第2話 魔族の影
アスランは久しぶりに日銭を稼ぎに行く。
エミリアも同行した。
ルプランド王国内のギルドでクエストを確認する。
エミリア
「アスラン様、このクエストはいかがですか?」
アスラン
「それ手間の割に報酬が低い。」
エミリア
「こちらのクエストは?」
アスラン
「討伐系がいい、サクッと終わるから。」
2人がクエスト一覧を眺める。
その背後から、ギルドマスターが声をかけた。
ギルドマスター
「アスラン、日銭稼ぎか。」
アスラン
「うん。」
ギルドマスターは口元を緩め、
「この前のお嬢さん、元気そうで何よりだ。」
エミリア
「行く宛てがなかったので、アスラン様が一時的に住まわせてくれてるんです!」
ギルドマスターは目を丸くした。
「なっ……!?」
アスラン
「なんだよ。」
ギルドマスターはアスランを見つめる。
「お前にも人の心があったのか…」
アスラン
「失礼だな。」
ギルドマスター
「お前の顔を見て思い出した…1つ頼みたい事があってな、しばし来てくれるか?」
アスラン
「なに。」
2人はそのまま奥の応接間へ向かう。
ギルドマスターは前かがみになり、
「実はな……魔族が…」
アスラン
「無理。面倒臭い。」
ギルドマスター
「まぁ聞け。先日王国北東部に魔族が飛来し、近隣の村や里は壊滅だ。」
アスラン
「エミリアの故郷の里も魔族に焼き払われたとか言っていたな。」
ギルドマスターは目を細め、
「……それはいつだ。」
アスラン
「助ける少し前らしい。」
ギルドマスター
「ならば……同じ魔族によるものかもしれんな。」
アスラン
「討伐?」
ギルドマスター
「可能ならば生け捕りだ…まずは情報が欲しい。」
アスラン
「簡単に言うなよ。」
ギルドマスター
「厳しいのは承知しておる。報酬はいくらでも出す。」
アスラン
「えぇ……」
ギルドマスター
「国王も軍の先遣隊を派遣したが……壊滅した。」
アスラン
「上位魔人以上か。」
ギルドマスター
「冒険者にも声を掛けたいが、目ぼしい者がおらぬ。」
アスラン
「面倒臭いな。」
ギルドマスターの真っ直ぐな視線をアスランに向ける。
「お前にしか頼めんのだ。」
アスランは斜め上を見上げ、
「これだから小国は。」
ギルドマスター
「北西の辺境の国に、熟練の冒険者はそう来ない。」
アスラン
「金用意しとけよ。」
――極秘クエスト。
・周辺の村/里を襲撃している魔族の生け捕り
アスランは応接間を出てた。
エミリア
「おかえりなさい。こちらのクエストでいいですか?」
アスラン
「うん。」
2人はそのままギルドを後にした。
エミリアは視線を向ける。
「ギルドマスターとのお話は何だったのですか?」
アスラン
「世間話。」
エミリア
「そうなんですね。」
アスラン
「お前、回復魔法は何が使えるの。」
魔法は大きく分けて、
戦闘、回復、神聖魔法の3つ。
どの魔法を使うにしても、「魔力」を消費する。
魔力とは、空気中の「魔素」を体内に取り込んだもので、魔法を扱う為の動力源。
そして魔力を制御する力を「魔力制御」と言い、練度が高い程、強力な魔法を発動できる。
また魔力には上限がある。
「魔力上限」とは体内に留めておける魔力の総量。
鍛錬や成長で増加するが、限度があり魔力上限は、その者の素質である。
上限以上の魔力を取り込めば、体内の魔力は暴発してしまい、最悪の場合は死に至る。
エミリア
「簡易的な回復魔法は扱えます。ただあまり…魔力制御が上手くないので……」
アスラン
「分かった。」
エミリア
「アスラン様はどんな魔法を?」
アスラン
「空間と闇。」
エミリア
「闇魔法使えるんですか…!?習得がかなり難しいはずでは…」
アスラン
「少しだけ。」
2人は街を出て、クエストへ向かった。
クエスト内容は、王国近郊に出現する下級魔物の討伐。
アスランが全て片付けた。
エミリアはギルドへ向かおうとしたが、アスランは彼女だけを先に帰そうとする。
エミリアは一歩詰め寄り、
「え…私1人でなんて帰りませんよ。」
アスラン
「なんで。」
エミリア
「夜も更けてきて強力な魔物が出現します。アスラン様に万が一があった場合、今傷を癒せるのは私だけです。」
アスラン
「いらない。」
そんな中、轟音と共に周囲が爆破された。
エミリアは吹き飛ばされ、気絶してしまった。
上空には、魔人の女性が一人浮遊している。
アスラン
「あぁ……もう…」
グロール
「…生きてたのね。」
アスランは上空を見上げる。
「じいさんが言ってた魔族ってお前か。」
グロールは目を細め、
「そのまま陛下に殺されれば良かったのに。」
アスラン
「嫌だ。」
グロール
「今日は、私があんたを殺すから。」
アスラン
「お前じゃ無理。」
アスランは、掌から杖を出現させた。
その杖からは強大な魔力を感じられる。
グロール
「あの時…私を殺せなくて残念ね。」
アスラン
「お前が逃げただけ。」
グロールは眉をピクリと動かし、
「退却も戦略の1つよ。」
アスラン
「言い訳か。」
グロール
「黙れ……雷撃砲」
グロールは気絶しているエミリアに向かって、雷の魔力砲を放った。
エミリアの周りは爆発と砂煙で覆われる。
だが舞い上がった砂煙が消え去ると、アスランが防御魔法でエミリアを守っていた。
グロール
「いつから群れるようになったの。」
アスラン
「群れては無い。」
アスランはそのまま、グロールの高さまで上がる。
グロール
「雷撃砲」
アスランは左手を正面に向ける。
───魔法が消滅した。




