2-8
「ひぃぃっ!?」
彼女は地面に降りてきたかと思うと、ぶるぶると痙攣しながら不気味に笑いだしたのだ。
思わず僕は情けない声を上げ、後退る。
「……!遅かった……!彼女は《入られて》しまいました……!」
「は、はいられた!?」
「陰魔と同化してしまったのです……。こうなったら私にはもう、どうすることも……。……くっ!」
成世さん……いや、成世さんに入った陰魔は純子さんに襲い掛かる。
純子さんは防ぐばかりで抵抗出来ない。
「ど、どうして抵抗出来ないの!?」
「無理なんです!魔具と違って奇具は陰魔だけを狙うことは出来ません!」
つまり純子さんが戦ってしまうと、陰魔に入られてしまっている成世さんの身体にもダメージが入ってしまうということか。……卑怯な!
「そんな!それじゃ、完全に詰みじゃないか!」
「ええ。私に出来ることは……ほぼ無くなりました」
「……!くそ!どうしたら良いんだよ……!」
何も出来ない自分が憎い。
自分にも陰魔が視えていれば……いや、視えたところで僕には対抗する術すらなかった。
僕は……無力だ。
「……お願いします、将吾さん」
彼女は陰魔と対峙しながら言う。
「黎一郎さんを、連れて来てください。こうなったら、彼にしか……救えません」
「で、でも純子さんは!?もう出来ること、無いんだろ!?」
「……ほぼ、ありませんね。ですが、囮になってあなたを逃がすことくらいは出来ます……!」
「ふざけるな!女の人を一人で置いて行ける訳無いだろ!……そうだ!旦那さんは!?」
「主人は……視えない人ですから。巻き込む訳にはいかないんです」
「そんな……!」
「……早く行ってください!長くは持ちません!」
……彼女の木刀を握る手は、小さく震えていた。
当たり前だ。対抗する術が無いのに陰魔に一人立ち向かっているのだ。怖くない訳が無い。
だが僕がここに残ったところで彼女の役に立てないことも事実だった。ただ、全滅するだけだ。
だから今僕に出来ることは……一刻も早く神々廻さんをここに連れて来ることだけだった。
「……分かった!すぐに戻るから!絶対耐えてよ!!」
そう言って、僕は部屋を飛び出す。
迷っている暇なんかない!時間が無いんだ!
すぐに、神々廻さんの元へ……!




