第23話 内部の侵攻
会議は終了。
全員部屋に案内され、まずは休んだ。
エミリア
「どうでしたか?」
アスランは部屋に入ってすぐ、ベッドに寝転んだ。
「長い。」
エミリアは微笑み、
「お疲れ様ですね。」
アスラン
「この後は。」
エミリア
「特に何も聞いてませんね。」
2人は窓を開け、黄金郷王都を一望する。
人類最大国家である黄金郷。
その王都は、世界最大の都としても知られている。
人間至上主義国家で、他種族の移住を禁止しているが、入国を禁止している訳では無い。
黄金郷での技術発展を目的とした各国の使節団や研究者達が、この国で日々技術革新や魔法生成に着手している。
この王都は、全体を城壁と結界で囲われている。
さらに黄金郷がある南の大陸は、世界の南西端に位置しており、魔王が治める北東の魔導帝国とは、対角線上にある。
その為、魔素濃度も極端に低く魔物も殆ど出現しない。
これが、世界一安全な王都と呼ばれる所以である。
アスラン
「広いな。」
エミリア
「本当に!人類最大国家って感じ!」
アスラン
「飯屋行こ。」
エミリア
「え、食事は持ってきてもらえると聞きましたが。」
アスラン
「気分じゃない。」
エミリア
「でも…陛下の護衛は……」
アスラン
「後で。」
エミリア
「はぁ……後で怒られても知りませんよ。」
2人は王宮を出て、王都を散策する。
街並みは綺麗に整備されており、レンガ造りの道、建物が建ち並ぶ。
区画も綺麗に鍛冶や研究所、民家や物販店、貴族の屋敷等に分かれている。
だが道はかなり複雑な形をしており、特に王宮への道はパッと見どこを通ればいいのか分からなく設計されている。
最初は否定していたエミリアだったが、案の定気分が上がり多くの店に入って買い物をしていた。
アスランは1人で出店に向かった。
店主
「あら珍しい、エルフかしら?」
アスラン
「まぁ。」
店主は微笑み、
「人間以外と話すのなんていつぶりか知らねぇ。」
アスラン
「ケーキ頂戴。」
店主
「はい、どうぞ。」
アスランはお金を払う為、掌から財布を取り出そうとするが。
アスラン
「は……」
店主
「あら、財布忘れたの?」
アスラン
「いや…」
おっけい。
じゃあ本編戻る。
その時、買い物を終えたエミリアが駆け寄ってきて、アスランの代わりに支払った。
エミリア
「も〜…財布忘れないでくださいよ。」
アスラン
「いや……違う。」
エミリア
「忘れたんじゃないんですか?」
今までに見た事が無い程、顔を青くしているアスランの顔を見て、エミリアは驚いた。
アスランは鋭い眼光で辺りを見渡している。
エミリア
「え……どうしたんですか?」
アスラン
「いや…」
アスランが、キョロキョロしながら歩いていると、食べ歩きをしている歩行人と肩がぶつかった。
「ほう……」
その時、脳天を突き刺すような強烈な視線を感じ、アスランは振り返る。
だが後ろは誰も居なかった──
建物の屋上から大量の食材を食べながら、2人が歩いていくのを眺めている者が居た。
「まさかここに来ているとは……能力に頼りきった愚か者が。」
アスランは、エミリアに"固有能力"が使えなくなった事を話した。
だが部屋に戻ると、また使えるようになっていた。
エミリア
「さすがに気のせいじゃないですか?」
アスラン
「そんな訳ない。」
エミリア
「そんな事今までにありました?」
アスラン
「無い。」
エミリア
「ていうか、アスラン様の固有能力知らないんですけど。」
アスラン
「いつも掌から物出してる。」
エミリア
「え…でも今は使えてるじゃないですか。」
アスラン
「あと、誰かに見られていた。」
エミリア
「ここは人間至上国家。他種族が居たら見られるのも普通なんじゃ。」
アスラン
「全然違う。」
その日は早めに休んだ。
だが深夜、再び突き刺すような何かを感じ飛び起きる。
アスランの息は荒く、隣のベッドで寝ていたエミリアもその息音で起きた。
エミリアは目を擦りながら、
「どうしたんですか?」
アスラン
「はぁ…はぁ…はぁ…」
エミリア
「え、どうしたんですか!」
エミリアは、アスランに駆け寄る。
そして彼の額と胸に手を当てる。
エミリア
「熱もある……鼓動も荒れている……」
アスラン
「はぁ……何でもない……」
エミリア
「そんな訳ないでしょ!」
エミリアは直ぐに鞄から書物を取り出し、症状と一致する項目を探し始めた。
風邪に似ているが、鼓動の荒れ具合はどの記された病気とも異なっている。
だがエミリアは、アスランの胸に手を添えた。
エミリア
「癒」
生命力を回復させる回復魔法。
淡い黄緑色の光がアスランを包む。
鼓動の荒れは少し落ち着いた。
アスラン
「このくらい…すぐ治る…」
エミリア
「私は僧侶です…もう少し頼って。」
アスラン
「うるさい…」
エミリア
「うるさくありません。」
エミリアはアスランに布団を掛け、彼女もベットに戻った。
だがしばらくして彼の息遣いは激しくなった。
エミリアは再び回復魔法を施し、横になる彼の背に優しく抱きついた。
アスラン
「なに…」
エミリアは優しく囁いた。
「ゆっくり深呼吸してください。大丈夫です……私がついていますから。」
アスラン
「いらない。」
エミリア
「ダメです。」
しばらくして、アスランは眠りにつき、エミリアも彼が眠ったのを確認してから寝た。
そして──
2人の部屋が見える王都の塔の頂上。
「フレナパティからの報告は誠であったか。精神支配に対する高い耐性か……」




