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第22話 決断の時

皇帝ガウロス

「皆の者、全面戦争の覚悟は…いかほどだ。」


下界に魔族が出現して5000年。

今までの大戦の発端は全て、魔王の侵攻によるもの。

人類は今まで攻めに出た事が無く、ただひたすら守りつ続けていただけ。


その理由は単純──

攻めても勝てない。


人類は、肉体に大きな損傷を与えられただけで死ぬ。

だが悪魔は肉体損傷が酷くてもわずかな生命力さえ残っていれば、再生による回復が可能。

大罪の名を冠する最高位悪魔達は、魂を消滅させない限り死なない。


余りにも分が悪すぎるのだ。


聖トランキル

「っ……勝てる訳ないであろう!」


国王ソリド

「5000年間、人類は守るしか出来なかった事は歴史が証明している!」


君主マシフ

「世界が血の海になるぞ。」


君主オルガーニ

「下界に住む数億の人類の魂を糧にされれば、大罪級の悪魔が量産されてしまうかもしれんのだぞっ…!」


皇帝ガウロスは、鋭い眼光で全員の顔をしっかりと見る。

「だから俺は言った…覚悟はあるのかと。」


全員が冷や汗を流し俯く。


覚悟などあるはずが無い。

勝ち目の無い戦争を仕掛ける事は、人類を己の決断で滅ぼすのと同義。

現に大罪の被害だけでも、5000年間で数千万の人類の魂が喰われている。


人類は、自らの手で守ってきたのでは無い。

魔王の手によって、5000年間生かされていただけ。


天帝エリュシオン

「無論、無策では挑まないわよ。」


法皇イドラトーレ

「この期に及んで、どんな策を打つと。」


天帝エリュシオン

「皆は人類国家が、この場の7ヶ国だけだと思っているの?」


国王ソリド

「当たり前だ。」


天帝エリュシオン

「もっと視野を広げなさい。」


皇帝ガウロス

「居るだろう……東に。」


法皇イドラトーレ

「まっ……まさか………」


この会議に参加した7ヶ国の人類国家は、西の大陸と南の大陸に位置する。


そして、東の大陸には獣人国家が点在している。

彼らの祖先は魔物であるが、魔物や魔族とは異なる。

彼らも人類同様、魔王の支配下では無い。


しかし、魔物が祖先である彼らを人類は許容出来ない。

いつ襲ってくるか分からぬ者達とは肩を並べられない。

だからこそ、人類は魔族や魔物同様に獣人を恐れるべき対象として関わりを持っていないのだ。


法皇イドラトーレ

「馬鹿なっ…奴らと盟を結ぶというのか。」


天帝エリュシオン

「そうよ。」


国主オルガーニ

「不可能だ……奴らは、元々魔王の膨大な魔素で特異な進化を遂げた魔物。そんな奴らを、人類と同義と捉えるのか!」


天帝エリュシオン

「確かに彼らの先祖は魔物。だが彼らは誕生して4000年間、一度も魔王の軍門に降った事は無い。」


国王ソリド

「だがもし共闘しても、何かの拍子に魔王に与するかもしれぬぞ!」


皇帝ガウロス

「あぁ……それを含めた覚悟だ。」


皆が息を飲んだ。


ガウロスが皇帝の座に座って約1750年。

人類を選別し、人間至上国家を創り上げてきた黄金郷の皇帝が、人類とも言い難い獣人との盟を提案しているのだ。

そこまでしなければ人類は危うい。


だからこそ皇帝は覚悟を問うたのだ。


法皇イドラトーレ

「だがそもそも……奴らが我ら人類と手を結ぶと思うか。」


天帝エリュシオン

「無いとは言いきれない。」


君主マシフ

「確かに…人類と獣人は4000年間国交こそ無いが、戦争をした事も一度も無い。」


天帝エリュシオン

「断絶状態だが、拒絶されてるかどうかは分からない。」


聖トランキル

「っ……だが!」


天帝エリュシオン

「安心しなさい。精霊王朝最高峰の男が今向かってるわ。」


君主マシフ

「大賢者…フリューゲルか……」


皇帝ガウロス

「俺とエリュシオンの命令で、獣公国に向かっている。」


天帝エリュシオン

「全ては……彼次第よ──」


会議開始の少し前。

大賢者フリューゲルは、海路で獣公国グラハイトに向かっていた。


【獣公国グラハイト】

東の大陸最南端に位置する獣人最大国家。


国主オルガーニ

「よりにもよって……獣人最大国家。」


国王ソリド

「大賢者が殺される可能性もあるが……」


君主マシフ

「いや…良い判断だ。」


皇帝ガウロス

「世界に現存する大賢者は3人。」


天帝エリュシオン

「1人目は我が国のフリューゲル、2人目はここ黄金郷。」


君主マシフ

「そして3人目は…獣公国。」


聖トランキル

「大賢者は人類の叡智の象徴、いくら獣人とはいえ大賢者を殺すという愚行は犯さぬ……と、思いたいが。」


法皇イドラトーレ

「そんな危険を大賢者に任せたのか。」


天帝エリュシオン

「フリューゲルはそんなヘマはしないわ。安心して吉報を待てば良い。」


皇帝ガウロス

「届くまで皆には、王宮に居てもらう。」


君主マシフ

「何故だ。」


皇帝ガウロス

「西の大陸では、上級魔物が確認され大罪も出現した。黄金郷王宮は、人類国家で最も警備が厳重な建物。国家元首である皆の命は最優先に守らねばならん。」


法皇イドラトーレ

「致し方ないか……」


精霊王朝から獣公国までは海路で1ヶ月程かかる。


その間、7ヶ国の国家元首達は黄金郷王宮に留まる事となった──

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