3-13
涼さんは馨ちゃんに反論し、必死に叫んだ。
そしてその言葉を聞いた馨ちゃんは……微笑む。
「……だって。良かったね、ちゃんと愛されてるみたいで」
「涼……お前、そんなの言ってくれなきゃ分からないだろ……!」
「や、大和!?どうしてここに……!」
馨ちゃんの言葉と同時に一人の男性が姿を見せる。
その男性を見て、涼さんは明らかに狼狽えた様子だった。
「何か急にこの子に着いて来いって引っ張られて、ここまで連れてこられたんだよ。それより、何で妊娠出来ないってこと黙ってたんだよ」
「そ、それは……あなたに知られたら嫌われるって思ったから……子供が産めない女なんて……」
「そんなことある訳ないだろ!俺はお前を本気で好きなのに!」
ああ、成程。
恐らくこの大和と呼ばれた男性が、涼さんの恋人なのだろう。
「黎一郎。この人、陰魔に取り憑かれてる」
「……あァ。そうだな」
「あっ!確かに何か背中に黒いモヤが……!馨ちゃんが見つけてきたの?」
「うん。それが私の役目だもの」
そういえば前にも、馨ちゃんは陰魔を探しに行ってるとかどうとか聞いたな。
この子は黎さんから離れている時は、一人でパトロールをしていたのか。それで、陰魔に取り憑かれている大和さんを見つけ、連れて来た、と。
「おい、馨。……読めそうか」
「だいぶ低級だけど……やってみるね」
「……てな訳で、そこのお二人さんよォ。今からお前に憑いてる厄介者を祓うから喧嘩は後にしなァ」
黎さんの言葉に二人は言い争いを止める。
そして、馨ちゃんはいつものように詠唱を始めた……。
「混沌に飲まれし咎人よ、汝の罪を我に示したまえ……」
そして目を開け、告げる。
「彼に憑いてるのは、生霊」
「生霊……だとォ……?」
「正確に言うと、人が吐いた呪詛が形になって陰魔になったものなの」
馨ちゃんは大和さんの方を振り返った。
「あなたの周りに、酷いことを言ってくる人が……いるんじゃないの……?」
「……っ、それ、は……」
明らかに心当たりがあるようだが、大和さんは俯いて答えない。
その様子を見て、涼さんが彼を揺さぶった。
「教えて、大和!あなたを傷つけているのは誰なの!?」
「………………」
「どうして何も言ってくれないの!?あなた、陰魔に取り憑かれちゃってるんだよ!?」
「……それは。でも……」
「言ってよ、大和!私はあなたを愛してるの!だから、辛い思いをさせたくないの!」
「……………………」
それでも大和さんは沈黙を貫こうとしたが、今にも泣きそうな涼さんを見て、ようやく重い口を開く。
「……一ヶ月程前から、俺の元に男が訪ねてくるようになったんだ……」




