第3話 面倒事
魔力砲を消滅させられたグロールは苛立ち、再び攻撃を仕掛ける。
グロール
「チッ…散弾雷撃」
雷撃を散弾させる魔力砲を放ったが、またしても掌に吸収された。
グロール
「チッ……」
アスラン
「全部無駄だって。」
グロールは冷や汗を流し、
「うるさいっ…!花蓮雷撃」
花弁が舞うような雷撃を放った。
アスランは空中でかわしながら、グロールに照準を合わせる。
アスラン
「闇夜砲」
紫の閃光が走り、グロールの片腕を吹き飛ばした。
グロールは体勢を崩す。
「っ……簡易…魔力砲なのに……」
アスラン
「才能。」
グロールは姿勢を立て直し、
「くっ…花蓮雷撃」
アスラン
「闇夜連撃」
闇の閃光と雷の閃光は激しくぶつかり、相殺された。
周囲一帯を明るく照らす。
グロールは冷や汗を流し、
「もう……なんでよ!」
アスランは滑空しながら、片目を閉じた。
「闇夜砲」
魔法を放った瞬間、杖にヒビが入った。
グロールのもう片方の腕を吹き飛ばされ、焦って東へ飛び去っていった。
アスラン
「そろそろ変えないとダメか……」
アスランはエミリアのもとへ降り立った。
彼は気絶した彼女を背負い、街へ向かった。
王国北東の街に入り、宿屋に入り彼女を寝かせる。
しばらくして――
エミリアはゆっくり目を開ける。
「ここは…どこですか…」
アスラン
「宿屋。」
エミリア
「すみません…私…何も覚えてなくて…」
アスラン
「いいよ。」
エミリア
「確か…何かに襲われましたよね。魔物ですか?」
アスラン
「そんな感じ。」
エミリア
「アスラン様は大丈夫でしたか?」
アスラン
「うん。」
エミリアは小さく息を吐いた。
「よかったです……」
【魔導帝国マルフェザン】
魔王が5000年支配してきた魔族の国。
満身創痍のグロールは帰還し、そのまま玉座に向かった。
彼女は魔王の最高幹部から、エルフやドワーフの里、村の襲撃を命令されていた。
人間と違い、突出した能力がある種族の数を徐々に減らすのが目的である。
一気に都や街を攻めないのは、用心深い魔王の性格が出ていた。
魔王
「何があった。」
淫魔は口角を上げる。
「あら〜?ドジでも踏んじゃったかしら。」
グロール
「はっ、想定外の事が………」
魔王
「ほう…」
グロール
「御二方は…覚えていらっしゃいますか。"殲命"を……」
淫魔は目を見開いた。
「へっ……」
魔王
「無論だ。」
淫魔は歯を見せ、言葉を漏らした。
「へぇ〜……生きていたんだ。」
グロール
「今回こそはと思い戦闘に至ったのですが…返り討ちに……」
淫魔
「陛下に深手を負わされ…てっきり死んだものと……」
魔王
「200年振りに出てきたか。」
淫魔
「どうなさいますか。」
魔王
「しばし様子を見る。襲撃も一度中止だ。」
グロール
「はっ。」
数日後、アスランとエミリアはギルドへ向かった。
日銭稼ぎの報告と、極秘クエストの件だ。
ギルドマスター
「そうか……」
アスラン
「多分、魔王の指示。」
ギルドマスター
「根拠はあるのか?」
アスラン
「200年間魔族は静かだった。」
ギルドマスター
「確かに…200年振りの動きとなると…魔王が動き出した可能性もあるか……」
アスラン
「最悪だ。」
ギルドマスター
「ギルド本部や各国王達にも知らせねばな。」
アスラン
「そうして。」
ギルドマスター
「ご苦労であったな。」
アスランはギルドマスターから報酬を直接受け取り、エミリアは受付で日銭クエストの報酬を貰った。
エミリアは帰ろうとするが、アスランが工房に行きたいと言った為、付き添った。
工房長
「おぉアスラン…どうした!」
アスラン
「杖にヒビ入った。」
アスランは手に持っている杖を見せた。
それを見た工房長は、表情を曇らせる。
工房長
「この杖は……俺たち人間には直せんぞ。」
アスラン
「頑張ってよ。」
工房長はアスランに杖を手渡し、
「無理だ、この杖の作成者に依頼するしかない。」
アスラン
「面倒臭いな。」
その杖は、エルフの大国【精霊王朝グリモワール】で制作された特注品。
高い魔力制御を必要とし、並の魔導師では扱う事すら出来ない。
2人は工房を後にした。
エミリア
「行きましょうよ!私ずっと夢だったんです!」
アスラン
「行ったことないの。」
エミリア
「行きたかったんですけど……田舎の里出身なので都とかは縁がないかなって………」
アスラン
「行けばいいのに。」
エミリア
「なら行きましょうよ!」
アスラン
「面倒臭いな…」
エミリアは視線を向け、
「ところで今日は杖を手に持ってるんですね。」
アスラン
「何となく。」
2人は小屋に帰ってきた。
荷物をまとめるはずだったが、アスランはすぐにベッドに横たわって寝てしまった。
エミリアが起こしても起きない。
仕方なく、彼の分の荷造りもした。
そして次の日の朝。
エミリアは早く起きて朝ごはんを作っている。
エミリアはアスランの体を揺すり、
「アスラン様起きて…ご飯できましたよ。」
アスラン
「……」
エミリア
「せっかく美味しいシチュー作ったのになぁ〜。」
アスラン
「……」
エミリア
「仕方ないか〜全部1人で…」
アスランは目を覚まし、
「…食べる。」
エミリア
「今日は精霊王朝に向かうんですよ。もっと早く起きてください。」
アスラン
「だいぶ早起きだろ。」
エミリアは頬を膨らませ、
「もぉ〜…私はアスラン様のお母さんじゃないんですよ。」
アスランの手がピタリと止まる。
目線も一切動かさず、瞬きもしない。
エミリア
「…どう……されました?」
アスラン
「………別に。」
それ以上は口を開かなかった──




