定まった運命
「やっぱ戦力は無いといけないなぁ……」
「そんなにそのノクサってやつはやばいのか?」
「封印のときに戦ったヴェリクスの何万倍強いよ。」
リュシオンの疑問に連が答えた。
「おれはもう一回ヴェールシアに行くべきだと思う。」
「そんなに広いわけじゃないプラネタリウムとその周辺であれだけ成果があったんだ。」
「それに水族館には扉が結構あるから帰ろうと思えばいつでも帰れると思う。」
「確かにリセットは来てないのであの穴も残っているでしょうしいい考えかもしれません。」
「君たちが言ってる間に私は国王と話してくるよ。」
「これを持っていくといい。」
ナラティアはグラスを投げた。
「これは一回だけダメージを肩代わりしてくれる。」
「検討を祈るよ。」
言い終わるとナラティアは走り去っていった。
「ああやって走ってるとマジで探偵にしか見えないな……」
インバネスコートとディアストーカーハットが遠ざかっていくのを見て思わず呟いた。
一同は特に何事もなく進んでいた。
水族館の入口あたりでセリナは違和感を覚えた。
「っ……!」
振り向いた瞬間柱の陰から出てきた男に心臓を刺された。
「セリナ!?」
セリナのポッケとの中でガシャンと音を立ててグラスが砕け散った。
「ゴホッ、ゴホッ……っ!」
「お前ら追手だな?」
連が顔を上げるとセリナを刺した男と別に男一人、女2人がいた。
「何の話なんだ?」
「このルミナお嬢様を追ってきたんだろう?」
「お前らギャングが追ってきてることを知らないわけが無いだろう。」
「おれらはさっきヴェールシアに入ってきたばかりだ!」
「お前らこそどっから来たんだよ!」
「俺等は知っての通りお前らの乗っ取ったエスペリアに決まってんだろ。」
「おれらはリミナリアから来たんだよ。本当にエスペリアなんて場所知らないんだよ。」
「やめてアルヴァン!本当に何も知らないかもしれないわ。」
「景色がぜんぜん違うでしょう?」
「それに私達はあのアイテムを使って今ここにいるのよ?」
「この世界の入口が一つとは限らないわ。」
「確かにお嬢様の言うことは一理あるわ。」
「私達がここにいるのは偶然でしょ?」
「ミレアはともかくルミナお嬢様までそんなことを言うんですか?」
「第一私達を追っているのにどうして前にいるの?」
「それは……確かに……」
「お前そんなあやふやな理由でこいつを刺したのか?」
リュシオンが怒気を孕んだ声で言った。
「グラス持ってなかったら今ので私死んでたよ?」
セリナがユーノの手を借りて立ち上がった。
「それは悪かったよ……」
アルヴァンは苦々しい顔をした。
セリナの服には血が全く付いていなかった。
「このルミナお嬢様はエスペリアの王女なんだが最近ノクサって奴が国を支配してな……」
「ルミナお嬢様のペンダントを狙ってずっと追いかけられてるんだよ。」
「だからって私を刺したのは変わらないよ?」
「おれ達はそのノクサを倒すために戦力を増やしにここに来てるんだよ。」
「お前達を襲ったのは謝るよ。」
「俺等をそのリミナリアまで案内してくれるならこれもやるよ。」
アルヴァンはポケットから手のひらサイズの水晶を取り出した。
「何だそれ?」
「これを割るとランダムな場所に転移するんだ。」
「これを使ってエスペリアから離れて逃げてたんだよ。」
「その前にお前にはこれやるよ。」
アルヴァンはセリナに小さなナイフを投げた。
「なにこれ?」
「そのナイフに魔法を込めとくと刺したときにその魔法が発動するんだよ。」
「追手だと思ってたとはいえやり過ぎちまったしな。」
「まあ私はこれでチャラでいいよ。」
「おれ達は水族館だけ探索して戻ろうと思ってるんだけど……」
「じゃあ私達も手伝うわ。」
ルミナお嬢様と呼ばれていた人物が言った。
「この3人は傭兵なの。きっと力になれるわ。」
「お嬢様の命令なら喜んで。」
今までほとんど喋らなかった男が言った。
「とりあえず入りませんか?」
入口と最初はそうでもなかったが、最初の広い空間にはくらげ型の原生成物がうようよいた。
「これ全部片付ければいいのか?」
「まあそうだな。」
「オルフェン」
「分かった。」
オルフェンと呼ばれた男が前に出てきた。
「カタストロフ・ソニック」
男が槍を向けた先に圧倒的な破壊力を持った音の塊が飛んでいき原生生物を全て破壊した。
先に進むと水族館は二階建てになっており、巨大なエイが空を飛んでいた。
「でけぇな。」
思わずといった感じでアルヴァンが呟いた。
「オルフェン、あれも撃ち落とせる?」
「やってみます。」
ルミナの問い掛けに槍を構えることで答えた。
「カタストロフ・ソニック」
音の衝撃波がエイに届く前にエイが振り返り”飲み込んだ”。
「は?」
連達が驚いているのをよそにエイはこちらを敵として認識していた。
後ろを向くと同時に尾で2階部分を薙ぎ払った。
「危なかった……」
当たるより早くアリアの魔法で床を貫き一階部分に飛び降りた。
「どうやら魔法は無効みたいですね……」
「じゃあ私の出番じゃない?」
ミレアと呼ばれていた女性が立ち上がった。
「まあそうかもな……」
「一発かましてくるわ。」
ミレアは籠手を装着し始めた。
「リミット・ブレイク」
そう呟いた瞬間ミレアが跳んだ。
「あれ脚力だけだよな?」
ミレアはエイの上まで跳ぶと籠手をはめた手を振り下ろした。
ものすごい轟音と共にエイが堕ちた。
「よし!」
エイを堕とした勢いでミレアが戻ってきた。
連たちの視線の先でエイが浮かび上がり、落ちた。
「リフレクトシールド!」
衝撃波が風の刃となって連たちに向かってきたのを間一髪アリアが防ぎ、反射した。
「やはり魔法は聞かないみたいですね。」
「じゃあ実験していい?」
連がなにか言う前にセリナがレリックの引き金を引いた。
パンッという乾いた音が響き、黄金の弾丸がエイを貫いた。
エイの体が裂け中から小さなペンギンが出てきた。
「凄い弱そうな見た目してない?」
「よく見ろ。」
ペンギンの胴体には穴が空いていて、中に青緑の球体が浮かんでいた。
「何だあれ?」
ペンギンが振り返り口を開けると同時にミレアが吹き飛んだ。
「ごめん、今のとリミット・ブレイクの反動で動けない……」
「アルヴァン?だっけ、トドメは任せていい?」
アリアとリュシオンに何かを頼んでいたセリナがアルヴァンに言った。
「そこは信用してくれて構わない。」
「分かった。」
セリナはレリックを構え走り出した。
ペンギンはさっきの攻撃を警戒し、避ける素振りを見せた。
「クロノス・アーカイヴ!」
リュシオンが動きを止めたがセリナは打たずアルヴァンに貰ったナイフを投げ、床に突き刺した。
ナイフが床に突き刺さり、アリアの込めた「エラプト」が発動した。
噴火の勢いでペンギンが空中に打ち上げられた。
「なるほどな。」
空中で無防備なペンギンをアルヴァンが切り、青緑の球体を取った。
「もう帰んない?」
セリナが言った。
「確かにナラティアさんも話し終わってるだろうし、アルヴァンさん達も早く安全な場所に行きたいと思う。」
ユーノがセリナに同意した。
「じゃあ帰りますか。」
アリアがブローチを使い、扉を繋げた。
「また人が増えたんだね。君たちは?」
「俺達はノクターンこちらはルミナお嬢様だ。」
「一応聞くんだけどエスペリアのかい?」
「そうだがなぜ知っている?」
「とんでもない問題が転がり込んできたな……」
「国王の話によるとエスペリアは脅しおかけてきたらしいよ。」
「王女を探してて匿っていたら分かるって感じに。」
「その時は居なかったからいいものの今確かめられたら大分まずいよ。」
「その使節はなんて名乗ってたんだ?」
「オルタスって名乗ってたよ。」
「やっぱりあいつらか……」
アルヴァンは悔しそうに顔をしかめた。
「戦うのならここからそこそこ離れた距離にもう20年くらい使われてない町があるよ。」
「どうせ来るなら罠が仕掛けられるな。」
「これも使えるんじゃねぇのか?」
「貸してくれるかい?」
ナラティアがアルヴァンから青緑の球体を受け取りスキャンした。
「ここでもスキャンできるんだな。」
「これさえあればできるよ。」
ナラティアが機械を手で示して言った。
「これは風の魔法が刻まれてるね。」
「魔力を込めておけば詠唱や予備動作無しで魔法を打てるよ。」
「成る程な。」
「撃退するなら3チームに別れるといい。」
「この球体を持ってるグループと純粋に戦闘力の高いグループ。」
「そして集めたアイテムをフルに活用するグループ。」
「純粋戦闘ならミレアだな。」
「おれらの中だとセリナとリュシオンだな。」
「オルフェンと俺が風は請け負うぜ。」
「おれはアリア、ユーノとフル活用で撃退すればいいんだな?」
「チームは決まったみたいだけどルミナをどこに配置する気だい?」
「部屋の中がいいと思う。」
「あの投影機に魔力を込めておけば部屋に偽りの星空が出てくるから少しは時間が稼げはず。」
「2つ部屋が繋がっている建物にルミナを隠す。」
「おれとユーノがルシアと同じ部屋で罠と時間稼ぎアリアが屋敷の防衛にしよう。」
連はユーノの意見に納得し、配置を決めた。
「後は用意だな。」
「一体どこにいるんでしょう、ああドレシア様私を肯定してくれたお方。」
「ギャングなんて低俗なものではなく私があの首飾りを手に入れる……!」
女の下半身は人間では無かった。
「はぁ……気が乗らないなぁ。」
「運命の導きなら仕方ないか……」
「このまま真っ直ぐだよ。」
「まあ真っ直ぐ進まなくても到着が遅くなるだけで必ず着くけど。」
「運命には抗うことなんて出来ないんだから。」
男はギャングを引き連れていた。
「来ねぇな。」
「気配すらないね。」
「来ないに越したことは無いんだよ?」
リュシオン達が話していると後ろから声をかけられた。
「あなた達は敵ですか?」
「なっ!」
リュシオンが驚いて飛び退いた。
「ルミナの居場所を知っていますか?」
「ルミナお嬢様を探してるってことはこいつは敵だ!」
「ルミナ……お嬢様ぁ?お嬢様って呼ぶってことは敵ですね?」
「私はドレシア様に首飾りを捧げる!」
女の背後でぐちゃぐちゃと音を立て、白色の”ナニカが”膨れ上がった。
「ッ!」
セリナがレリックで撃ったが全く聞いている様子が無かった。
「私に攻撃はぁ効きません。」
レリックの弾丸は確かに命中したが全く止まることなく膨れ上がり続けた。
「これで全部かオルフェン?」
「恐らくそうだ。」
アルヴァンとオルフェンは襲いかかってきたギャングを全て返り討ちにしていた。
「まぁこうなるよね。」
「ここでこいつらが死ぬ運命なのは分かっていたけど……」
男が現れた。全体を白を基調とした服で錫杖を持っていた。
「なんだお前は?」
「僕はアルカナス。」
「君等にも分かるように言うとオルタス3位『運命』。」
アルヴァンが風の刃を放ったがアルカナスの後ろから突風が吹き”相殺”された。
「言い忘れたけどその風は当たらないよ。」
「偶然か?」
「いいや、必然だ。お前らの運命も見てあげようか?」
「ふざけやがって!」
アルヴァンが飛びかかったが錫杖で防がれた。
「僕にはすべて見えている。」




