3-3
仕事じゃない……ってどういうことだろう。サメジマさんが魔具師なら、魔具を直すことも彼の仕事のうちなのではないだろうか。
……そう思ったが、サメジマさんの顔があまりに怖いので、僕はその疑問を自分の胸の内に仕舞うことにした。
「……こら、大河!あんまりお客さん怖がらせちゃダメだよ!」
そんな中、店の名からもう一人オレンジ髪の男性が顔を出す。
「……!零士!」
「ごめんなあ、お客さん。初めてなのにこんな怖い顔のやつが出てきてびっくりしただろ?」
「おいコラ!怖いって言うな!」
オレンジ髪の男性はニコニコと笑って言う。
「初めまして。俺は鮫島零士。その人の奥さんだよ。……ほら、大河もちゃんと名乗って!」
「……悪かったな。俺は鮫島大河だ」
えっと、金髪の怖い人が大河さんで、オレンジ髪の優しそうな男性が零士さん……か。よし、覚えた。
「……って、奥さん!?零士さん男じゃないの!?」
「あっはは!俺は男だけど、その人の奥さんなんだよな!これでも大河の方が俺に惚れてるんだぜ?」
「おい零士!余計なこと言うんじゃねえ!」
ほうほう。成程。僕は基本的にそういうのに偏見は無いタイプだけど、結婚までしている人は初めて見た。
そして、こんなに怖そうな大河さんの方が零士さんに惚れ込んでいると。ふむふむ。
僕は知らず知らずのうちににやけていたらしく、大河さんに睨みつけられた。おー怖。
「で、テメェはいつになったら修理代払うつもりなんだ?毎回毎回ツケにしやがってよ」
「ま……そのうちなァ」
「カッコつけんな!つーか、今回も支払わねえ気か!」
ナチュラルにその場から去ろうとした神々廻さんを大河さんは止めた。物理で。
「俺ァ金がねェ。それはお前もよく知ってることだろ?ワニ島ァ」
「だからカッコつけて言うことじゃねえ!」
「まあまあ良いじゃん!黎ちゃんがここらの陰魔を祓ってくれてるからこそ、俺らが安心して暮らせるんだからさ。黎ちゃんが居なけりゃとっくにこの辺は陰魔に占拠されてるよ」
零士さんはニコニコと笑いながら、大河さんを宥める。
「よし、零士。後は頼んだァ。行くぞ、ゴショー」
「えっ、ちょっ……!」
「おいコラァ!修理代置いてけ!!」
大河さんの物凄く怖い怒鳴り声を背に、神々廻さんは僕の手を引いてその場から逃げ出した。
というかこの人修理代を踏み倒すつもりじゃないだろうな……?




