だけでもう面倒そうなのがわかった」
悪いやつではないんじゃよ?じゃがあの有り余るパワーを考えるとわしら渋い顔になってしまうんじゃよ。
「あやつ歩きで一ヶ月かけて都会を避けていくんじゃけど、近道にそちらで言うダンジョンを使っておってのう」
青函トンネルをマラソンで突破するのは辛過ぎるじゃろ。
できんこともないがその場合の熊のストレスがの……
「ダンジョンは崩落してしまったわけだが……どうするのだ?」
「どうしようかのう……!!」
しおしお狐になってしまうのじゃよ。
とはいえ鬼との貸し借りを破るのも嫌じゃし、熊とはいえ友人を見捨てるのも嫌じゃしのう。
こうしてわしはプロジェクトXに強制参加することが決まってしまったんじゃよ……!




