2-13
「……黎一郎」
そして彼女は瞳を開け、神々廻さんの袖を引っ張る。どうやら読み終わったらしい。
「あァ。どうだった」
「あの陰魔……あの娘のストーカーだよ。あの娘のバイト先で優しくして貰って自分に気があると勘違いしたみたい。でも振り向いて貰えないどころか警察に相談されて接近禁止命令を受けて……それなら幽霊になって永遠に側にいようとして自殺したの」
す、ストーカー!?しかもそばにいる為に自殺!?
怖すぎる。どう考えても正気じゃない。こんなのに付き纏われてさぞ成世さんは怖かったに違いない。
そりゃ式部だって成世さんから離れられないに決まってる。
「……成程なァ。ちょっと優しくされただけで勘違いしちまったと」
『チガウ……!ボクタチ、アイシアッテイタ……!!』
「愛し合ってた、だァ?本気で言ってやがるなら、通報されてんのに随分とおめでたい頭だなァ」
『ダマレ!ボクノアイノジャマヲスルナァ!!』
陰魔はこれ以上無いくらい耳障りで不快な声で叫ぶ。しかし、神々廻さんは怯まなかった。
「テメェが黙りなァ!!テメェの愛は、単なる独り善がりでしかねェ。そんなモン……受け取られる訳ねェだろうが!!」
神々廻さんは陰魔に向かって怒鳴りつけ、そして番傘を突き刺す。……陰魔の身体が歪んだ。
「とっとと地獄に逝って、罪を流して来なァ」
番傘が陰魔の身体から引き抜かれると、陰魔の身体は徐々に消えていく。……やった!仕留めたんだ……!
「神々廻さ……!」
僕は嬉しくなって、思わず彼に駆け寄った。
……その瞬間だった。
『アァ……!セメテ、イチブダケデモ……カノジョノナカニ!!』
まだ成仏しきっていなかった陰魔が最後の一撃にと自らの腕を切断し、その腕が成世さんに向かっていく。
突然のことで神々廻さんは反応出来ず、陰魔の行動を許してしまう。
「……しまった!」
僕は神々廻さんに駆け寄って、成世さんから離れてしまっている。
ちゃんと成仏するのを見届けるまで、彼女から離れてはいけなかったのに……!
「……チッ!」
神々廻さんはすぐに成世さんの元へと急ぐ。だが、間に合わない!
駄目だ!腕が、成世さんへ──────
『……させません』
その時、先程まで沈黙を貫いていた式部が立ち上がり、成世さんの前に立ち塞がる。
そのまま陰魔の腕は、式部の中へと入り込んでしまう。
『ウ……ウグ……チクショウ……』
恨み言を吐き、そして陰魔は成仏した。
「あ、あなた……どうして……!」
その様子を間近で見ていた成世さんは声を震わせて尋ねる。その問いに、式部は笑って答えた。
『……初めまして。ようやく、私の姿を視てくれましたね。私は式部。あなたの人形です』




