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ならずや黎一郎  作者: 有氏ゆず
第二話 恐怖!呪いの人形
35/51

2-18





神々廻さんに握り潰された欠片は、徐々に消滅していき、最後には形も無くなった。





「お、終わっ……た……?」

「……あァ。仕舞いだ」


これで……ようやく終わったのだ。

安心して、思わず腰が抜けてしまう。




「……式部!」

『う……成世……様……?』

「……!し、式部……!しきぶぅ……!」

『大丈夫……大丈夫ですよ……』


式部も無事に目を覚まし、泣き崩れる成世さんを宥めている。


「よ、良かった……良かった……」


皆無事で。無傷とはいかなかったけど。

本当に怖くて、どうしていいか分からなくて、僕は涙を零してしまう。




「……ゴショー」


神々廻さんはそんな僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれた。前にしてくれたように。


「お前……よく頑張ったなァ」

「うん……皆無事で……ほんとに良かったあ……」


僕は大人気なく大泣きしてしまったけど、神々廻さんはそれを馬鹿にすることなく、笑うこともなく、「頑張ったな」と称賛してくれた。

そのせいで、余計に涙が止まらなくなってしまったのだけれど。……何とか、止めよう。うん。









「……純子!無事か!」

「……!良(りょう)さん……!」


そんな中、一人の男性が部屋へと飛び込んで来た。……誰だろう。僕は会ったことがない人だった。


「もう……!厨房に隠れていてくださいと言っておいたのに……!」

「し、仕方ないだろ!妻を一人危険な場所に置いて行けるか……!」

「それこそ仕方ありません。だって、あなたは視えない人なのですから……」

「うっ……!」


何となく今の会話で二人の関係が分かった。良と呼ばれた男性は恐らく、純子さんの旦那さんだろう。

……しかし、二人とも既婚者とは思えない程若々しい見た目をしているな。新婚だろうか。まあ、今はそれはどうでもいいんだけど。




「悪い。純子に怪我させちまった」


神々廻さんは良さんの元へと歩み寄ると、膝をついて謝罪する。

というか、神々廻さんって謝れるんだ!?……と、僕はどうでもいいところに注目してしまった。


「いや、寧ろ純子を守ってくれたことに礼を言うよ。……あの時も、俺達を守ってくれたしな。またタダ飯食わせてやるから、来いよ」

「……あァ。世話になる」




……あの時?


神々廻さんは、過去にも純子さん達を助けたことがあったのだろうか。




















「……あの!将吾くん!」


気になって長考しそうになったが、僕を呼ぶ成世さんの声で僕は現実に引き戻される。


「あっ……成世さん」

「その、えっと、助けてくれて、ありがとう……!」




……違う。


助けたのは僕では無く、神々廻さんや純子さん、そして式部だ。

僕は何も出来なかった。ただ、指をくわえて見ていることしか出来なかったのだ。




「成世さんを助けてくれたのは神々廻さんだから。僕は何もしてない」

「違うよ。だって、きみがぼくを背負ってここに来てくれたから、ぼくは死なずに済んだんだよ?」

『そうです。成世様を救って下さり、ありがとうございました』

「あ……」


成世さんと式部の言葉に、先程頑張って止めたはずの涙が、また溢れてきてしまった。






そんな僕を見て、今度こそ神々廻さんはククッと笑うのであった……。




第三話へ続く……




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