3-8
「っ、きゃああああ!!」
「!?な、何!?」
縮こまって大人しくしていようと思った矢先に頭上から悲鳴が聞こえ、まさか黎さんが何かやらかしたのかと思って見上げると……何と、女性が4階から落ちそうになっているではないか。
「え!?えっ!?どういうこと!?」
「ああクソ!バタバタ暴れやがるからこうなるんだ!」
黎さんの声だ。そちらを振り向くと彼は2階に到着してはいたが、古い建物だからか板を踏み抜くことを恐れ、それ以上上に行くことが出来ない。
きっと黎さんから逃げようとして、彼女は更に上の階に上ったのだろう。そこで床を踏み抜いてしまったのだ。
「うわああああん!誰か涼を助けてよおおお!」
……!?落ちそうになっている女性の声では無い、幼い女の子の声。まさか、もう一人いる!?
「ビービー泣くな!崩れンだろうが!」
黎さんはゆっくりと3階に進もうとしているが、だいぶ建物が軋んでいる。きっと長くは持たない。
「黎さん、僕に何か出来ない!?」
「黙りなァ!お前は何もするんじゃねェ!」
まさかの戦力外通告。ちょっと悲しい。
……って、そんなこと考えてる場合じゃない!何とかしないと、本当に落ちてしまう!
とりあえず女性が落ちて来たら受け止めるくらい、僕にでも出来るだろう。でも4階から落ちて来た人を受け止めたら……きっと骨は何本か逝ってしまうだろうな。
「……うん。覚悟決めた」
息を大きく吐き、女性の落下地点を見定め、移動する。
「はァ?ゴショー、何してんだ─────」
───────その時だった。
「きゃあああああああっ!!」
女性が辛うじて掴んでいた床が剥がれ、そのまま彼女は真っ逆さまに落ちてしまう。
「涼!いやああああ!!」
……グッバイ!僕の骨!
そんなことを思いながら僕は女性を受け止める体勢を取る。
「チッ……!クソッタレが!!」
黎さんは2階からそのまま落下地点へと走る。その際床を何枚か踏み抜いて行ったがあまりにも足が速すぎて彼が落ちることは無い。
……踏み抜かれて落下した床の破片が僕の方へとボロボロ落ちて来るのは少々痛かったが。
そして1階の床に叩きつけられる前に2階から手を伸ばし、見事に落下する彼女の服を掴んだ。
「え……?」
要は女性は黎さんに服を掴まれ、2階から1階にかけて宙吊りの状態になっている訳だが、驚くのはそこでは無い。
「れ、黎さん!アンタよく片手で人間一人持てるよね!?」
……そう。びっくりしたのは彼の怪力具合であった。
重力加速度がかかっている状態で人間一人を片手……しかも左手で持つなんて、この人本当に人間なの!?
「うるせェ……割と限界だ……」
よく見るとめちゃくちゃ脂汗をかいている。ああ……やっぱり無理してたんだ……!
「だ、大丈夫!2階からなら僕だって受け止められるよ!」
正確には2階から宙吊りにされている状態なので地面からもそう離れていない。ここから落ちても怪我はしないだろう。
「おう……任せたァ……」
黎さんはそう言うと同時に彼女を離す。そしてこちらに落ちてきた彼女を僕が受け止めたのだった。




