2-18
神々廻さんに握り潰された欠片は、徐々に消滅していき、最後には形も無くなった。
「お、終わっ……た……?」
「……あァ。仕舞いだ」
これで……ようやく終わったのだ。
安心して、思わず腰が抜けてしまう。
「……式部!」
『う……成世……様……?』
「……!し、式部……!しきぶぅ……!」
『大丈夫……大丈夫ですよ……』
式部も無事に目を覚まし、泣き崩れる成世さんを宥めている。
「よ、良かった……良かった……」
皆無事で。無傷とはいかなかったけど。
本当に怖くて、どうしていいか分からなくて、僕は涙を零してしまう。
「……ゴショー」
神々廻さんはそんな僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれた。前にしてくれたように。
「お前……よく頑張ったなァ」
「うん……皆無事で……ほんとに良かったあ……」
僕は大人気なく大泣きしてしまったけど、神々廻さんはそれを馬鹿にすることなく、笑うこともなく、「頑張ったな」と称賛してくれた。
そのせいで、余計に涙が止まらなくなってしまったのだけれど。……何とか、止めよう。うん。
「……純子!無事か!」
「……!良さん……!」
そんな中、一人の男性が部屋へと飛び込んで来た。……誰だろう。僕は会ったことがない人だった。
「もう……!厨房に隠れていてくださいと言っておいたのに……!」
「し、仕方ないだろ!妻を一人危険な場所に置いて行けるか……!」
「それこそ仕方ありません。だって、あなたは視えない人なのですから……」
「うっ……!」
何となく今の会話で二人の関係が分かった。良と呼ばれた男性は恐らく、純子さんの旦那さんだろう。
……しかし、二人とも既婚者とは思えない程若々しい見た目をしているな。新婚だろうか。まあ、今はそれはどうでもいいんだけど。
「悪い。純子に怪我させちまった」
神々廻さんは良さんの元へと歩み寄ると、膝をついて謝罪する。
というか、神々廻さんって謝れるんだ!?……と、僕はどうでもいいところに注目してしまった。
「いや、寧ろ純子を守ってくれたことに礼を言うよ。……あの時も、俺達を守ってくれたしな。またタダ飯食わせてやるから、来いよ」
「……あァ。世話になる」
……あの時?
神々廻さんは、過去にも純子さん達を助けたことがあったのだろうか。
「……あの!将吾くん!」
気になって長考しそうになったが、僕を呼ぶ成世さんの声で僕は現実に引き戻される。
「あっ……成世さん」
「その、えっと、助けてくれて、ありがとう……!」
……違う。
助けたのは僕では無く、神々廻さんや純子さん、そして式部だ。
僕は何も出来なかった。ただ、指をくわえて見ていることしか出来なかったのだ。
「成世さんを助けてくれたのは神々廻さんだから。僕は何もしてない」
「違うよ。だって、きみがぼくを背負ってここに来てくれたから、ぼくは死なずに済んだんだよ?」
『そうです。成世様を救って下さり、ありがとうございました』
「あ……」
成世さんと式部の言葉に、先程頑張って止めたはずの涙が、また溢れてきてしまった。
そんな僕を見て、今度こそ神々廻さんはククッと笑うのであった……。
第三話へ続く……




