ノクサVSステラ
小降りな雨が降っていた。
「君がステラ?」
霧を抜けた先でステラはノクサと対面していた。
「えぇそうよ。」
「私はノクサ。」
「あなたを倒せばいいっていう話だよね?」
「そうだね。」
「本気で行かせてもらうわ。」
風が吹き荒れ、稲妻が空を駆け巡った。
「オルディナ王国最強に本気で戦ってもらえるなん……」
「そういうお世辞はいいから、跪きなさい。」
言い終わるより早くステラの指先が光り、ノクサの心臓を光が貫いた。
宙に浮いていたノクサの身体が力なく地面に落ちた。
「どうせ死んでないんでしょ?」
ぐちゃぐちゃと音を立てて傷が塞がっていった。
「こんなに早く保険を消されるなんてね。」
「ちょっと時間をくれるかな?」
「どうせ結果は変わらないわ。」
ステラは余裕を感じていた。
ノクサは立派な装飾があしらわれている宝石箱を取り出した。
「箱?」
「着替え道具。」
一瞬身体が光り、服が切り替わった。
「これが私の一張羅。」
「戦闘服って事ね。」
ノクサの髪色は銀に変化していた。
「ずいぶんとまあ印象が変わったわね。」
黒いブーツに、ゴシック調のケープコート、銀糸で刺繍されたズボンへと装いが変わっていた。
「こういう服の意味を知ってるかい?」
「知らないわ。」
「死、怪奇、幻想……そういう意味があるの。」
「ずいぶん遠回しな殺害予告ね。」
「君は知らないかもしれないけど、黒は光を吸収するんだよ。」
「御託はいい。かかってきなさい。」
「じゃあ始めるよ。」
ノクサとその周りの石が浮き上がり始めた。
(あのブーツから衝撃波かなんかが出てるのか……)
ノクサは滑らかに移動していた。
「……」
(このくらいの威力なら防げる。)
ステラに攻撃が当たらないのを見てノクサが口を開いた。
「こんなのじゃダメージも入らないから余裕とか思ってるでしょ?」
「私は勝利と目的に対しては強欲だよ?」
「っ……!」
(さっきよりも威力が上がってる?)
「口数が少なくなってきたけど大丈夫?」
「ぐっ……!」
ノクサの放った石が左肩に直撃すると同時に、ステラの指先が光った。
「流石にもう当たらないよ。」
ノクサの姿が一瞬で視界から消えた。
「風?」
風が強くなり、雨水を巻き上げていた。
「水は光を反射するわ。」
ノクサの死角からステラの攻撃が反射した。
光がノクサの左肩を貫いた。
(奥の手を使ったら計画どころかこの国ごと消えるしなぁ……)
ノクサは迷っていた。
(一撃のダメージはあっちの方が大きいけど、物量で押し切れるか?)
「……」
ステラは肩の調子を確かめていた。
(やっぱり折れてる。実質これで攻撃の手数が半減した……)
(このままじゃ押し切られる。覚悟を決めて攻め続けるしかない。)
「コンバート」
ノクサが呟くと同時に周囲が歪んだ。
「吸収された光は熱に変わるんだよ。」
「雨が……」
ノクサの周りの雨粒が蒸発していった。
「これで反射もしづらくなった。」
「……」
ステラは目を閉じ集中していた。
「先手必勝。」
ノクサの放った石がステラの右足を直撃した。
「っ……ふぅー……」
(これじゃ負ける……マルチタスクを実現しなきゃ。)
(攻撃しながら能力を使う、能力を並行して使う。これが出来なきゃ負ける。)
「戦闘中に居眠りかい?」
「あなたを倒す作戦を練ってただけよ。」
「その時間で右足がやられたけど?」
「ただのハンデよ。」
「随分と心優しいんだね。」
「そうじゃないとやりすぎちゃうから。」
雨風が強くなり、雷鳴が近づいてきていた。
「その服の熱はいつまで持つかな?」
「さあね。」
(こんだけしてても能力ほぼ使ってないのムカつく……)
(熱も重力もアイテムだし、唯一感じたのは威力の強化だけ。)
「謝らなきゃいけないことがあるの。」
「それくらいは聞こう。」
ノクサの周りの石が宙に浮き始めた。
「ようやく本気で戦えるわ。」
ドォォン!!と激しい音を立て、ノクサに雷が直撃し、ステラは衝撃で吹き飛ばされた。
「これで無傷は流石に凹むよ?」
白い煙が辺りに立ち込めていた。
パチ、パチと拍手の音が響いた。
「まさか許容量以上の熱と光で服が死ぬとはね。」
ノクサは最初の格好に戻っていた。
「いい加減死んだら良いんじゃない?」
「このまま君と戦いたくはあるんだけど、計画も進めなきゃいけなくて……」
首を振りながら、膝をついているステラに杖を向けた。
「チェックメイトだ。」
「くっ……!」




