学園祭の悪夢! メイド騎士、伝説の喫茶店を開く
三兆ゴールドという、この世界のハイパーインフレ設定ですら「ちょっとした小金持ち」レベルの資産を手に入れた俺たちは、来たるべき「アイギス学園祭」の出し物を決めることになった。
「主よ! 私は提案します! カイ様の肖像画を百万枚用意し、全校生徒がそれを24時間全肯定し続ける『聖なる礼拝堂』を建設しましょうぞ!」
「却下だ、ガラム。それは出し物じゃなくて宗教だ」
俺たちが食堂で会議をしていると、ふとアリアが俯き、震える手で自身のメイド服のフリルを握りしめた。
「……カイ。私、逃れられない宿命を感じますの。……この学園祭の時期になると、私の血が……いえ、設定が騒ぎ出すのですわ」
アリアの背後に、不吉なピンク色のオーラが立ち上る。
ルルが顔を真っ赤にして(本音バフのせいか)叫んだ。
「ひ、ひえぇ……! 出たわね! 1000年前のあんたが残した、最大級の『お約束』バグ! 『Q81:学園祭において、ヒロインは必ずメイド喫茶を開かなければならず、その料理には強制的に『萌え』の魔力が付与される』……!」
「「…………そんな設定、書いたっけ!?」」
俺が記憶を遡る間もなく、アリアがガタッと立ち上がった。その瞳には、騎士の誇りと、抗いがたい「メイドの業」が渦巻いている。
「……お帰りなさいませ、ご主人様(物理)!!」
アリアが叫びながら空中で旋回すると、どこからともなく大量のレースとリボンが舞い降り、俺たちの教室は一瞬にして「超次元メイド喫茶・聖域」へとリライトされた。
「……ハッ! 素晴らしい! カイ様がご主人様として君臨し、アリア殿が給仕し、私が入り口で『全肯定・呼び込み』を行う……。これぞ理想の統治形態にあります!」
ガラムが勝手に「全肯定・執事服」に着替え、廊下で「我が主の聖域に足を踏み入れぬ者は校則違反ですぞ!」と勧誘を開始した。もはや学園祭というより、強制参加のイベントである。
「……いらっしゃいませ。……オムライスに、愛のデバッグを込めますわね。……萌え萌え、……【聖なる一撃】!!」
アリアがケチャップでハートを描きながら放った「萌えの魔力」は、あまりの出力にオムライスを黄金に輝かせ、食べた客が「うおおおお! メイドさん最高おおお!」と叫びながら窓から飛び降りる(快感で)ほどのバグを引き起こしていた。
「……待て、アリア! 萌えの出力が高すぎて、客の精神データが書き換わってるぞ!」
俺は慌てて、三兆ゴールドの一部を触媒にして、店の結界をデバッグしようとした。
だが、そこへ不機嫌そうな銀髪の美少女――生徒会長のセレスが現れた。
「……ちょっと、デバッガー君。私の許可なく学園内で『洗脳喫茶』を開くなんて、良い度胸ね。……くしゅん!……あ、まずい……」
セレスが鼻を押さえた瞬間、彼女の「全属性設定」がメイド喫茶の「萌え魔力」と共鳴し、店内のデコレーションが全て「巨大なフリルモンスター」へと変異し始めた。
「……カイ様! モンスターが客を飲み込もうとしています! 私が全肯定で食べられて時間を稼ぎますので、その間にデバッグを!」
「ガラム、お前は黙ってろ! ……行くぞ、アリア、ルル! 学園祭を地獄に変えさせるかよ!」
俺は一文無しのプライド(と三兆ゴールド)を賭けて、フリルに包まれた教室の中心へと飛び込んだ。




