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笑わないキミの笑顔を探そう  作者: 無色花火
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79話 いざ遊ばん

ワクチン接種で2日ほどぶっ倒れてたため、少し遅くなりました。

 瀬良家に来て2日目の朝。昨日は昼・夜と朝食のラインナップだったが、今朝は昨夜のラインナップからパンがトーストに変わり、スクランブルエッグが目玉焼きになったものだった。さすがに麻婆豆腐はなかったが。要するに普通に朝食だった。

 ちなみに今日は日曜だが、雅生さんは平日が休みのため普通に出勤、一子さんは休日出勤ということでふたりとも8時には家を出た。


「と、ゆーことでっ。やってきましたゲームセンター!」


 ……と、いうことらしい。

 現在俺たちは自転車で10分ほど(俺は雅生さんの趣味用ロードバイクを借りた)のゲームセンター――正確にはアミューズメント施設に来ている。まぁ、クレーンゲームとかアーケードゲームとかのコーナもあるらしいのであながち間違いでもないが。


「つってもそこまで大きくもないから、バスケやらスケートやら、体動かす系のはそんなにないんだけどな」

「まぁあったとしても、すぐに体力尽きるだろうからやらないけど」


 何度も言うが俺は運動不足だ。現役バリバリ運動部と動きまわるスポーツなんてやるはずがない。


「ま、何するかは入ってから決めりゃいいさ。ほいれっつごー」

「わかったから叩くなっ」


 ビシバシと背中に打撃を受けながら、何気に初めてのアミューズメント施設に足を踏み入れた。




 ◆◇◆◇




 ひとつ目。

 まず最初は、奇跡的に1レーンだけ空きがあったボウリングだ。一応全部で3ゲームすることになっている。


(ボウリングなんて、いつ以来だ……?)


 俺がまだ今のような「友達」の認識を持っていなかった頃に、小学校の子ども会? だかで行ったくらいじゃないだろうか。しかもその時はバンパーアリでやってた記憶があるから、ガター連発しそうで怖いんだが。


「瀬良は、ボウリング得意なのか?」

「んにゃ別に。10回もやったことないな。今日だって1年ぶりくらいだし」


 なんだ。じゃあそんなに差があるわけでもないし、そこまで気負う必要もないか。気楽にやろう。


「ほいじゃあ取り敢えず一投目~~……よいっと」


 ……なんて思ってた時期が俺にもありました……

 フォームとすら言えない姿勢から放たれたボールは、そのまま立ち並ぶ全てのピンを撥ね退けてレーンの奥へと吸い込まれていった。

 ふぅーーーーと、大きく息を吐き目を閉じる。


「お前を信じた俺がバカだったよ……」

「いや、ユウ。ひとつ弁明させてくれ……」

「……なんだよぅ」


 俺は背もたれにドカッともたれかかる。


「今のはオレもマジでビビってる」


 上から下りてきたスイーパーに一掃されるピンを眺めながら遠い目をしている瀬良。

 声のトーンからして、どうやらガチっぽいなコレ。


「まぁ……お前が変なところで要領いいのは今更か……」

「おい『変に』ってなんだよ『変に』って」


 別におかしなことは言っていない。このナリで俺よりずっと頭いいし、ノリでバカ辛い麻婆豆腐を作るくせにちゃんと美味いし。


「そこ反応しなくていいから早く二投目投げろよ」


 俺は話を切り上げ、既に並べ直されているピンを指差す。渋々といった顔で瀬良は言及を諦め、戻ってきていたボールを持ち、構える。

 

「ぃよっと……あ、ヤベっ」


 穴から指が上手く抜けなかったようで、ボールの軌道が大きく横にズレた。ちょっとガターを期待したんだが……残念ながら端の1本を掠めてそのまま合計4本持っていきやがった。


「チッ」

「え、今舌打ちした?」

「おっと悪い思わず」


 今のはほとんど条件反射レベルで出ていた。


「素直だな……お前」

「お褒めに預かり恐悦至極」

「いや褒めてねぇし」


 さてと……次は俺の番だ。取り敢えず、ガター連発にならないようにだけ気を付けよう。

 適当にそれっぽいフォームを作って、それっぽい動きで投球する。

 思いのほかまっすぐ転がってくれたボールは、ほぼ中央を捉え――――


「うーわぁー……」

「考える得る限り一番最悪な残り方だな」


 間隔を空けて2本のピンが残った。確かこういうのを、スプリットというんだったか。しかも残ったのは、最後列の端2本だ。

 まさに瀬良の言葉通り、俺の考えられる最悪なピンの残り方だ。


「初っ端これって、幸先悪すぎだろ……」

「アレ、プロでもスペアすんの激ムズらしいぞ」


 だろうな。どうやって真横にピン飛ばすんだよ。

 スペアを取るのは早々に諦め、せめて1本はと左側のピンを狙って2投目を投げたが……それも虚しく、ボールはピンの内側を綺麗に抜けていった。


「まぁ、だろうな」


 最早悔しいどころか、納得しかなかった。

 それからはいちいち止まることなく、順番が回ってきては投げてを繰り返した。

 俺は3ゲーム通してストライクこそ出なかったものの、何度かスペアを出せたので個人の結果としてはそこそこよかったのではないだろうか。……そう、個人(・・)としては。

 瀬良の方はというと、通算8回のストライク。スペアは10回以上。そして軽くイラッと来たのが、全ゲーム通してガターがゼロだということ。どれだけ悪くても最低3本はピンを倒していた。


「なんなの、お前」

「いや、オレに言われてもな……」


 ホント……要領よすぎ。




 ◆◇◆◇




 ふたつ目。

 予想外のビリヤードだった。


「なんでビリヤード?」


 ボウリングよりももっとやったことがない……というかそもそもやったことがない。


「え? これしか空きなかったから」


 何言ってんだと、両手に持った棒――キューというらしい――を片方渡してくる。


「俺ルール知らないけど」

「オレもそこまで詳しくは知らねぇけど、要は突いた球で球落とすゲームだろ」

「それくらいは知ってる」


 逆にそれしか知らない。


「ま、そんなガチ試合するわけじゃないんだし、わかんねえトコは適当でいいだろ」

「お前……それでよくやろうと思ったな」


 こうしてる時間ももったいないし、取り敢えず見よう見まねでやってみよう。

 幸い今は他に誰もいないので、真ん中の台ですることになった。と言うかいつの間にか瀬良が陣取ってた。


「んで、この三角の何?」


 瀬良が持っているのは、角が取れた三角形の木製の型のようなもの。

 俺もさっぱりわからなかったが、台の上に置いてあった、ラミネート加工された紙にソレの使い方が書かれていた。


「その型使って球並べるっぽいな」

「どうやって?」

「えーっと……」


 俺は瀬良から型を受け取り、説明書の絵のとおりに数字が書かれてある球を並べていく。後はズレないように型を外して……準備完了だ。

 ジャンケンの結果、瀬良が先行になった。白のボールをセットしてキューを構える。


「ぃよっと」


 さすがの瀬良でも初見でトンデモプレイは引き起こせなかったようで、塊を少し崩す程度に終わった。

 次は俺の番。ということで手堅く穴に一番近い球を狙ってキュー構える。


「そういえばすげー今更だけど、点数ってどうやって付けるんだ?」


 落とした球の数か、それとも球に書かれている数字が関係しているのか。ロクにルールも知らないとこういう弊害があるな。


「んー……取り敢えず、落とした数でいんじゃね? 一番わかりやすいし」


 と、いうことで、今回は落とした数を競うことになった。


 余談だが、ビリヤードのルールについて後日軽くネットで調べてみたが、イマイチ理解できなかったので早々に諦めた。今後する機会が来る可能性の方が低いし、知らなくても困りはしないだろう。


 さてと……点の付け方も決まったところで改めて構え直す。瀬良と同じ要領で、キューの先端で白の球を突く。


「おっ、入った」


 思ったようには弾けなかったが、なんとか1点獲得だ。一安心、一安心。


「んじゃ、次オレなー」


 俺の小さな歓喜もよそにせっせと次の準備をする瀬良。2回目にしてもうコツを掴んだのか、1回目より明らかにこなれた手つきで球を弾き、あっさり1点取ってしまった。しかもそれだけにとどまらず、弾いた球が落ちる前に弾いた球が、対角の穴に吸い込まれていった。これでもう1-2だ。


「おお~~。なんか知らんが2点ゲット~」

「……」


 最早呆れしか出てこない。もう、こいつはこういうやつなんだと思っておこう。

 瀬良とは違いコツを掴めていない俺は、慎重に狙いを定める。直接落とせそうな球がなかったので、俺も弾いた球で弾く作戦だ。


「ホント、無駄にセンスがあるお前が羨ましい――よっと」


 俺は掛け声(?)と同時に球を突く。

 狙いどおりの場所を着けなかったが、結果的に弾かれた球が上手い具合いの軌道を描いてくれて1点追加だ。


「お前もしっかり成功させてんじゃねえか」

「ビギナーズラックってやつだろ。お前と違って」


 事実、次の手番ではキューが掠って終わり、球の移動距離は数センチだった。ビギナーズラックもそう続いてはくれない。

 瀬良の方も、コツを掴んできたとはいえ初心者は初心者。俺同様キューが球を掠ることもあったし、突いた球がどれにも当たらないことも何度かあった。

 そんな感じで、最後の15個目を瀬良が落とすまでゲームは続き……


「んで結局、こーなるわけね」


 5-10で大敗を喫した。

 もう他に言うことはなかった。




 ◆◇◆◇




「――ップハー……いやぁ~遊んだ遊んだぁ」


 午後3時前。遊び疲れた俺たちは自販機コーナー前のソファで休んでいた。

 炭酸を喉を鳴らしながら一気に半分まで飲んだ瀬良はまさに充実したような表情だ。


「ホント、こんなに遊んだのは人生初だよ」


 俺はソファに全体重を預け、買ったスポーツドリンクを飲む。

 ビリヤードを終えた後、卓球をやろうと受付に行くと生憎のいっぱいで、その待ち時間を使ってゲームセンターで遊んだ。和太鼓のゲームやゾンビシューティング、制限時間延々とバスケットゴールにボールを投げ続けるゲームなど、無駄に激しいものばかり(瀬良が選んで)遊んでいた。

 卓球になってからは、超速ラリーの激アツバトル……なんてなるはずもなく、それはそれは素人丸出しのプレーだった。

 これは明日筋肉痛だな……


「なんだ? 彼女とはデートしなかったのか?」

「デートらしいデートは文化祭くらいかな……何なら付き合う前の方がソレっぽいことしてるかも。なんせ付き合い始めて2週間で遠距離なモンで」

「はは、そりゃ笑えねぇ」


 デート……デートか。次会えた時はできるだろうか。できたとしてどこへ行こうか。まぁまずゲーセンには絶対来ないだろうな。


「……にしても、俺全部負けたな」


 ボウリング、ビリヤードは勿論のこと、卓球もそれなりに競ったものの負けたし、ゲーセンの勝負系でも全部負けた。それはもう惨敗だ。


「あるじゃん1個だけ。ソレが」


 「ソレ」と瀬良が指差すのは、隣に置いてあるクレーンゲームでの俺の戦利品――袋に入ったウサギのぬいぐるみ計2頭だ。それぞれ青と赤の服を着ている。

 奇跡的に青の方が取れたと思ったら、落ちる時に赤の方の足に当たりシーソー方式で一緒に落ちてきたのだ。

 対して瀬良はクレーンゲームでは収穫ゼロ。つまりクレーンゲームを勝負にすると俺の勝ち……と、いうことらしい。


「んーー。でもどうしよ、コレ」


 正直、この年でぬいぐるみを愛でようなんて趣味もないし、扱いに困る。かと言ってせっかく自分でゲットしたしな……

 そうだ沖田さんに……あげても喜ぶかな、ぬいぐるみなんて。いるかもわからないもの送りつけるのもどうかと思うしな……この際祈鷺さんにでもあげるか? あの人なら嬉々としてもらってくれそうだ。


「じゃあ、彼女にあげればいんじゃね?」


 悩んでいると、今まさに切り捨てた案を瀬良が提案してきた。


「いやでも、いるかわからないし」

「相当奇抜なもんでもない限り、そこまで身構える必要もないと思うぞ。こういうのもサプライズのうちだろ?」


 そう……なのだろうか。確かに、キーホルダーにしろヘアゴムにしろわざわざ沖田さんに欲しいかどうかなんて訊いていない。しかし結果的にどちらも喜んでくれた。


「それに、片っぽだけあげたらお揃いになるぜ」

「あぁ……それはいいかも……」

「だろ?」


 お揃い――うん、いい響きだ。それなら俺も、抵抗なく渡せる。


「それか、『いらなかったら捨ててください』って添えてりゃいいんじゃねぇか?」

「……それは、なんか嫌だ」

「はははっ。違ぇねぇ」


 何が悲しくてそんな一筆したためなければいけないのか……




 ◆◇◆◇




 暗くなる少し前の午後4時頃。駅の入り口前。

 俺はこれから、瀬良と別れ、3時間の帰りの旅に出る。


「なんか……長いようで短かったな」

「そりゃあ短いだろ。数か月ぶりで2日だけなんだから」


 こうして終わりの時間が来てみると、思いのほか物寂しく感じる。


「ま、ユウの度肝も抜けたし、津々璃とも会わせられたし、オレとしては満足だよ」

「俺にとっては大変な思い出だよ。特に奥海さんとの鉢合わせはな」

「ははっ、悪かったって。今度は、お前の彼女もちゃーんと紹介してくれよ?」

「あぁ。次の機会にな」


 ホンッットーーーに、濃い2日間だった。驚かされたり、ハラハラされられたりと色々あるが、なんだかんだで瀬良といる時間は楽しい。きっとこいつはこの先も、気の置けない親友でいてくれるだろう。


「じゃ、そろそろ電車来るし行くよ」

「おう。またな」

「あぁ。また」


 別れ際はあっさりと。それくらいが、俺たちのちょうどいい距離感。

 家に帰り、明日からはまた、俺の日常に戻る。

これにて瀬良家での話は終了です。

何気に尊とのシーンをこんなに書いたのは初めてですね。新キャラが3人も増えましたが、今後出てくるかは筆者の脳内次第です。

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