絶望は扉から
「いくらネックレスを手に入れるためとはいえやりすぎたなぁ……」
「あー気持ち悪い……」
元々森があったとは到底信じられないような風景に様変わりしていた。
「防御系統全部壊れたし魔力も重力も使いすぎちゃったなぁ。」
「このネックレスにここまでの価値は感じないし、服はボロボロだし火傷も酷いなぁ。」
「さっきの人形のダメージもあるし。」
意外と体がボロボロなのを見てため息を付いていた。
「にしても自分だけじゃなくて仲間の死体すら残らないような自爆をするとはね……」
少し感心していた。
「ついに魔法使っちゃったし身バレしたくないんだよなぁ……」
「まああれを見られていたとは思えないけど。」
ノクサの掌の中でペンダントが光を受けて輝いていた。
「私のネックレスを知りませんか?」
ルミナは慌てていた。
「ネックレスが無くなったのか?」
「朝起きたらネックレスが無くなっていて……」
「アルヴァン達もいなくなっていて……」
ルミナは不安そうだった。
「アルヴァン達が?」
「何もなければ良いのですが……」
ただただアルヴァン達が心配だった。
「またアルヴァン達の劇が見たいな……」
窓から晴れ渡った空が顔をのぞかせていた。
「なんでネックレスをわざわざ取ってきたんですか?」
「あなたの目的は私の能力があれば達成できるじゃないですか!」
「怪我を負ってまで手に入れる必要があったんですか?」
ノクサは少女に問い詰められていた。
「正直無かったと思うよ。」
「あのネックレスの力は強力だから渡したくないっていう気持ちもあったけど一番は予防線だよ。」
「もうしばらくあの計画は先送りにするよ。」
「私が信用できないのですか?」
少女は悲しげにノクサを見つめた。
「君に死んでほしくないからだよ。」
「そうやってはぐらかさないでください!」
「死んでほしくないのは事実だよ。」
「私は命を捨てるくらいわけないですよ?」
「その信仰心はどこから湧いてくるんだろうね……」
「それはもう出会ったときから。」
少女は満面の笑みを浮かべた。
「私だって手伝いじゃなくて戦いたいんですよ?」
少女は不満げだった。
「そんなに言うならヴェールシアに行こうか?」
「いいんですか!」
「下見がてらだからあんまり長いはしないよ?」
「大丈夫です!準備してきます!」
少女は部屋を飛び出していった。
「あの感じであんな能力を持ってるなんて信じられないな……」
飛び出していった勢いのまま開いているドアを眺めながらため息を付いた。
「使えば使うほど手数がなくなるから取っておいてほしいんだけどなぁ……」
「随分楽しそうやね。」
後ろにヴァレルが立っていた。
「まあね、何か用かい?」
「計画を延期するって聞こえたから確かめよう思て。」
「それは事実だよ。」
「長くなるならもっと確実に準備ができるから別に迷惑ではないんやけど確認にな。」
「準備終わりました!」
「戦いに行くって話じゃなかってん?」
「そうです!」
「手に持ってるのは?」
少女は白い粉の入った瓶を抱えていた。
「砂糖です!」
「そうか、頑張ってな。」
ヴァレルは困惑を隠せていなかった。
「じゃあ行きましょう!」
「わぁー!」
少女はキラキラした目で辺りを見ていた。
「エスペリアと全然景色が違う!」
二人は橋の上に立っていた。
「随分高い橋だね。」
橋は渓谷と町を繋いでいおり、四角形の町並みが並んでいた。
「凄い広い建物があります!」
少し進んだところで円状の建物にたどり着いた。
「何の建物なんだろうね。」
建物には屋根がなく、観客席が広がっていた。
「ん?」
辺りが暗くなり観客席の電気がついた。
入口が光り大きな影が入ってきた。
「でっかい!」
大きな牛が中に入ってきた。
「硬そうだね。」
牛には金属のような光沢があった。
「私が倒します!」
少女は瓶の中の砂糖を地面に零した。
「準備完了!」
「……」
少女が呟くと砂糖が舞い上がった。
「レッツゴー!」
砂糖が向かっていき牛の体を削り取った。
「ブモォォ!」
牛が苦しげに叫んだ。
「内部から破壊します!」
砂糖が牛の内部に入り込み、牛の体を突き破った。
「やっぱりえげつないね……」
「このままこの土地蹂躙してきます!」
「誰かいるわけでもないからやめようか。」
「分かりました!」
「元気だね……」
「ところで能力の調子はどうだい?」
「砂糖は使ってリミナリアも使ったから……」
少女は少し考え込んだ。
「800年経ってるんで水も復活してます!」
砂糖でピースの形を作りながら言った。
「封印とけてからずっと楽しいです!」
「復活したからって津波を起こすのはなしだからね?」
「はい!」
「じゃあ帰ろうか『アヤシア』」
「えー残念。」
「最近の地形の荒れが酷いな……」
ナラティアは被害報告を見て頭を抱えていた。
「昨日の夜に起きた爆発で森の2割が消滅……」
「この間の揺れも気になるしなぁ……」
「あー過労死しそう。」
「まぁた国王から呼び出しかかったし……」
「さっさと目冷ましてくんないかなぁ。」
目を覚まさないアナーシャのことを考えていた。
「あそこで頑張ってくれてなきゃこの国無くなっててもおかしくなかったけど……」
「やだなぁ……エスペリアの使者嫌いなんだよなぁ。」
「この後どうしよう……」
ネックレスが見つからずアルヴァン達の足跡も分からず下手に動けなかった。
「私買い物行きたーい。」
セリナがソファに寝っ転がりながら声を上げた。
「やってる店はヴェールシア付近くらいじゃない?」
ユーノはギャングの襲撃で国民が避難しているのを思い返した。
「そもそも何でエスペリアは乗っ取られたんだ?」
「そうですね、いい加減その話をしましょう。」
「始まりは3日前のことでした……」
「始まりは町の中央にゲートが現れたことでした。」
「そのゲートからノクサと名乗るものが出てきたのです。」
「止まれ!」
「急いでるから無理。」
「それ以上動くのなら攻撃する!」
「うるさい。」
ノクサが杖を振り下ろし衛兵をまとめて地面に打ち付けた。
「一旦あの建物に行くとするかな……」
目線の先には王城が建っていた。
「こんにちは。」
「何が目的だ?」
ノクサは王の護衛を一瞬で片付けていた。
「拠点が欲しくてさ、ここくれない?」
「中々冗談のうまいやつだな。」
「本気だけどね。」
「まあいいよ、私は地下牢見てくるからその間にどうするか決めてね。」
「なんか拍子抜けだなぁ。」
ノクサは地下牢に入って囚人を見ていた。
「犯罪者っていうから面白いのいないかなと思ったのに……」
足元には一つ檻を開けたときに襲いかかってきた囚人の死体が転がっていた。
「ん?」
囚人が殺されたのを見て誰も目を合わせようとしない中視線を感じた。
「何か言いたいことでもあるかい?」
「とても欲しくなる人だなぁと思っただけよ。」
「中々面白いね。」
「名前は?」
「私はヴェリクス。」
「今仲間を見繕っていてねよかったら仲間になってくれないかい?」
「何をするつもりなの?」
少し興味を持ったように体を前に出した。
「この国支配して封印を解きに行く。」
「楽しそうだし乗るわ。」
「早速封印を解きに行ってくれるかい?」
「用意が終わったら出発するわ。」
ヴェリクスは軽快な足取りで地下牢を去っていった。
「さてと思ったより早く見終わったし、他の部屋でも見るかな。」
廊下に出たところで後ろから呼び止められた。
「お前が侵入者だな?」
「そうだね。」
振り向くと騎士が立っていた。
「これ以上先に進ませるわけには行かないのでな。」
騎士が腰から剣をぬいた。
「この先に何があるのか気になってきたよ。」
「まずは分析させてもらおうか。」
騎士の剣に嵌っている石が輝いた。
「成る程な……」
「重力を操るとは中々に強力な力だな。」
「続けて?」
少し興味を持っていた。
「魔法も扱えるようだな。」
「そして重力は同時には使えないようだな。」
「信じられないほど運動神経も良いようだ。」
「他にも一つ能力を隠しているな?」
「全部当たっているね。」
ノクサは拍手を送っていた。
「しかし驚いたぞ、まさかお前の正体がっ」
「それ以上喋るのは許さない。」
ノクサの杖が騎士の喉を貫いていた。
「……」
剣に嵌っている石を粉々に砕いた。
「正体を言うことだけは許さない。」
「はぁ……戻るか。」
「決断出来た?」
「お前のようなものにこの国を明け渡すわけがないだろう。」
「まあそうだよね。」
自分を取り囲む傭兵を見渡しながら一人で納得していた。
「なら無理やり明け渡してもらおうかな。」
ノクサが戦闘態勢を取った。
「まだやる?」
少ししてノクサが傭兵全員を倒していた。
「娘を逃がすことは出来たから良しとしよう……」
「そういえば小耳に挟んだんだけどこの国の秘宝のネックレスは?」
「何のことだ?」
「とぼけても無駄だよ。」
「それを追跡する物があるってことも知ってるんだから。」
「ルミナお嬢様早くこちらに来てください。」
「いきなりどうしたの?」
「今からこの国を出ます。」
「いきなりどうして?」
ルミナの困惑をよそにアルヴァンは用意を進めていた。
「このネックレスもしっかり持っていてください。」
「これって持ち出しちゃダメじゃない?」
「早く行きますよ。」
アルヴァンに腕を引かれ地下に連れて行かれた。
「遅くなった。」
「ミレア?それにオルフェンも三人して急にどうしたの?」
「話は移動した後です。」
扉の向こうはヴェールシアだった。
「移動するのでしっかり掴まっていてくださいね?」
アルヴァンが透明な玉を叩き割るとあたりの景色が一変した。
「いったいなんなの?」
「エスペリアは乗っ取られてしまいました。」
「王からの命令でルミナお嬢様を守れと。」
「そんな……」
急な出来事に頭が追いつかなかった。
「こういう出来事があって……その後があの建物の前で出会った時に繋がります。」
「成る程な……」
「結局ノクサはネックレスを手に入れて何がしたかったんだ?」
「分かりません……ですがあのネックレスを使えば世界を滅ぼすこともできるでしょう……」
沈黙を破ったのはドアの開く音だった。
「リンガリア?」
「『歴史』が目を覚ましたぞ。」




