3-11
涼さんは少女……アリスに優しい眼差しを向ける。アリスはそれを受け、にっこりと笑った。
「アリスとはここで出会ったの。伸びっぱなしの草の中で遊んでいて、始めは人間だと思ったわ。親は何処にいるのかと、どうしてこんなところに子供を放置しているのかと思ったの。でもすぐに彼女が人間でないことは分かった」
「アリス、飛べるもの!ね?」
「ええ、そうね」
アリスの言葉に涼さんは頷き、優しく頭を撫でる。撫でられた少女はとても嬉しそうに微笑んだ。
「その時アリスと色々お話してね……いつの間にか、彼女のことが私の子供のように思えてきたの」
「アリスも!涼のこと、お母様だと思ってたわ!」
アリスの言葉に涼さんも嬉しそうに微笑む。
「……それから私はほぼ毎日アリスに会いに行ったわ。……そして、彼からの連絡を無視するようになったの」
「……え、それは……」
「良くないわよね。私にも分かるわ」
愛している彼女が突然連絡をして来なくなり、何処かに入り浸っている。
普通の男ならば、浮気を疑ってしまうものではないだろうか。
「あなたの想像通り。彼は浮気を疑って来たわ。でも私はそれすらも面倒になってしまって、頑なに彼を避けた」
……何とも言えない。
僕はその彼氏さんとは会ったことが無いし、どんな人かも分かっていない。
でも、もしその彼氏さんが本気で彼女との結婚を考えていたら、どんな彼女でも受け入れる覚悟が出来ているのだとしたら……涼さんのこの行動は、余りにも彼に対して不誠実ではないかと思ってしまう。
……でもこれは、僕が男だからこそ、こう思ってしまうのだろうか。
女性だったらもっと、違う答えが出せるのだろうか……?
だとしたら、僕が簡単に口出しをしてしまうのは、何か違うような──────
「……ばっかみたい」
そんな僕の不安を払拭するような凛とした声が、響き渡った。




