3-12
「か、馨ちゃん……!?」
「お前、今まで何処行ってやがったんだァ」
僕と黎さんの言葉は無視し、馨ちゃんは涼さんの方へと歩み寄った。
「あなた、さっきから聞いてたらデモデモダッテって煩い」
……かと思ったらめちゃくちゃ辛辣な言葉を浴びせる。ちょ、それは流石に言い過ぎでは……!?
しかし、止める隙も無く、馨ちゃんは続けた。
「それって実際に彼に言われたの?聞いてみたの?違うよね。全部あなたの勝手な想像に過ぎない」
「……で、でもっ、私は……!」
「ほら、でもって言った。聞いてもいないどころか聞こうともしないで逃げてる癖に、勝手に自分の気持ち決められて……その彼氏、可哀想」
馨ちゃんは吐き捨てるように言い、その後こっちを睨みつけた。……え?僕も?
「……将吾は、この女に甘過ぎ。ダメだよこういうの甘やかしちゃ」
「え?甘やかし……?」
「こういう人は自分の悲劇のヒロインだって思って酔ってるだけ。優しい言葉をかけて欲しいだけなんだよ。自分は悪くないって」
そ、そうなの……か?
確かに馨ちゃんは女性だけど……12歳だ。それにしちゃ、これはだいぶ大人びた発言じゃないか?
「黎一郎」
「あァ?俺にも何かあんのかァ?」
「当たり前でしょ。何将吾に全部任せてるの」
「あ、いや!それは僕が任せてって言ったから……!」
「将吾は黙ってて。仮に将吾に言われたとしても、完全に丸投げとか大人のすることじゃないから。将吾はまだ、子供なんだよ?」
か、馨ちゃんだって子供だよね!?
僕は思わず「人生何周目!?」とツッコミを入れそうになった。
……黙っててって言われたから、大人しく黙っておくけど。
「……で、話を戻すけど。あなたはすぐに彼に事情を説明すべき」
馨ちゃんは流れるような仕草でまた涼さんの方へと向き直る。思わずあまりにも無駄の無い、美しい動きだと思ってしまった。
「でも……」
「またでもって言って逃げるの?」
「……彼に、捨てられたくないの!」
「このまま話し合いを避けて逃げ続けてたら、それこそ捨てられルートだと思うけれど」
馨ちゃんの言葉に涼さんは息を飲む。
確かに、それは有り得るかもしれない話だからだ。
「……というか、あなたは捨てられる前提みたいだけど。どうして彼があなたの身体を受け入れてくれないと思うの?」
「そ、それは……」
涼さんが答える前に、馨ちゃんがクスリと笑い、答える。
「ああ、分かった。彼のこと信じてないんだ。あなたにとって彼って、そんな程度の存在だったんだね」
「…………!」
「だったら良いんじゃない?そんな程度の男なんて、サヨナラしちゃえばいい──────」
「……そんなことない!私、彼のこと、愛してる!信じてるもの……!!」




