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「…………!」
突然響いた声に僕は後ろを振り返る。
するとそこには先程神々廻さんに押し売りをしていた女性(?)がいつの間にか立っていたのだ。扇子をパタパタさせながら。
「はろろーん。物売りのつづるちゃんだよぅ」
「鶴の字、テメェさっきは無理矢理押し付けやがって……!」
「はいはい旦那ストップ。今はそのことで揉めてる場合じゃないだろ?時間、無いんだよねェ?」
目の前に扇子を突き付けられ、思わず黙ってしまう神々廻さん。物売りの女性(?)はにっこりと笑って続けた。
「今この瞬間、めちゃくちゃ役に立つ道具を売りに来てあげたんだよ」
「……あァ?何だそれは」
神々廻さんの問いに待ってましたと言わんばかりに物売りは背負っていた風呂敷を広げる。そして何か液体の入った小瓶を持ち上げ……
「てってれー!陽魔に入り込んだ陰魔を吐き出させる薬ー!」
……声高々と叫んだ。
しかし、ネーミングがあまりにも安直過ぎるその道具は、今の僕達が一番欲していた物だった。
「この小瓶の中の液体を陰魔に入り込まれた陽魔に飲ませるとアラ不思議!みるみるうちに陰魔が吐き出されちゃう薬なのさ!」
「な、何だそのご都合主義な道具はァ!?」
流石の神々廻さんも動揺している。
当たり前だ。そんな道具、まさに今しか使わないようなシロモノじゃないか。
「ふふ。ご都合主義結構!どうする?買わないのかい?」
「……寄越せ!」
言うなり神々廻さんは物売りから小瓶を取り上げようとするが、物売りはそれをひらりとかわす。
「おい、巫山戯てる場合じゃ……!」
「お代。前のも払って貰ってないからねェ」
「あァ!?あの粉はテメェが勝手に押し付けてきただけだろうが!」
「でも、使ったんだろ?」
確かに使った。……僕が。
それに気づいた神々廻さんが鋭い眼光で僕を睨みつける。こ、怖すぎる!
「……チッ、幾らだ」
「旦那が一文無しなのは私、知ってるよ。そうだね……今度、身体で返して貰おうかねェ」
「……はあ?」
物売りの言葉に今度は馨ちゃんが反応する。というか馨ちゃん、そんなドスの効いた声も出せるんだ!?
ああ……!事態がどんどんカオスになっていく……!
「ちょ、その!時間無いんだよね!?とにかくその薬頂戴!後のことは何とかするから!……神々廻さんが!」
これ以上事態がカオス化しないように僕が間に割って入る。それに、式部もこれ以上もたなそうだ。……成世さんも泣きそうだし。
「おいゴショー!……チッ!何でもやってやるから寄越しやがれ!」
「はい、毎度♪」
神々廻さんは物売りの手から小瓶を引ったくり、その勢いで式部の元へと向かう。
成世さんはそんな彼に気づき、式部さんを守ろうと立ち塞がった。
「だ、だめ……!式部を殺さないで……!」
「この薬でそいつを助けてやれる」
「……えっ?」
きょとんとしている成世さんに、神々廻さんは小瓶を手渡した。
「早く飲ませてやれ。時間がねェ」
「……!う、うん……!」




