エピソード:15『襲撃と疑念』
こんにちは、ライダー超信者です。更新が遅れて申し訳ないです……
水源を占領していた行動隊長を撃破した宝笑達。
ラメールに連れられアリディアの女王に謁見することになるが、周囲からは敵意の目を向けられてしまう。
女王の取り成しもあってどうにか客として迎えられはしたものの、敵意剥き出しな騎士団長に目をつけられ…………
「━━━━以上、ご報告申し上げます」
「大変ご苦労様でした。まさかそんなことになっていたとは…………つくづく油断ならぬ相手ですね」
傲魔獣を倒して戻ってきた俺達はラメールさんと共にアリディア女王様に謁見していた。
当然ながら本来俺達がお会いする予定なんて無かったのだが、ラメールさんから『共に魔王軍を退けた協力者にして功労者』として紹介したいと言われ(少なくとも俺のことは遅かれ早かれ紹介する必要があっただろうということもあり)、ラメールさんの報告に同席させてもらうことになったのだった。
「女王陛下、彼らが」
「旅の方々、本当にありがとうございました。
あなた方のおかげで街も国もひとまず危機を脱することが出来ました。なんとお礼を言ったらいいのか……」
アリディアを治める〝バシャーン女王〟は深々と頭を下げる。
紫がかった紺色のスーパーロングヘアーに中世貴族を彷彿とさせる青いドレスを纏った女王様はまだ幼さの残る子供であり、恐らくフラムちゃんよりも少し下。しかしその言葉遣いや所作には大人顔負けの高貴さと上品さがあり、落ち着いた物腰には幼い印象は感じられない。
「何かお望みのものはございますか?私に用意できるものであれば何なりと仰ってください」
「…………みんな何かある?」
「女王陛下に用意していただくほどのもの……私はこれといって……」
「私も特に……」
「右に同じっ……です」
「…………では我々、特に城戸宝笑が、この国に滞在する許可を戴けないでしょうか」
フィーニアスさんの言葉に女王様は首を傾げる。俺も一瞬なんのことかと思ったが、直ぐに発言の意味を理解した。ラメールさんも察したようで女王様に説明する。
「女王陛下、以前お話しした魔修羅の件は覚えていらっしゃいますでしょうか」
「はい、ブレイズ様から戴いた情報ですね…………あら?そういえばホーショーって確か……」
「はい。宝笑さんが、そのお話しに出てきた魔修羅です」
瞬間、周りの近衛兵達が一斉に剣を引き抜き、一気に臨戦態勢となる。
「いずれバレるとはいえまぁこうなるよね……」
「彼に悪意や敵意がないことは既に私とブレイズが確認しています。彼らがこの国と人々のために尽力してくれたこともこの目で見ています。
何より、彼らはノバリス最高位の勲章をレッドバロン王から直接授与されたとブレイズから聞いております、信頼できる方達であることに間違いはないかと」
ラメールさんの言葉に少し思案した後に女王様は口を開く。
「わかりました。それがラメールさんとあなた方の望みならば、許可しましょう」
「女王陛下お待ちください!!魔修羅をこの国に野放しにするおつもりですか!?」
「魔修羅が率いる一団など信用できるわけがありません!民の不安と恐怖を取り除くためにも、今ここで始末するべきです!!」
「皆構えろ!ここで魔修羅を討つ!!」
「お止めなさいっ!!!」
今にも襲い掛かってきそうな近衛兵達をなんとか説得しようとした時、女王様が轟くように一喝した。
近衛兵達はもちろん、俺達もビクッと体が跳ねる。
「大恩ある方々になんて無礼を…………下がりなさい!」
「しかし陛下!!奴らは魔修羅とその一味!ここで討たねば今後どんな災いをもたらすか!」
「証拠としているノバリス最高位の勲章とやらも本物かどうか怪しい!大方偽物か本来の持ち主から奪った物でしょう、信じるに値しません!!」
「ここで魔修羅を倒せば我が国と陛下の地位は揺るがないものとなります!この好機を逃す手はありません!」
近衛兵達は完全に血気に逸っている。最早俺達が何を言ったところで無駄そうだ。かといって武力制圧なんてしようものなら最悪一国を敵に回すことになりかねない。当然逃げてもダメ。
正直かなりマズい。
「これ、かなり危ないんじゃ」
「仮にも女王陛下を守る近衛兵がこれって大丈夫なんですか……!」
「なんとかみんなは見逃してもらえないかな……」
「お止めなさい、と言いましたよ。
武器を納めて━━下がりなさい」
女王様の底冷えするような声に近衛兵達の動きがピタリと止まり、言われた通りにゆっくりと武器を仕舞った。
その凄みと圧はとても子供のそれとは思えず、俺も思わず後退りしてしまう。
「…………大変失礼致しました。ご無礼をお許しください」
「は、はい……」
「もしよろしければ、しばらくこの城に泊まっていってはいかがでしょうか?客室は人数分ご用意出来ますし、お礼とお詫びも兼ねておもてなしもさせていただきます」
「陛下何を……!!」
「魔修羅を城に!?国の心臓たるアリディア城にこのようなものを入れるなど……!!」
「何か良からぬことを企んでいるかも分かりません!こんな何をするか分からない連中を……」
近衛兵達が次々反論しだすが、女王様は動じずに返す。
「城に泊まっていただければこちらにも好都合でしょう?直ぐ近くで魔修羅を監視出来るんですから」
「いやしかし……!」
「宝笑さんが伝説通りの魔修羅なら、一国を攻め滅ぼすことなど赤子の手を捻るより容易いでしょう。わざわざノバリスやこの国で人のために動き、信頼を勝ち取るような回りくどい真似をする必要はありません。
何かしらの目的でこの城に潜り込んだのなら、既にその目的は達成されている。私を始末することも、拉致して聞きたいことを聞き出すことも出来ます」
「それは……そうかもしれませんが……」
「そうしないということは悪意はないと考えていいでしょう。あの聡明なレッドバロン王とブレイズさんから認められた方です、邪心を隠して騙し通せるお二人ではありません」
女王様の言葉に近衛兵達は何も言い返せなくなる。
「……何度も見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありません。ただ、兵達も国や私を案じてのことなのです。どうかお許しください」
「いえ、とんでもございません」
「それではお部屋を用意させていただきますので、少々お待ちください」
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「ふっかふかだぁ…………ほっほっほ」
ふかふかふわふわのベッドに体を沈める。優しく包み込まれるような極上の気持ちが良さがとても心地よい。
「宝笑、疲れたなら少し眠るといいわ。何かあったら起こすから」
「そうしようかなぁ、取ってた宿も女王様にキャンセルしてもらっちゃったし……なんか色々と申し訳ないなぁ」
「でも私達はそれだけのことをしたわ。これくらいされても罰は当たらないんじゃないかしら」
当たり前のように同室を希望したフィーニアスさんは隣のベッドに腰かけている。その姿はさながら女神の目覚めといったところでものすごく絵になっていた。美人ってすごい。
「…………ねぇフィーニアスさん。あのサナトスプサリスって奴、魔王軍の最高幹部って言ってたよね。あいつが魔王を除いたら一番強いってこと?」
地下水源からずっと気になっていたことを聞く。
あのキンキラキン……サナトスプサリスがとんでもなくヤバい奴なのは素人である俺にも一目で分かった。もし本当に魔王軍最強だったとしても驚かないだろう。
「半分正解ね。魔王軍には魔王直属の十二人の最高幹部、デルザーゾディアックがいる。あのサナトスプサリスは恐らくその内の一人ね」
「デルザー、ゾディアック……あいつ、先代の聖剣士を殺したってラメールさんが…………」
「五年前に起きた魔王軍による超大規模一斉蜂起、通称審判の日に先代の聖剣士達は全員殉職している。その犯人がヤツ……ということのようね」
審判の日についてフィーニアスさんから説明を受ける。この世界で起きた大戦争、話を聞いた限りたったの五年でここまで復興出来たのが不思議なくらいのとてつもない規模の戦争であり、魔王軍もつい最近まで活動を大幅に縮小せざるを得ない程の大ダメージを受けていたという。
「とんでもねぇ奴じゃん…………なんでそんな奴があそこに……」
「私もまさかあそこまでの大物が出てくるとは思わなかったわ。今はまだどう足掻いても勝てる相手ではない、遭遇だけで済んだのは本当に運が良かった」
対峙した時に感じた圧倒的な力とその恐怖に思わず身震いすると不意にドアがノックされた。出るとそこには身なりのいい老人と、鎧を身に纏った女性が立っていた。
(この人達、さっき女王様と謁見した時にいた……)
女性も老人もさっきの謁見の場にいた人間だ。
女性は女王様の近衛兵、しかも他の近衛兵より立派な鎧を着ていることや一番に武器を抜いて周りを先導していたことから恐らく隊長に相当する人物だろう。
老人は政治家か貴族、あるいはその両方といったところか。
「……陛下がお呼びだ。来てもらおうか」
「女王様が?」
「用件は何かしら」
「私は呼んできてほしいと言われただけだ、仮に知っていたとしてもお前らのような輩には話さんがな。質問の許可もしていない。
今ここで首を刎ねんだけありがたく思えよ、本来ならば貴様らなど即刻極刑だ。陛下とラメール殿に感謝しろ。
…………もっとも、私も他の者も貴様らなんぞ毛ほども信用していない。変な動きを見せれば直ぐに叩き斬ってやるから覚悟しておけ」
敵意を隠そうともしない物言いにどう返したものかと悩んだ時、フィーニアスさんがくすりと笑った。
「あら、女王陛下を護る誇り高き近衛兵、その団長ともあろうものがこの程度の人間だとは思わなかったわ」
「……あぁ?」
「王立騎士団団長シュバリエラ・プロテジェオ。
民と国のために戦う勇猛果敢な騎士団長と聞いていたのだけれど……どうやら買い被りだったようね。
こんな横暴で礼儀も碌に知らない、山賊崩れのような人間だったなんて……」
挑発するように笑うフィーニアスさんに女性……騎士団長は怒りを抑えきれない様子で背中の槍に手をかける。
「今……頭を地面に擦りつけ、誠心誠意詫びれば許してやるが……?」
「自分は好き勝手言ったくせに相手に何か言われたら謝罪を求めるなんて随分都合のいいことね。この程度の人間が上に立っていると部下はさぞ苦労するでしょう、可哀想だわ」
「いいだろう……そんなに死にたければ、今すぐ殺してやるっ……!!」
騎士団長は武器を抜こうとするが、老人がそれを制する。
「シュバリエラ殿まぁ落ち着きなさいな。ここで争ったところで何にもならないからね、まずは陛下の所にまで案内しないと」
「しかし大臣……!」
騎士団長と一緒に来た老人はどうやら政治家で合っていたらしい。苛烈な騎士団長とは正反対の穏やかな口調で団長を宥める。
「すまないねぇ青年、一緒に来てもらえるかい?そんなに時間は取らせないよ」
「は、はい…………フィーニアスさん、ちょっと行ってくるね」
「……わかった。気をつけるのよ」
部屋を出ると二人の後ろをついていく。
「あの小娘、今度は潰す……!」
「悪いねぇほんと、そんなに時間は取らせないから」
「女王様は僕に何を……?」
「いや~~私達も聞かされてないからねぇ……」
騎士団長は完全無視、こちらを見ることすらなく歩いていく。気まずさから窓の外を見るとアリディアの街並みが広がっており、特に遠くに見える海は大きな宝石のようにキラキラと輝いていて息が漏れてしまうほど美しい。
「絶景だなぁ…………」
そして次の瞬間、振り向き様に繰り出された槍の一撃をギリギリで避けた。鼻に赤い横一文字が走る。
「ちっ、素人くさい割りには大したものだな。不意を突いたつもりだったんだが」
「惜しいねぇシュバリエラさん」
「…………こう来たか……」
俺を連れ出したのは人目の少ない場所で始末するため、女王様が呼んでいるというの連れ出すための嘘だったと察する。
確かに兵達はかなり殺気立っていたし女王様からの説得にも納得していなかったが、まさか城内で襲われるとは…………
「悪いねぇこれもこの国の平和のためさ。ただでさえ魔王軍の脅威があるのに更に魔修羅の相手もなんてハッキリ言って無理だ。だから暴れられる前、人の姿でいる内にさっさと始末したい。
恨むな、とは言わないが分かるだろう?」
「大臣、ここで死ぬ者に説明する必要はないでしょう」
「待ってください、僕にも仲間達にも敵意はありません。あなた方と争うつもりもないんです」
「口だけなら何とでも言える。貴様らの言葉なんぞ誰が信じるか」
向こうの言い分も分からなくはない、だがこのまま俺が殺されれば間違いなくみんなにも矛先が向く。そうさせないためにもここでやられるわけにはいかない。
槍を構えて突進してきた騎士団長に対抗するため仕方なくバジュラブレードを取り出そうとした時、いきなり後ろから火球が飛んできた。
騎士団長は驚きつつも槍で火球をかき消し、後ろに跳ぶ。
「どうせこんなことだろうと思ったわ。跡をつけて正解ね」
「フィーニアスさん!」
「クソッ!邪魔が入ったか……!」
「なぁに数が同じになっただけさ、私とシュバリエラ殿ならなんとでもなるよ」
「あら、老人と頭の弱そうな女騎士が組んだ程度で勝てると思われるなんて安く見られたものね。
まぁ……そっちの老人は負けた時の言い訳になるかしら」
「貴様大臣まで侮辱するか……!!あばずれがブッ殺してやるっ!」
「余裕のないこと、嫌ね」
フィーニアスさんの挑発に騎士団長は怒り心頭、今にも飛びかかって殺しに来そうな勢いだ。
そうして睨み合いになった時、突然どこからともなくジャマーが現れた。
「「ジャマンガー!」」
「ジャマー!?なんでっ……!」
「何故だ、何故魔王軍が城内にいる!?
━━━━貴様か魔修羅ぁ!!」
「違います!俺達は関係ありません!」
「彼が攻撃されている時点で違うに決まっているでしょうに。その見た目だけはいい頭は飾りかしら」
「っっ…………!!」
「まずはこいつらを倒そう!話はそれからだ!」
俺はバジュラブレードを振るい、他の三人もそれぞれの武器や魔法でジャマーを蹴散らす。
「「ジャマンガ~~!!」」
ジャマーは直ぐに片付く。しかし、何故ジャマーが城内にいたのかという謎は解けないままだ。
「…………貴様ら全員来てもらうぞ、逆らうなら殺す」
アリディアに来てまだ1日、既に先行きが不安になるのであった。
閲覧ありがとうございました。
次回は年内中に上げられるよう頑張ります……




