第7話 久々の来訪
周りの兵士達が怯えながら、アスランを警戒している。
兵士A
「貴様……魔人か、それとも悪魔か…」
兵士B
「再び我らの国を蹂躙するつもりか……!」
兵士C
「杖から溢れ出ている魔力…これは我らへの警告か!」
アスランはこの上なく面倒臭そうにしている。
そこに、騒ぎを聞きつけた一人のエルフが部屋に入る。
【ヴィエイユ】
380歳のハイエルフの女性。
ヴィエイユ
「一体何の騒ぎ?」
アスラン
「あ…」
ヴィエイユがアスランを見る。
「あ…」
兵士A
「……ヴィエイユ様…?」
ヴィエイユ
「皆、剣を収めて持ち場に戻って。」
兵士C
「なっ……何を言っているのですか!」
ヴィエイユ
「いいわ…知り合いよ。」
ヴィエイユは兵士達を部屋から下がらせた。
ヴィエイユ
「何をしているの?」
アスラン
「証明書無くした。」
ヴィエイユ
「そういう事じゃなくて。」
アスラン
「帰っていい。」
ヴィエイユ
「あなた、今まで何をしていたの?」
アスラン
「何も。」
ヴィエイユ
「ふざけてるの?」
アスラン
「ふざけてないけど。」
ヴィエイユは呆れたように、
「はぁ……地位も名誉も捨てて。」
アスラン
「いらない。」
ヴィエイユは頭を抱え、
「全く…お前という奴は……」
アスラン
「なに。」
ヴィエイユ
「もう少し自覚を持ちなさい。」
アスラン
「何の。」
ヴィエイユ
「あぁ……もう…話すのが馬鹿らしくなってきたわ。」
アスラン
「なら話すなよ。」
ヴィエイユ
「私のお陰で助かったんでしょ?」
アスラン
「うん。」
ヴィエイユ
「まぁいいわ……帰ってきたなら、フリューゲル様に挨拶しなさいよ。」
アスラン
「なんで。」
ヴィエイユ
「仮にも育てて貰ったんでしょ、あと陛下にもね。」
アスラン
「嫌だ。」
ヴィエイユ
「そんな事言うなら、入国させないよ。」
アスラン
「汚ぇな。」
ヴィエイユはアスランに入国許可証を発行した。
兵士達は困惑していたが、彼を通過させた。
エミリアは駆け寄り、
「アスラン様っ……大丈夫でした?」
アスラン
「疲れた。」
エミリア
「職業証明書無くしたんですか?」
アスラン
「無い。」
エミリア
「え……」
アスラン
「無くした。」
エミリアは呆れたように、
「ちゃんとしてくださいよ……」
【精霊王朝グリモワール】
西の大陸の南西部に位置する、エルフの大国である。
魔法技術の最高峰であり"黄金郷"と並び、人類二大国家と称される。
その歴史は古く、約3300年。
前身であるエルフ帝国の歴史を含めれば、5000年以上の歴史がある。
2人は国境近くの街に来た。
エミリアは、憧れだった精霊王朝に来られて気分が上がっている。
エミリア
「遂にやって来ましたね!」
アスラン
「うん。」
エミリア
「アスラン様も久々に来たんじゃないですか?」
アスラン
「久々。」
エミリア
「ならもっと、テンション上げましょうよ!」
アスラン
「うるさいな。」
エミリア
「いいじゃないですか!」
アスラン
「早く王都行こ。」
エミリア
「え…王都?」
アスラン
「王都じゃないと杖直せない。」
エミリア
「え、行きたい!すぐに行きましょ!」
アスラン
「だから行くって。」
そして10日後。
2人は王都に辿り着いた。
精霊王朝の王都は下界で最も美しいとされている。
洗練された街並みに、噴水や彫像が立ち並ぶ。
エミリア
「すごい……ここが精霊王朝の王都…」
アスラン
「色々増えてる。」
エミリアは店へ賭けていく。
エミリア
「ねぇ、見てください!希少な薬草がこんなに!」
アスラン
「早くしてよ。」
女店主
「あら、お嬢さん。この薬草は初めて?」
エミリア
「本で読んだ事あるだけで、実際には初めて見ました!」
女店主
「これはかなり希少な薬草だよ。」
エミリア
「じゃあ、これは──」
エミリアは多くの薬草を購入した。
そして他の店にも走っていき、様々な品を購入。
王都に着いて早々、大荷物になってしまった。
エミリア
「うっ……重い…」
アスラン
「買いすぎ。」
エミリアは苦笑いし、
「つい…買っちゃって。」
アスラン
「自分で持てよ。」
エミリア
「え〜……少しは持ってくださいよ〜。」
アスラン
「体を鍛えな。」
エミリアは頬を膨らませ、
「もぉ〜……」
アスラン
「工房行ってくる。」
エミリア
「え…私も行きますよ!」
アスラン
「いらない。」
アスランは1人で工房に向かった。
工房長
「え……アスラン様……!?長い間どこにおられたのですか。」
アスラン
「その辺。」
工房長
「急に居なくならないでくださいな。」
アスラン
「なんか老けたな。」
工房長は笑い、
「はっはっ……貴方様は相変わらずですな。」
アスラン
「歳は取った。」
工房長
「いつご帰還されたのですか?」
アスラン
「今。」
工房長
「今!?」
アスラン
「杖直して。」
アスランは杖を袋から取り出し、工房長に手渡した。
工房長
「あの…これ……お渡ししたの、かなり前ですよね。」
アスラン
「覚えてない。」
工房長
「至る所が老朽化していて、魔法を使う時も魔力が分散してしまいます。」
アスラン
「魔力制御大変だった。」
工房長
「よく持ちましたね……魔力暴発がいつ起きてもおかしくないですよ。」
アスラン
「そんな?」
かなり昔、工房長が特注でアスランの杖を作った。
だがかなり荒っぽい使い方を続けたせいで、老朽化が激しかった。
アスランの高度な魔力制御で何とかなっていたが、普通なら魔力暴発で大事故になっていただろう。
工房長は顔を曇らせた。
「これは……直せないですね。」
アスラン
「頑張ってよ。」
工房長
「新しく作った方がいいですよ。」
アスラン
「じゃあそうして。」
工房長
「どのくらい滞在されるのですか?」
アスラン
「決めてない。」
工房長
「この杖以上となると、最低でも1週間はかかるかと。」
アスラン
「前は。」
工房長
「確か、5日だったかと。」
アスラン
「よく覚えてるね。」
工房長
「陛下や大賢者様の杖に次いで、制作期間が長かったものですから。」
アスラン
「あと、魔力制御の難易度を極限まで下げた僧侶用の杖作って。」
工房長は困惑した表情で、
「僧侶用……ですか。」
アスラン
「うん。」
アスランは工房を出た。
エミリアは彼が工房に行っている間、洋服店や装飾品店で、爆買いしていた。
その後、2人は宿に入った。
エミリア
「杖はどうでしたか?」
アスラン
「最低でも1週間。」
エミリア
「え……そんなにかかるんですか。」
アスラン
「特注だから。」
アスランはふと、エミリアの荷物を見る。
アスラン
「何それ。」
エミリアは苦笑いしながら、
「テンション上がって……沢山買っちゃいました。」
アスラン
「要らんだろ。」
エミリア
「アスラン様の分もあるんですよ!?」
アスラン
「なに。」
エミリア
「ローブです!いつも着てるローブ年季入ってるなと思ってたので!」
エミリアはアスランにローブを着せた。
そのローブは、魔法戦用に作られた物。
アスランは魔法戦闘が多いと感じ、エミリアは選んだ。
いつも彼が着ているローブは黒一色。
だが、彼女が選んだローブは、黒をベースに青紫の装飾がされていた。
エミリア
「え……とっても似合う!首から下げたペンダントの色とも合いますね!」
アスラン
「顔がいいから。」
エミリア
「はぁ……その言葉が無ければ……」
アスラン
「事実。」
エミリア
「良いのは、顔"だけ"ですけどね。」
アスラン
「失礼だな。」
その時、ドアをノックされる。
扉を開けると、そこには兵士が立っていた。
エミリア
「どちら様でしょうか?」
兵士
「王宮からの使いの者です。アスラン様はいらっしゃいますか?」
アスラン
「なに。」
兵士
「アスラン様、王宮までご同行願います。」
アスラン
「は……なんで。」
兵士
「フリューゲル様がお待ちです。」
アスラン
「最悪。」
入国した時点で、彼は見張られていた──




