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「……!」
黎さんの後を追いかけて辿り着いたのは、廃団地の廃公園だった。
「ちょ、黎さん!こんな不気味な場所に何かあんの!?」
「ゴショー、待ってろって言っただろうが」
「だ、だって!その、僕も気になったから……!」
「お前なァ……危険な陰魔だったらどうするんだ。俺に守らせる気かァ?」
「う……ごめんなさい。でも、危なくなったら巻き込まれないようにするから……!」
正直、黎さんに不思議生物のことについてもっと知りたかったし、僕自身が黎さんに懐いている……というのもあると思う。
「……ったく、視えねェってのにどうやって巻き込まれないようにするってンだ」
僕の様子を見て、黎さんはため息をついたが、帰れとは言わなかった。
「こういう場所には不思議生物が集まりやすいんだよ」
「まさか、ここに居るの……?」
「……あァ」
そう言って黎さんは匂いを嗅ぐような仕草をする。
「……間違いねェ。ここにいやがる」
な、何て原始的な調べ方なんだ……!というか、匂いを嗅いだだけで分かるものなの!?
しかし、僕には何も視えない。黎さんにはしっかり視えているのだろうか。
「黎さん、不思議生物……陽魔だった?陰魔だった?」
陰魔だったら巻き込まれないように一応離れておくつもりだったので、僕は黎さんに聞く。
しかし彼はあっけらかんとして答えた。
「知らねェ」
「し、知らない!?何で!?視えてるんでしょ!?」
「ここにいやがるのは間違いねェが、姿を隠してやがる……。それに恐らく、人間も一緒だ」
「それって、人間に取り憑いてるってこと!?」
「さァな。つーかゴショー、テメェさっきからギャーギャーうるせェ。向こうにこっちの気配を勘づかれて逃げられるだろうがァ」
彼に忠告され、僕は慌てて口を塞ぐ。
黎さんは気配だけは察知することが出来るが、それがどのようなものかは分からないらしい。
「憑かれてンのか、はたまた匿ってンのか……」
「……かくまう?人間と不思議生物が一緒に生活してるってこと?そんなことあるの?」
「そりゃァ、あるだろ。前の女だって今はあの付喪神と一緒に暮らしてるだろうが」
……ああ、成世さんか。確かに彼女の人形に憑いていたのは陽魔である付喪神である式部で、成世さんは式部と共に暮らしていくことになったんだっけ。
「その匿ってンのが陽魔だったなら良いが、陰魔ならマズい。憑かれて、最悪殺られる可能性だってある。既に憑かれてる可能性すらあるが……」
言いながら黎さんは草むらをかき分けて進んでいく。
ここは廃公園だ。草も伸びっぱなしで、下手をすると顔まで飲み込まれる長さまで育っている。しかもご丁寧に廃墟となった団地まである。隠れるのには最適だ。
……うう。でも、何か虫とかに噛まれそうで嫌だなあ……。
僕が草むらに入るのを躊躇していると、こちらを見て黎さんがニヤリと笑った。
「……あァ。お坊ちゃんにはこういうのは無理か。なら、帰っても良いぜェ」
……カチン。
そう煽られて「はいそうですか」と帰る訳にはいかない。僕にだってプライドはある。
それに、僕にはやりたいことがあるのだ。その為には不思議生物のことも、黎さんのことも、もっともっと知らなくてはならない。
どっちにしろ、ここで逃げる選択肢は僕には無かった。
「ち、ちょっと待って!……よし!」
僕はもう一度立派に育ち切った草むらを見、覚悟を決めて進むことにした。
「……へぇ」
そんな僕を見て、黎さんは満足気に笑った。




