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ならずや黎一郎  作者: 有氏ゆず
第二話 恐怖!呪いの人形
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第二話 その後





「本当に、ありがとうございました」

『私からも御礼を申し上げます。私達ふたりを救って頂き、ありがとうございます。これからは彼女を護り、幸せに暮らしていきます』

「ちょ……!式部ってば!恥ずかしいよ……!」


そんな幸せそうな二人だったが、俺は少し気になることがあった。


「……なァ。ちょっとこの付喪神、貸してくれ」

「えっ……?」

「すぐ返すさ。二人きりで話したいことがあってなァ」

「は、はい……」


きょとんとした表情を浮かべる女を放置し、俺は付喪神……式部を連れて少し離れたところで足を止めた。




「……おい。テメェに聞きたいことがある」


俺の考えが杞憂だったらそれで良い……そう思いながら声を潜めて、しかし笑みを作って式部に話しかける。


『……何でしょうか』

「お前……本当にあの女を護ってたんだよなァ」

『当然です。結果的に彼女を怖がらせることになってしまいましたが……』


まあ、これは間違いないだろう。

俺の目から見て、コイツは間違いなくあの女にマイナスの感情は抱いていない。本気で護ろうとしていたのだ。……自分を犠牲にしてまでも。


ただ、俺の気にかかっていることはそこでは無い。

今までのこと。それらが全てコイツの……







『私の、自演だと仰りたいのですか?』

「…………!」


俺が自分の考えを口に出す前に、先に言われてしまったのだから驚いた。

しかし、動揺を見せてはいけない。俺はあくまでも余裕の笑みを崩さないまま、答えた。




「自演っていうか……お前、あの陰魔をわざと引(・)き(・)寄(・)せ(・)た(・)だろ?」




俺の言葉に、式部は表情を崩さず返事をする。


『……ええ。成世様に付き纏う陰魔を、祓って頂きたかったので。いつまた付き纏われるかという恐怖から、彼女をお救いしたかったのです』

「本当にそれだけか?」


普段ならここまで食い下がることは無い。だが、コイツの真意が俺は気になっていた。

疑惑の付喪神は暫く黙っていたが、やがて口を開いた。


『……ふふ。そうですね……』



























『陰魔に襲われた彼女を助ければ、彼女は私に感謝して、もう私のことを捨てようとは思わなくなるでしょう。そうすれば私は永遠に、成世様のお側に居ることが出来ますから……』




























……やはり、それが本音か。コイツは……!




『……とでも言えば、あなたは満足なのでしょうね』


壊れてしまっている番傘に手をかけた俺を嘲笑うかのように、付喪神は言う。


『あなたはそういう物語がお望みなのでしょうが、生憎私はそこまで考えてはおりませんでした』

「……はッ。どうだかなァ」

『ならばどうします?私を消しますか?』




……いや、消さない。消すことは出来ない。


この付喪神を消したら……間違いなくあの女は悲しむだろう。俺を恨むだろう。

例え全てがコイツの掌の上で転がされていたのだとしても、女がコイツと共にいることを望む以上、俺に祓うことは出来ないのだ。




『……悩まなくても、私達に危害を加えなければ私は何も致しません』

「……そうかよ」

『私は成世様の側で、彼女をお護りしたい。ただ、それだけなのですから……』


付喪神は丁寧にお辞儀なんかして、女の元へと戻っていった。











……してやられた。


付喪神は確かに物に魂が宿ったものだが……それが良い行いをしてくれる陽魔だとは限らない。


主へ執着し、周りに危害を加える陰魔になってしまうことだって考えられた筈だ。クソ。完全に頭から抜けてやがった。






結局あの付喪神は……式部は、陽魔だったのか陰魔だったのか。






今それを、確かめる術は無い───────……




第二話 終。





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