第11話 動き出す世界
アスランはフリューゲルから、再発行された職業証明書を手渡される。
アスラン
「なんでまた。」
大賢者フリューゲル
「王宮直属の魔導師が、証明書を持たぬのはおかしいだろう。」
アスランは証明書を軽く眺める。
「…前と同じか。」
司令官バシレウス
「頼んだぞ。」
大賢者フリューゲル
「杖が出来るまで後何日だ。」
アスラン
「多分5日。」
大賢者フリューゲル
「ならば5日後、すぐに向かえ。」
アスラン
「はぁ…」
魔導師には階級が存在する。
アスランの階級は「第一級魔導師」
戦闘能力だけなら、更に上を目指せる。
だが、魔導師の階級を得るには、人類国家共通の魔導師試験に合格し無ければならない。
アスランは試験を一度も受けておらず、上層部が彼の実力を鑑みて、特例で階級を与えた。
彼には、何かと単独任務を与える事が多い。
それなりの階級が必要だが、彼自身が試験を受ける気が無いので、そこは致し方なかった。
司令官バシレウス
「前と同じという事は……種族や出身地の記載は無しか。」
大賢者フリューゲル
「そうだ。」
司令官バシレウス
「なぜ記載せぬのだ、また在らぬ疑いをかけられるぞ」
大賢者フリューゲル
「儂の認可付きなら問題なかろう。それに──」
アスランが自宅へ帰ってきた。
彼は帰ってきて早々、大の字でベッドに寝転んだ。
エミリア
「おかえりなさい!」
アスラン
「疲れた。」
エミリア
「どうでしたか?」
アスラン
「会議嫌い。」
エミリアは微笑み、
「ふふっ…お疲れ様ですね。」
アスラン
「5日後、東の国境に行ってくる。」
エミリア
「え!そうなんですか……準備しないと。」
アスラン
「一人で行く。」
エミリア
「何でですか、行きますけど。」
アスラン
「お前弱いじゃん。」
エミリア
「これから強くなります。」
アスラン
「いらない。」
エミリア
「行きます。」
アスラン
「面倒臭い。」
エミリア
「私一人でゆっくりなんてして居られません!それに……アスラン様に助けていただいた恩をまだ返せてない!」
アスラン
「いらない。」
エミリア
「とりあえず……私も行きますからね。」
アスラン
「来んなよ。」
一方その頃──
魔導帝国マルフェザン。
魔王は、最高幹部を全員招集した。
魔王
「揃っているな。」
冥魔
「此度はどうなさいましたか。」
奪魔
「全員揃うのは200年振りかぁ……」
魔王
「あの大戦以降、お前達には出国するなと、厳命したな。」
200年前の第二次精魔対戦後──
"傲慢"だった魔王は用心深くなり、最高幹部達の出国を禁じた。
降魔
「はい、人類国家の偵察や襲撃は上位魔人に任せていました。」
魔王
「だが、先日グロールから報告があった、『殲命』が出たと……」
壊魔
「……奴が。」
縛魔
「馬鹿な……あれ程の傷を負って、まだ生きていたと言うのですか……」
淫魔
「私も、その話を聞いて驚いたわ。」
魔王
「今後、人類国家に動きがあるやもしれぬ。」
冥魔
「ここを…攻めてくると?」
魔王
「分からぬ。だがまずは、"黒竜"の封印場所の特定だが……」
縛魔
「特定しました。」
魔王
「解除はどのくらいかかる。」
縛魔
「古の結界が張られており、しばらくかかるかと。」
魔王
「"古の"結界だと。」
縛魔
「はい、恐らくは。」
冥魔
「"祭壇"を取りこぼした記憶は無いが。」
魔王
「まぁ良い、黒竜の件はお前に任せるぞ……クラティス。」
縛魔クラティス
「はっ。」
冥魔
「"天災級"はどうなさいますか?」
【天災級】
最も危険度が高い"三大神獣"の総称。
6000年前──
下界創造の際、下界の均衡を保つ存在として、天界から召喚された。
だが、4500年前の神々との大戦後。
「神々は"神殺し"が行われない限り、下界に干渉しない」
という制約で、三大神獣達は使役する者を失い、現在は野生化している。
降魔
「東の大陸北部の上空で、"ジズ"が目撃されています。」
魔王
「我が国に近ずかぬよう、動きを見張れ……ベリアル。」
降魔ベリアル
「はっ。」
魔王
「フレナパティ……お前は『殲命』に当たれ。」
淫魔フレナパティは笑みを浮かべ、
「え……討伐…ですか?」
魔王
「出来るものならな……どんな形でも奴を無力化しろ。」
淫魔フレナパティ
「はっ。」
魔王
「それと……私欲を挟むな。」
淫魔フレナパティ
「……というと?」
魔王
「欲のまま行動するのは勝手だが、統制を厳守せよ。」
淫魔フレナパティ
「かしこまりました。」
魔王
「無力化さえすれば、貴様の好きなようにして構わぬ。」
淫魔フレナパティ
「はっ。」
魔王
「ベルゼビュート……お前は"黄金郷"だ。」
冥魔ベルゼビュート
「はっ。」
魔王
「他の者は持ち場に戻れ。」
そして──
会議の翌日。
アスランは昼まで寝ていた。
エミリア
「アスラン様、起きてください。」
アスランは爆睡している。
大賢者フリューゲル
「早く起きぬか、馬鹿者!」
アスランは飛び起き、
「は……え……何でいるの。」
大賢者フリューゲル
「任務に行く前に、少し立ち寄ったのだ。」
アスラン
「ふざけんな。」
大賢者フリューゲル
「お前もそれなりの歳だ、少しは大人にならんか。」
アスラン
「歳を重ねたら大人になれると思ってんなら、ジジイの方がよっぽどガキだな。」
大賢者フリューゲルはアスランにゲンコツを浴びせ、
「いい加減その怠けた態度を直せ!」
アスラン
「うざい。」
大賢者フリューゲル
「儂はもう行くが、任務の件…しっかり頼むぞ。」
アスラン
「早く行け。」
アスランはフリューゲルが立ち去って、すぐに二度寝した。
エミリアは、フリューゲルを玄関まで見送る。
大賢者フリューゲル
「すまんな……苦労をかける。」
エミリア
「え……いえ、そんな。」
大賢者フリューゲル
「儂は子が居なくてな……あやつを引き取った時、どう育てればいいか分からなんだ。それであんな性格になってしまったのやもしれぬ。」
エミリア
「私も……アスラン様に支えられているので。」
大賢者フリューゲル
「遠慮せずとも良い、あやつが人を支えるなど……」
エミリア
「本当です!何度も助けてくれて。」
大賢者フリューゲル
「あやつは……良いお嬢さんを手に入れたものだ。」
エミリアは少し頬を赤らめた。
「いえ、そんな……手に入れるなんて……」
大賢者フリューゲル
「あやつを……これからも支えてやってくれぬか。」
エミリア
「もちろんです!」
大賢者フリューゲル
「もし………"昔話"をされる時があったら…臆さず、聞いてあげてくれ。」
エミリア
「え、昔話?」




