対峙
首都の大通りは横幅100mはある巨大な通りだった。
そんな大通りの横をまるでこの国全員が集まったのではないかと思うほどの大量の人々が埋め尽くし鳴り止まない拍手で溢れていた。
そんな群衆の中にかつての私もいた。
この騒ぎはミハエル流魔術学会の200周年記念のパレードが行われるのだ。
ミハエル流魔術学会とはちょうど200年前に大賢者ミハエルが興した流派で国内最大派閥となっている。
そして当時の頭首ハザンはこの共和国で最強の魔術師だった。
そんな共和国の精鋭達を一目見ようと若い頃の私はわざわざこのパレードのために地方都市から来ていたのだった。
不意に端の方から大歓声が起こった。
ついに来たかと周囲の空気が一気に高まるのを感じた。
そして次の瞬間私は大歓声の渦に巻き込まれた。
現れたのは真っ白な馬に乗った30代の偉丈夫だった。
背後に弟子という名のこの国の頂点たちを従えていた。
男は煌びやかなローブを纏って堂々としていた。
その時私は思ったのだった。
ああ私はこんなふうになるべきだ。多くの人々から尊敬される人にならなければならないと思ったのだった。
私は子供の頃から何事も要領がよく何事もうまくできた。
そんな私の頭の奥底には人と同じではならない、他の人より自分は上の存在でなければならないという考えが芽生えていた。
それからというもの私は1人修行に打ち込んだ。
学校にいても友人との無駄な関わりを捨てて必死に修行した。錬金術師でも人の上に立てるのだと。
しかし、気づいた。ああ、私には才能がないのだと。
でも、自分の魔術学会を開くという大志を諦めきれなかった。
そこで私は弟子を取ることにした。錬金術師には誰も見向きもしない。
だから優れた才能があるやつでもその辺に転がっているものだ。
才能ある弟子を鍛え上げて武功を立てさせその評判で一大流派を築きあげる。
丁度才能あるものは見つけるこができた。名をイヴァンという。
コイツに私の築き上げたものを全て叩き込んむことにした。
私の狙い通りイヴァンはめきめきと才を伸ばし共和国No.1の魔術大学を主席で卒業するに至った。こんな名誉なことはない。
しかし、錬金術師へは戦地で仕事を割り振られることがなく武功を上げれなかった。それだけでなく、イヴァンの素行も悪かった。部下へのパワハラやいびりは日常茶飯事だった。
そしてついに貴族の子供に怪我を負わせてしまった。
私はその責任を取り監獄送りにされイヴァンは戦地から監獄の看守長という出世コースから外された役職に飛ばされた。
囚人が師で看守が弟子、これも軍の上の嫌がらせだろう。錬金術師がでしゃばるなと。
そして私は悟ったのだった。
最初から無理だったのだと、普通で終わることを許容できないことで人生を損した。
もう残りの余生は夢も志も無縁な緩やかな生活を送りたい。
「おい爺さん。もうすぐ外に出るぞ。」
そんなことを考えていたら順調に出口に辿りついた。後は久しぶりの外の世界に出て敷地の外へ脱出するだけだ。
扉が開く。外だ。5年ぶりの太陽は沈みかけの夕陽だった。
空気が美味しい。
しかし、感傷に浸っている暇はない。
安全なところまで行ったらこの男も撒かないといけない。
そう心に緊張感を持たせる。
しかしおかしい。外に出てからというのも1人の看守とも鉢合わせしない。
そんなことを考えていると不意に目の前を歩くカイトが立ち止まった。
「何者だお前。」
カイトの視線の先には長く白い髪を美しく流す女が立っていた。不気味な笑みを浮かべている。
「そっちから来てくれるなんて好都合ね。」
見慣れない女が喋る。
「どうやらタダじゃ通してくれなさそうだな。丁度いい。ついさっき身につけた新戦法の実験台になってもらうぜ。」




