3-1
「こんにちはー」
「将吾さん、いらっしゃいませ」
最早この食堂に通うのが日課になっているような気がする。だって、ご飯美味しいし。
それに、神々廻さんのことも気になる。
あれから純子さんに聞いたけど、前回の仕事の代金も彼は貰わなかったらしい。
一応依頼者は僕ということになっているらしく、僕が払おうとも考えたが、それも彼に止められてしまった。「礼は考えておいてやるよ」なんて言われて。
結局、僕が助けて貰った最初の依頼の礼も出来ていないし、今度こそその話がしたくて毎日食堂に顔を出してはいるのだが……そんな時に限って彼はなかなか姿を現してはくれなかった。
「純子さん。神々廻さんが何処行ってるか、分かる?」
「そうですね……。何となく、見当はついていますが……」
「ほんと!?教えて!」
彼女が言い終わる前に僕は食ってかかる。ちょっと失礼だったかもしれないが、それくらい僕は彼に会いたいのだ。
「絶対にそことは断言出来ませんが……《魔具師》のところだと思いますよ」
「まぐし?」
そういえばこの前、馨ちゃんからそんな単語を聞いたことがある気がする。あの時は初めて聞く単語が沢山あったから、そのことについて聞く余裕は無かったけど。
「魔具師は、魔具を取り扱うことの出来る人間をそう呼びます。壊れてしまった魔具を修理することも出来るんですよ」
「あ。そういや、神々廻さんの番傘……壊れちゃってたよね」
「はい。恐らくその修理に行っているのかと思いますよ」
……成程。その可能性は高そうだ。
とにかく今はその魔具師を訪ねてみるのが一番良いだろうな。
「その、魔具師って何処にいんの?」
「この辺りにいらっしゃる魔具師は、たった一人だけですね」
「そっか!ちょっと見に行ってみたいから、教えてくれないかな!?」
「分かりました。えっと……《サメジマ屋》ってわかりますか?もし場所が分からないのなら、地図をお書きしますが……」
……サメジマ屋。中に入ったことは無いが、この近くにある道具屋だった……と思う。
中に入ったことは無いから、道具屋かどうかも知らないけど。ほら、何か雰囲気的にそんな感じのお店だった。
「いや、サメジマ屋の場所は分かってるけど……もしかしてあそこに魔具師がいるの!?」
「そもそもあそこは魔具を取り扱っているお店なんですよ」
へえ……知らなかったし、まさかこんなに近くにそんなお店があるなんて思いもしなかった。
不思議生物に関わる店って、上手く擬態して人間社会に溶け込んでいるんだなあと、思わず感心してしまう。
「ありがと、純子さん!」
僕は純子さんに礼を言って、早速そのサメジマ屋に向かうことにした。




