第16話 不足の事態
チェウムの目の前にいる男。
その男は、チェウムの父親役だった上位魔人。
上位魔人
「流石でございます、フレナパティ様。」
【淫魔 フレナパティ】
5000歳の最高位悪魔の女性。
魔王の第四臣。
魔王が召喚した、下界の原初悪魔の一人。
フレナパティは、再びアスランに覆い被さる。
淫魔フレナパティ
「でも……もう少し楽しませてくれる?初めて見た時から…ずっと欲しかったの。」
上位魔人
「まずはアスランの同行者……エミリアというエルフに尋問をしませんと。」
淫魔フレナパティは猫撫で声で、
「えぇ〜……そんなの後にしなさいよ。」
上位魔人
「魔王様から……楽しむの後だと。」
淫魔は駄々をこねるように、
「も〜……分かったわよ……」
フレナパティは起き上がり、ぐったりとベッドで眠るアスランに優しくキスをした。
そして服を着て、部屋を出た。
数週間前──
エミリアは、天帝からの帰還要請で王都に帰ったはずだった。
だがそれは、フレナパティの罠。
彼女はアスランに近づく為、余計な者を排除した。
エミリアは魔族に捕らえられ、監獄に閉じ込められていた。
その場所は、どこか検討がつかない。
アスランは無事なのか。
国は大丈夫なのか。
その心配が、頭を何度も過ぎっていた。
淫魔フレナパティ
「ふ〜ん……お前がエミリア?」
エミリアは、フレナパティから放たれる膨大な魔力にゾッとする。
エミリア
「あっ……悪魔……」
淫魔フレナパティ
「なんともまぁ……安っぽいガキねぇ。」
エミリア
「あっ……アスラン様は!」
淫魔フレナパティ
「ん〜?知りたい?でもダメよ……あれは私のモノ。」
エミリア
「あっ…アスラン様を殺すなら……代わりに私を殺せ!」
淫魔フレナパティ
「陳腐なクソガキは要らないんだよ。私は我慢してたの……初めて見た時から、体が燃え上がるように熱くなって……」
上位魔人
「ごほんっ……フレナパティ様。」
淫魔フレナパティ
「あら……ごめんなさいね。じゃあ〜貴方が質問に答えてくれれば、彼は生かしてあげる。」
エミリア
「なん……ですか……」
淫魔フレナパティ
「彼の種族は何?」
エミリア
「え…種族……?」
淫魔フレナパティ
「そう…種族。」
エミリア
「え…私も知らない……」
淫魔フレナパティ
「嘘つかないの。一緒に居るんだから、そのくらいわかるでしょ?」
エミリア
「本当に知らない……!」
フレナパティは、エミリアの目をじっと見つめる。
淫魔フレナパティ
「嘘は……ついてないみたいね。」
エミリア
「どうして……種族を…」
淫魔フレナパティ
「お前に話して、何の得があるの?」
上位魔人
「この者はどうしますか。」
淫魔フレナパティ
「ん〜……何か使えるかもしれないし、このまま拘束しときなさい。」
フレナパティと上位魔人は部屋を出た。
エミリアは、そのまま監獄に拘束され続ける事になった。
フレナパティは再び、アスランのいる部屋に入り、欲望のままに体を交わらせた。
彼女はどんどん昂り、部屋全体がむせ返る程の甘い香りで覆われた。
フレナパティは、アスランの唇を貪るように舌で絡める。
だが次の瞬間──
アスランはフレナパティの舌を噛み切った。
それに驚愕し、強引に離れようとする。
だがアスランは、フレナパティの髪の毛を掴んで離さない。
淫魔フレナパティ
「は……え…なんで……」
アスラン
「お情け。」
淫魔フレナパティ
「は……」
アスラン
「いい体なのに悪魔か…勿体ない。」
フレナパティはアスランから抜け出し、瞬時に構える。
アスランはベッドに座り込み、フレナパティを鋭い眼光で睨みつける。
淫魔は思考した──
なぜ、精神支配を抜けられたのか。
そもそも精神支配は出来ていたのか。
今まで数百万の人類を喰らってきたが、誰一人として、彼女の魅了が効かない者は居なかった。
だが……彼はそもそも人類なのか──
淫魔フレナパティは冷や汗を一滴垂らした。
「堕ちて……なかった……」
アスラン
「うん。」
淫魔フレナパティ
「一体いつから……私が悪魔だって。」
アスラン
「上位魔人如きに、父親役は荷が重いだろ。」
淫魔フレナパティ
「じゃあ……最初から。どうしてその時に手を打たなかった……」
アスラン
「街中だと被害が。」
淫魔フレナパティ
「私が迫った時、なぜ抵抗しなかったの……?」
アスラン
「エロかった。」
アスランはベッドから立ち上がり、引き裂かれた服を着始めた。
そして掌から杖を出す。
淫魔フレナパティ
「……何をしてるの。」
アスラン
「聞いてたよ、エミリアも捕まえた事。」
淫魔フレナパティ
「陳腐なクソガキの事ね……」
アスラン
「さすがに、裸では迎えに行けない。」
淫魔フレナパティは目を細め、
「ここから……出られると思ってるの?」
アスラン
「パッと見で亜空間じゃないのはすぐに分かった。でも…まさか、人類領域の少ない魔素量で転移魔法を使うのか。」
淫魔フレナパティ
「下等な人類には、出来ないでしょうね。」
アスラン
「早く退いて。」
淫魔フレナパティ
「行かせなないわ……貴方は一生私の糧になるの。」
アスラン
「本気で俺を、止められると。」
淫魔フレナパティ
「舐めないで……炎之扇撃」
扇状に広がる火炎砲撃。
アスランの前方は、炎で覆われた。
アスランは瞬時に、掌から透明な防御魔法を出現させ、防いだ。
だがフレナパティは一切動揺しない。
淫魔フレナパティ
「万炎之舞踊」
アスラン
「うわぁ…闇夜連撃」
幾千万の炎が、フレナパティの周囲に出現した。
舞い踊るように、続々とアスランに襲いかかった。
アスランは、魔力砲を連続して放った。
炎と紫の閃光が、凄まじい速さで衝突。
部屋全体が、衝撃による光に包まれた。
閃光が消え、フレナパティは再び構える。
だがアスランは片膝をつき、右腕を強く抑えながら、大量の冷や汗を流している。
右手の爪は通常より鋭くなり、前腕からは鱗が隆起し、ローブの袖を突き破っていた──




