第6話 疑問な事柄
ミノタウロスが斧を振り下ろす。
だがその時───
前方に、透明な盾が現れた。
アスランが、エミリアとミノタウロスの間に割り込んだ。
アスラン
「危な。」
エミリア
「っ……アスラン様!」
アスラン
「周り見ろよ。」
エミリア
「だっ……誰のせいだと…!?」
アスラン
「ありがとうは。」
エミリア
「……ありがとう…ございます。」
アスランは衛兵の死体を見渡し、
(こんな多くの…こいつ上位種か?)
アスランの防御魔法に武器を弾かれたミノタウロス。
再び武器を振りかぶり、彼に攻撃を仕掛ける。
エミリア
「あっ……危ないっ!」
アスラン
「闇夜砲」
アスランはミノタウロスの頭部に魔力砲を放った。
だが、ミノタウロスの頭は吹き飛ばず、角が折れただけ。
ミノタウロスはよろめき、雄叫びを上げる。
アスラン
「まじかよ。」
ミノタウロスが斧を振り下ろす。
アスランは咄嗟にエミリアを抱きかかえ、そのまま回避する。
アスラン
「お前こんなに重いの。」
エミリア
「ねぇ!本当に……ってまた来ます!」
アスランはエミリアを軽く放り投げ、
「生命之終」
自分より魔力が劣る相手の命を絶つ闇属性魔法。
ミノタウロスに直撃し、その場に崩れ落ちた。
アスラン
「ふぅ…」
エミリアはアスランに駆け寄り、
「大丈夫ですか…」
アスラン
「うん、お前は。」
エミリア
「アスラン様に放り投げられただけです。」
アスラン
「着地しろよ。」
エミリア
「は……そんな急には無理です!」
アスラン
「運動神経鍛えたら。」
エミリア
「はぁ……助けてくれたから、さっきの事も許してあげます。」
アスラン
「なに。」
エミリア
「え……覚えてないんですか?」
アスラン
「なにが。」
エミリアは顔を背け、
「やっぱり許しません。」
2人は神政法国ギルドへ向かった。
ミノタウロスの討伐と多くの衛兵が殺された事も伝えた。
ギルドマスター
「本当にありがとうございます……亡くなった衛兵は私共で弔います。」
アスラン
「通常種じゃないよな。」
ギルドマスター
「確かに、通常種より遥かに強力な魔物だと報告を受けています。神政法国内に緊急クエストとして発令されておりました。」
エミリア
「ミノタウロスは本来上級の魔物…こんな人類領域の内地に現れるはずないですよね……」
アスラン
「うん。」
ギルドマスター
「矮人国家の警備を掻い潜れるとも思いません。」
魔物は東に行くほど強くなる。
魔物の発生源である魔素濃度が上がるからだ。
「西の大陸」の大部分は、人類国家が占める。
魔物も出現するが下級〜中級程度のみ。
西の大陸中央に位置する「矮人国家」は、西へ上級魔物が行かないよう南北に永遠連なる防護壁を築いた。
ギルドマスター
「矮人国家にも報告しているのですが、ミノタウロスを取り逃しは無いと……」
エミリア
「周囲の魔素から発生した可能性は……」
アスラン
「無いな。」
エミリア
「東側の魔素が、何らかの形で流れ込んだ可能性は…?」
ギルドマスター
「もしそうならば、魔素の流れに敏感な精霊王朝が気づくはずです。」
アスラン
「上級は、今回のミノタウロスだけ?」
ギルドマスター
「はい…それまで一度も出た事がありません。」
エミリア
「だとすれば、人類領域に膨大な魔素の発生源があった訳ではないですよね……」
アスラン
「多分ね。」
ギルドマスター
「後は我々が何とか致します……この度は本当に、ありがとうございました。」
アスランは莫大な報酬を受け取った。
それから2週間後。
神政法国と精霊王朝の国境に辿り着いた。
国境には関門があり、精霊王朝のエルフの兵士が警備している。
エミリアは列に並ぶが、アスランは立ち止まった。
エミリア
「ん?どうしたんですか?」
アスラン
「面倒臭い。」
エミリア
「ここを通らないと、精霊王朝には入国できませんよ。」
アスラン
「そうだけど。」
精霊王朝の入国審査は厳しい。
各国ギルドで発行された、職業証明書が無ければ入国できない。
魔人や悪魔の入国を防ぐ為だ。
職業証明書には、職業や種族、出身地が記載されており、身分証明として欠かせない。
エミリアは大陸北部フロン王国内にあるエルフの里出身。
僧侶になる際、ギルドで証明書を発行している。
アスランは現在、大陸北西部ルプランド王国北部の森の奥に住んでいる。
時折クエストで日銭稼ぎをしているが、職業証明書は発行していない。
列記とした無職。
兵士
「職業証明書の提示を。」
エミリアは証明書を差し出しながら、
「種族はエルフです。フロン王国ギルドで僧侶になりました。」
兵士は証明書を確認し、
「問題ありません、エルフの故郷へようこそ。」
エミリア
「エルフの故郷?」
兵士
「はい、精霊王朝は大昔のエルフ帝国が前身となっております。」
エミリア
「あっ…そうなんですね。」
兵士は微笑み、
「我らの故郷を、ごゆっくり堪能してください。」
次にアスラン。
兵士
「職業証明書の提示を。」
アスラン
「無い。」
兵士
「では…種族の申告を。」
アスラン
「エルフ。」
兵士はアスランの顔をじっと見つめた。
エルフに似てはいるが、何かがおかしい。
兵士
「エルフの特徴とは…少し異なりますが……」
アスラン
「気のせい。」
兵士は怪しみ、
「一度、奥の部屋でお話を伺えますか?」
アスランを怪しんだ周りの兵士達も集まってきた。
そして関門の警備室まで連行された。
尋問官が警備室に入ってきた。
アスランは、武装した兵士で取り囲まれていた。
尋問官
「なぜ、精霊王朝に入国を?」
アスラン
「杖を直しに。」
尋問官
「杖を見せていただけますか?」
アスランは袋から杖を取り出した。
尋常では無い魔力が漂っている。
それを見た兵士達は、即座に剣を抜いた――
アスラン
「んぇ……」




