伝説の剣
南の共和国は山が多い。そんな土地でも山道で馬車が通れるように整備されている。
そんな夜の人気のない山道をダレスとカイトは歩いていた。
「本当に良かったのか?トドメをささなくて。」
カイトの隣を歩くダレスがそう尋ねる。
「何もできない人間を一方的に殺すことはしたくない。」
それを聞いたダレスはそうかとだけ呟いて黙ってしまった。
「なぁ剣は教えてくれるんだよな?」
そう問われてダレスは一度遠くに視線をやり深く息を吐いてゆっくりと答える。
「勿論じゃ。」
その顔はまるで自ら地獄に行くような覚悟を持った顔だった。
「ただし、わしの安全は頼んだぞ。お主のせいで厄介な女に目をつけられたからな。」
「厄介な女?」
「あのホログラム越しの男装の女じゃ。あの気の強そうな。あやつはこの国の軍事のトップじゃ。男勝りな野心家で執念深い。」
それを聞いてるのか聞いてないのかカイトは眠そうに欠伸をした。
「ふ〜ん。まぁ任せろ。俺の目的のためならそのくらいする。」
整備された山道にある定間隔の灯では道全体を照らすのに不十分だった。
「そういえばお主がなぜ剣を学びたいのか聞いてなかったの。」
カイトはそれを聞いて少し黙る。
自分の大切な目的というのは人に言いたくないと感じたからだ。
人に言ってしまうとなんだかその目的の価値が下がってしまう気がして。
しかし、これは言わなければなるまい。そう決心したカイトは話し出す。
「自分の手で世界最強の戦闘術を生み出したいんだ。まだ誰も知らない戦い方。それには剣が必要だと判断した。」
ダレスは少し驚く。それはダレスとカイトの目的がとてもよく似ていたからだ。
ダレスは世界で一番大きな流派を開きたい。カイトは世界で一番強い戦闘スタイルを作りたい。
ダレスは確信した。カイトとなら夢の続きが見れると。
「良い目的じゃ。必ず達成するぞ。」
2人は街を目指して夜の山道を歩いたのであった。
ここは豪華絢爛な王の広間。広い空間の端には真ん中を空けて正装した男達がびっしりと並んでいた。西の王国の高官達だ。
そんな人だかりの中に背の高い男と低い男の青い髪が特徴的な二人組がいた。
「ついに始まりましたね、兄さん。」
背の高い男が低い男に言う。
「いよいよだな。」
中央のレッドカーペットの上で若い20代くらいの新王が前王から剣を受け取っている。その剣はまるで透き通るかのような美しい刀身をしていた。
「伝説の剣だ。」
「なんで剣なんでしょうね。」
「知らん、建国以来の伝統だ。」
「伝統とかいいからさっさと終わって欲しいな。ずっと立ってるの疲れたし。」
そんなことをぼやく背の高い弟を兄は無視する。
「伝説の剣ってことは強いんですか?兄さん。」
「ああ、"剣の中では"最強だ。紙のように軽く世界一硬くて壊れないらしい。まぁ近づかないと攻撃が当てられない時点で魔術よりも弱いんだがな。」
「へぇー、でもやっぱりかっこいいから欲しいな。」
「普段は宝物庫よりも厳重なところにあるけどな。」
「じゃあ盗まれたことはないんですか?兄さん。」
その言葉に兄は不敵に笑う。
「ああ、今までに盗まれたことは一度もない。だから俺たちが最初ってことだ。」
そう言って兄が指を鳴らした瞬間、王の広間の灯が一斉に消えた。
「「何だ!?」」
あちこちでザワザワと不安が広がる中2人の男が動き出した。
「さあて、やりますか!」




